梅雨の瀬戸内、ひとり島旅で雨宿りに飛び込んだ小さな美術館の学芸員に一日中島を案内されて最終フェリーを逃した夜に結ばれた話

六月の平日。俺、須永悠真(すなが ゆうま)、二十八歳は、瀬戸内海を渡る小さなフェリーの甲板に立っていた。

東京のIT企業でシステムエンジニアをやっている。ここ三ヶ月、炎上したプロジェクトの火消しでずっと終電か泊まりで、気づいたら笑い方を忘れていた。先週、上司に「お前、顔色やばいぞ。有給、強制で使え」と言われて、半ば追い出されるように飛行機に乗った。

須永悠真「島……行ったことないんだよな」

行き先は、ほとんど何も考えずに選んだ。瀬戸内に浮かぶ、人口千人ちょっとの小さな島。ガイドブックの隅に「現代アートの島」と一行だけ載っていた。それだけで、なんとなく決めた。

フェリーが港に近づくにつれ、空が怪しくなってきた。梅雨だ。天気予報は晴れマークだったのに、水平線の向こうに分厚い雲が湧いている。

須永悠真(降るなよ……傘、持ってきてないぞ)

港に降り立った瞬間、ぽつ、と頬に当たった。次の一滴は、もう確信に変わっていた。

須永悠真「……マジか」

ざあっ、と音を立てて、雨が落ちてきた。あっという間の土砂降り。観光客もまばらな港に、雨宿りできる場所なんてない。俺は荷物を頭にかざして、坂道を駆け上がった。

1. 雨宿り

民家の白い壁が続く細い路地を、ずぶ濡れで走った。軒先を探したけど、どこも閉まっている。平日の梅雨、しかも午後三時。島は眠ったように静かだった。

そのとき、坂の上に、コンクリート打ちっぱなしの低い建物が見えた。入口に、小さな木の看板。「汐ノ島アートミュージアム」。

須永悠真「……開いてるか?」

ガラスの自動ドアが、すうっと開いた。助かった。転がり込むように中へ入る。冷房の効いた、静かなロビー。雨で濡れた靴が、磨かれた床にぺたぺた音を立てた。

受付のカウンターから、女性が顔を上げた。

藤代ひなた「いらっしゃいま……わ、すごい降られましたね」

立ち上がって、こっちに駆け寄ってくる。紺色のエプロンに、白いシャツ。肩で切りそろえた黒髪。化粧は薄いのに、目元がくっきりしていて、思わず見入ってしまうくらい整った顔立ちだった。

藤代ひなた「これ、使ってください。タオル。あと、荷物こっちで預かりますね」

差し出されたのは、ふかふかの白いタオルだった。受け取りながら、俺はちょっと面食らっていた。

須永悠真「いや、勝手に駆け込んだだけなのに……すみません」

藤代ひなた「いいんですよ。こんな日に来てくれるお客さん、貴重なので」

くすっと笑って、彼女はカウンターに戻った。胸元のネームプレートに、「学芸員 藤代」と書いてある。

須永悠真「学芸員さん、なんですね」

藤代ひなた「藤代ひなたです。といっても、ここ、私一人で回してるんですけどね」

ちょっと肩をすくめて、彼女――ひなたさんは笑った。雨音だけが響くロビーで、その笑い声が、やけに澄んで聞こえた。

2. たった一人の客

チケットを買って、展示室に入った。客は、本当に俺一人だった。

白い壁の広い空間に、ぽつぽつと作品が置かれている。光と影だけで構成された部屋、海の音が低く流れるインスタレーション。正直、現代アートなんてさっぱりわからない。腕を組んで、難しい顔で立ち尽くしていたら、後ろから声がした。

藤代ひなた「……わからない、って顔してますね」

須永悠真「うっ。ばれました?」

藤代ひなた「ふふ。最初はみんなそうですよ。よかったら、ちょっと解説します?」

エプロンの裾を揺らして、ひなたさんが隣に並んだ。雨で外に出られないせいか、彼女も少し手持ち無沙汰だったらしい。

藤代ひなた「この作品、作家さんがこの島に三ヶ月住み込んで作ったんです。朝の海と、夕方の海の、光の違いを閉じ込めたくて」

須永悠真「光の、違い……」

藤代ひなた「ほら、ここに立って、ゆっくり目を慣らしてみてください。だんだん、奥に水平線が見えてきません?」

言われるまま、白い壁の前に立った。最初は何も見えなかった。でも、三十秒、一分と見ていると――確かに、ぼうっと、薄青い線が浮かび上がってきた。

須永悠真「……あ。見える。海だ、これ」

藤代ひなた「でしょう?」

隣で、ひなたさんが自分のことみたいに嬉しそうな顔をした。その横顔を見ていたら、なんだか胸の奥が、ほどけていく気がした。三ヶ月、ずっと張り詰めていた何かが。

須永悠真「……俺、ここ三ヶ月くらい、こういうの全然見てなかったな」

藤代ひなた「こういうの?」

須永悠真「ちゃんと、立ち止まって、何かをじっと見るってこと」

ぽろっと、本音が漏れた。ひなたさんが、ちょっと驚いた顔で俺を見て、それから優しく笑った。

藤代ひなた「……だったら、ちょうどいい島に来ましたね。ここ、立ち止まるしかすることないので」

3. 閉館までの時間

気づけば、ひなたさんは展示室を一緒に回ってくれていた。作品の前で立ち止まっては、作家の話、島の話、瀬戸内の光の話をしてくれる。

須永悠真「藤代さん、島の出身なんですか?」

藤代ひなた「はい。生まれも育ちもこの島。一回、大学で東京に出たんですけど」

須永悠真「東京、いたんですか」

藤代ひなた「美術館で働いてたんです。大きいところ。でも、人が多すぎて、何を見ても流れていっちゃって。……結局、戻ってきました」

窓の外は、まだ雨。ガラスを伝う水滴を見ながら、ひなたさんがぽつりと言った。

藤代ひなた「ここだと、一人のお客さんと、一つの作品の前で、こうやってずっと喋れるから」

その横顔が、さっき作品の中に見た水平線みたいに、静かで遠かった。

展示を見終わる頃には、外の光が弱くなっていた。いつのまにか、雨脚も少し緩んでいる。受付に戻ると、壁の時計が五時を指していた。

藤代ひなた「あ……すみません、私、閉館作業しないと。五時半までなんです」

須永悠真「こちらこそ、独り占めしちゃってすみません。すごく、楽しかったです」

本心だった。久しぶりに、時間を忘れていた。荷物を受け取りながら、俺はふと気になって聞いた。

須永悠真「あの、今日って、もうフェリーの本数……」

藤代ひなた「あ、今日はもう、本土行きの最終、出ちゃいましたよ。十六時半が最後なので」

須永悠真「えっ」

固まった俺を見て、ひなたさんが慌てた。

藤代ひなた「あれ、もしかして日帰りのつもりでした?」

須永悠真「……はい。完全に」

二人で、しばし見つめ合った。それから、ひなたさんがぷっと吹き出した。

藤代ひなた「ふふっ、ごめんなさい。でも大丈夫。島に、一軒だけ民宿あるので。電話してあげます」

4. 民宿の女将

ひなたさんが電話してくれた民宿は、港の近くの古い木造の家だった。「民宿はま屋」と染め抜かれた暖簾をくぐると、奥から恰幅のいいおばあさんが出てきた。

ハマ江さん「あんたかい、ひなたちゃんが言うてた、雨に降られた東京の人は」

須永悠真「あ、はい。須永です。急にすみません」

ハマ江さん「ええよええよ。梅雨の平日に来る物好きなんて、年に何人もおらんから。歓迎じゃ」

女将のハマ江さんは、からからと笑った。通された二階の部屋は、畳の匂いがする、こぢんまりとした和室。窓を開けると、すぐ下に港と、雨上がりの海が見えた。雲の切れ間から、夕日が一筋差し込んでいる。

須永悠真「……きれいだな」

夕飯は、一階の小上がりで出してくれた。瀬戸内の魚の煮付け、刺身、地のものの天ぷら。一人で食べていると、ハマ江さんがお茶を持ってきて、向かいに座った。

ハマ江さん「ひなたちゃんなぁ、東京から戻ってきて三年になるんよ」

須永悠真「そうなんですか」

ハマ江さん「島の若い子はみんな出ていくのに、あの子は帰ってきた。働きもんでなぁ。あの美術館、あの子がおらんかったらとっくに潰れとる」

ハマ江さんは、湯呑みをすすりながら、いたずらっぽく俺を見た。

ハマ江さん「……今日、あの子、ずいぶん長いこと案内しとったらしいなぁ?」

須永悠真「え、なんでそれを」

ハマ江さん「島は狭いんよ。なんでも筒抜け」

からから笑って、ハマ江さんは立ち上がった。襖の向こうに消える前に、ひとこと。

ハマ江さん「明日、晴れるよ。島、ゆっくり見ていき。……ひなたちゃんに、案内してもろたらええ」

5. 晴れた島

翌朝、ハマ江さんの予報は当たった。

カーテンを開けると、梅雨が嘘みたいに晴れていた。洗われた空が真っ青で、海がきらきら光っている。一階に降りると、玄関先に、見覚えのある人が立っていた。

藤代ひなた「おはようございます。……あの、今日、私お休みなんです」

須永悠真「藤代さん?」

藤代ひなた「昨日、フェリー逃しちゃったの、なんか私のせいみたいで。だから……島、案内します。自転車、二台借りてきました」

頬を少し赤くして、ひなたさんが港の方を指した。錆びた青い自転車が二台、並んで停めてある。

須永悠真「……いいんですか。休みの日なのに」

藤代ひなた「私が、案内したいんです。だめ、ですか?」

上目遣いに、そう聞かれた。だめなわけがなかった。

須永悠真「……ぜひ、お願いします」

二人で自転車にまたがって、海沿いの道を走り出した。潮の匂いの風が、気持ちいい。ひなたさんの白いワンピースの裾が、風にふわふわ揺れている。昨日のエプロン姿とは別人みたいで、思わず目を奪われた。

藤代ひなた「こっち、私のお気に入りの場所なんです。ついてきてください!」

振り返って笑うひなたさんが、朝日に照らされて眩しかった。坂道を立ち漕ぎで登る彼女を追いかけながら、俺はもう、三ヶ月分の疲れを忘れていた。

6. 灯台の夕日

島には、点々とアート作品が置かれていた。浜辺に立つ巨大な彫刻、棚田を見下ろす展望台のオブジェ、廃校を改装したギャラリー。ひなたさんは、その一つ一つの前で、昨日みたいに楽しそうに解説してくれた。

途中、島の食堂で穴子丼を食べて、午後は海岸でぼんやり波を見た。喋って、笑って、また走って。気づけば、太陽が傾き始めていた。

藤代ひなた「最後に、一番いいところ、連れていきます」

自転車で、島の西の端の岬を目指した。白い灯台が、夕日の中に立っている。自転車を停めて、二人で芝生の斜面に並んで座った。

水平線に、太陽がゆっくり溶けていく。海全体が、燃えるようなオレンジに染まった。

須永悠真「……すげえ」

藤代ひなた「でしょう? ……私、嫌なことがあると、いつもここに来るんです」

膝を抱えて、ひなたさんが海を見つめた。風が、彼女の髪を揺らす。

藤代ひなた「東京にいた頃、毎日この景色を思い出してました。……帰ってきて、よかった」

須永悠真「……俺、昨日この島に来たばっかりなのに、なんか、もう帰りたくないです」

口が滑った。ひなたさんが、こっちを見た。夕日に染まった頬が、赤いのか、照れているのか、わからなかった。

藤代ひなた「……それ、島に、ですか?」

須永悠真「……島に、と」

言いかけて、言葉に詰まった。ひなたさんが、じっと俺を見ている。沈黙。波の音だけが、ずっと続いていた。

そのとき、岬の下の港から、フェリーの汽笛が、ぼおっと長く鳴った。

藤代ひなた「……あ」

須永悠真「今の、まさか」

藤代ひなた「……最終便。出ちゃいましたね」

二人で顔を見合わせて、どちらからともなく、ぷっと笑った。

藤代ひなた「ふふ……二日連続。私、案内が下手なのかな」

須永悠真「いや。……逃したかったのかも、俺」

言ってしまってから、心臓が跳ねた。ひなたさんは、何も言わずに、ただ夕日の方を向いた。でも、芝生についた俺の手のすぐ隣に、彼女の手が、そっと近づいてきていた。

7. 港の夜

民宿に戻ると、ハマ江さんはニヤニヤしていた。

ハマ江さん「あらまあ、また逃したんかい。しょうがないねぇ」

わざとらしくため息をついて、でも目は笑っている。

ハマ江さん「ひなたちゃんも、夕飯食べてったらええ。料理は余っとるから」

三人で食卓を囲んだ。ハマ江さんの話は面白くて、ひなたさんとずっと笑っていた。食事のあと、ハマ江さんは「年寄りは早う寝る」と言って、さっさと奥に引っ込んだ。襖を閉める間際、ちらっとこっちを見て、にっと笑ったのを、俺は見逃さなかった。

ひなたさんと二人、玄関先に出た。夜の港は、街灯がぽつぽつ灯るだけで、波の音と、遠くの漁火しかない。空には、東京では絶対に見えない数の星が瞬いていた。

藤代ひなた「……すごい星」

須永悠真「ほんとだ。降ってきそうだ」

並んで、防波堤に腰かけた。肩が、すぐ近くにある。ひなたさんが、ぽつりと言った。

藤代ひなた「……須永さん、明日は、ちゃんと帰っちゃうんですよね」

須永悠真「……一応、明後日から仕事なんで」

藤代ひなた「……ですよね」

少し、沈黙。ひなたさんが、膝の上で手をきゅっと握った。

藤代ひなた「……旅の人に、こういうこと言うの、よくないってわかってるんですけど」

須永悠真「……はい」

藤代ひなた「……今日、すごく、楽しかったんです。三年間でいちばん」

潤んだ瞳が、星明かりを映していた。俺は、もう我慢できなかった。彼女の頬に、そっと手を添える。

須永悠真「……俺もです。ひなたさん」

ひなたさんが、ゆっくり目を閉じた。俺は、その唇に、自分の唇を重ねた。

ちゅ……。

潮風の匂いがする、柔らかい唇だった。

藤代ひなた「……ん♡」

触れるだけのキスから、少しずつ深く。角度を変えて、もう一度。ひなたさんの手が、俺のシャツをきゅっと掴んだ。

藤代ひなた「……須永さん♡」

須永悠真「悠真、でいいです」

藤代ひなた「……悠真、さん♡」

潤んだ目で、ひなたさんが俺を見上げた。

藤代ひなた「……部屋、行きましょう♡」

8. 畳の部屋で

二階の和室に、二人で戻った。窓を細く開けると、波の音と、夜風が入ってくる。布団は、もう敷いてあった。ハマ江さんの仕業に違いなかった。

藤代ひなた「……女将さん、絶対わかってましたね♡」

須永悠真「……だな」

笑い合って、それから、また唇を重ねた。今度は、もっと深く。舌先で唇をなぞると、ひなたさんの口がそっと開いた。

ちゅ……んちゅ……れろ……♡

藤代ひなた「ふ……ぁ……♡」

腰に腕を回して、引き寄せる。ひなたさんの体が、ぴたりと密着した。薄いワンピース越しに、体温が伝わってくる。

藤代ひなた「……悠真さんの心臓、すごい音♡」

須永悠真「ひなたさんもだろ」

藤代ひなた「……ばれた♡」

くすっと笑う唇を、もう一度ふさいだ。畳の上にゆっくり倒れ込んで、ワンピースの肩紐に手をかける。

須永悠真「脱がせて、いい?」

藤代ひなた「……うん♡」

肩紐をするりと落とすと、白い肩と、淡いピンクのブラジャーが現れた。背中に手を回して、ホックを外す。カチッ、と緩んで、形のいい胸がこぼれ出た。先端は、ほんのり桜色。

須永悠真「……綺麗だ」

藤代ひなた「……あんまり、見ないでください♡ 恥ずかしい♡」

腕で隠そうとする手を、そっとどける。右手で、左の胸を包むように触れた。

ふにっ。

藤代ひなた「あっ……♡」

手のひらに吸い付くような、柔らかさ。指を沈めると、むにっと形を変える。親指で、先端をくりっと転がした。

藤代ひなた「ひゃっ♡♡」

びくん、と肩が跳ねる。もう小さく硬くなった先端が、指先に伝わった。

くりくり……くりくり……♡

藤代ひなた「あっ♡ あん♡♡ 悠真さんっ……♡♡」

唇を、先端に落とす。ちゅっ。

藤代ひなた「ひぅっ♡♡♡」

舌先で転がしながら、反対の胸を揉みしだく。

ちゅるっ……れろ……ちゅう……♡♡

藤代ひなた「やっ♡♡ 声、出ちゃう……♡♡ 女将さんに、聞こえちゃう♡♡」

須永悠真「じゃあ、我慢して」

藤代ひなた「むりぃ♡♡ 悠真さんの舌、気持ちよすぎて♡♡」

交互に舌を這わせて、たっぷりと味わった。ひなたさんの肌が、うっすら汗ばんでくる。

須永悠真「下も、脱がすよ」

藤代ひなた「……うん♡」

ワンピースの裾をめくり上げて、ショーツをゆっくり脱がせていく。膝を立てて閉じようとする太ももを、そっと開かせた。

須永悠真「……もう、濡れてる」

藤代ひなた「やっ♡ 言わないで……♡ 灯台で、手が触れたときから、ずっと……♡♡」

指先で、そっとなぞる。

くちゅ……。

藤代ひなた「ひゃあっ♡♡ あっ♡♡」

びくん、と腰が跳ねた。小さな突起を見つけて、指の腹でくるくると円を描く。

くり……くり……♡

藤代ひなた「あぁっ♡♡♡ そこっ……だめぇっ♡♡♡」

須永悠真「だめじゃないだろ。気持ちいいんだろ?」

藤代ひなた「だってっ♡ おかしくなっちゃう♡♡」

蜜をかき回しながら、中指を、ゆっくり沈めた。

ずぷ……♡

藤代ひなた「あああっ♡♡♡」

熱い。きつい。きゅうきゅうと、締め付けてくる。中をかき回しながら、親指で突起を同時に刺激した。

ぐちゅっ……ぐちゅっ……♡♡♡

藤代ひなた「あっあっあっ♡♡♡ 悠真さんっ……すごいっ♡♡♡」

指を曲げて、上側の壁をぐっと押す。ひなたさんの体が、びくびくと跳ね始めた。

藤代ひなた「やっ♡ 来るっ……来ちゃうっ♡♡♡」

指の動きを速める。

ぐちゅぐちゅぐちゅぐちゅっ♡♡♡♡

藤代ひなた「あああっ♡♡♡ イっ……イくぅっ♡♡♡♡」

びくんっ、びくんっ、びくんっ♡♡♡

ひなたさんの背中が、弓なりに反った。中が、ぎゅうっと指を締め付けて、蜜が溢れ出す。

藤代ひなた「はぁっ……♡♡ はぁっ……♡♡ ……指だけで、こんなの……♡♡」

9. 波の音の中で

潤んだ瞳で、ひなたさんが身を起こした。まだ余韻で震えているのに、真っ赤な顔で、いたずらっぽく笑う。

藤代ひなた「……今度は、私の番♡」

俺のズボンに手を伸ばす。ベルトを外して、下着ごと引き下ろすと――ばちんっ、と限界まで張り詰めたものが跳ね上がった。ひなたさんが、息を呑む。

藤代ひなた「……おっきい♡♡」

顔を近づけて、先端を舌先でちろっと舐めた。

藤代ひなた「ん……♡」

ちゅっ、とキスをして、それから、ぱくりと口に含んだ。温かく濡れた口の中。舌が、裏筋をなぞる。

藤代ひなた「ん……じゅるっ♡♡ れろれろ……♡♡」

ゆっくり頭を上下させる。肩で切りそろえた髪が、さらりと太ももをくすぐった。上目遣いの、潤んだ瞳。

須永悠真「ひなたさん……やばい、気持ちよすぎ」

藤代ひなた「んふ♡ もっと、してあげる♡♡」

ちゅぱっ……じゅるるっ……♡♡

頬をすぼめて、吸い上げる。深く咥えるたびに、全身に電流が走った。

須永悠真「待って、それ以上は……イっちゃう」

ぷはっ、と口を離す。唇が、唾液でてらてらと光っていた。

藤代ひなた「……ねえ、悠真さん♡」

須永悠真「ん?」

藤代ひなた「……もう、ひとつになりたい♡」

財布から、コンドームを取り出す。

藤代ひなた「……持ってたんだ?」

須永悠真「いや、これは、その……一応」

藤代ひなた「ふふ♡ いいよ、責めてない♡ ……つけて♡」

手早く装着して、ひなたさんを布団に仰向けにした。窓から差し込む星明かりに、白い裸体が青く輝いている。脚の間に体を滑り込ませて、先端を入り口にあてがった。

ぬちゅ……♡

須永悠真「入れるよ、ひなたさん」

藤代ひなた「うん♡ 来て……♡♡」

ゆっくり、腰を進める。

ずぷ……ずぷぷ……♡♡

藤代ひなた「あぁっ♡♡♡ 入って、くるぅ♡♡♡」

きゅうきゅうと締め付けながら、奥へ引き込んでくる。

ずぷん♡♡

藤代ひなた「はぁっ♡♡ 全部、入った♡♡ 奥まで、来てる……♡♡♡」

須永悠真「動くよ」

ゆっくり腰を引いて、また押し込む。

ずるっ……ずぷんっ♡♡

藤代ひなた「ああっ♡♡♡」

リズミカルに、打ちつけ始める。窓の外の波の音に、肌のぶつかる音が重なった。

パンッ……パンッ……♡♡

藤代ひなた「あっあっあっ♡♡♡ 悠真さんっ♡♡ 気持ちいいっ♡♡♡」

ひなたさんが、俺の背中にしがみついてくる。

藤代ひなた「奥っ♡♡♡ 奥に、当たってるっ♡♡♡♡」

脚が、俺の腰に絡みついた。もっと奥を求めて。角度を変えて、突き上げる。

パンパンパンッ♡♡♡

ぐちゅぐちゅぐちゅ♡♡♡

藤代ひなた「そこぉっ♡♡♡♡ 声、出ちゃうっ♡♡♡」

須永悠真「いいよ。聞かせて」

藤代ひなた「やだぁっ♡♡ でも、止まんないっ♡♡♡」

結合部から、卑猥な水音が溢れた。波の音が、それを優しく隠してくれる。

パンパンパンパンッ♡♡♡♡

藤代ひなた「やばっ♡♡ また、来るっ♡♡ イっちゃうっ♡♡♡♡」

須永悠真「俺も、もう……っ」

藤代ひなた「一緒に……♡♡♡ 一緒にイこっ……♡♡♡♡」

ひなたさんが、背中に両腕を回してしがみつく。脚も、がっちり腰に絡む。奥に押し付けるように――最後の一突き。

藤代ひなた「あぁぁっ♡♡♡♡♡!!」

須永悠真「イく……っ!」

どくんっ、どくっ、どくっ……!

藤代ひなた「イっ……イくぅっ♡♡♡♡♡♡」

ひなたさんの全身が震えて、中が、痙攣するように搾り取っていく。

びくんっ、びくんっ、びくんっ♡♡♡

藤代ひなた「はぁっ♡♡ はぁっ♡♡ ……すごかった……♡♡♡」

抱き合ったまま、荒い呼吸を繰り返した。ちゅ、と軽くキスをする。窓の外で、波が静かに寄せては返していた。

10. 朝の港

カーテンの隙間から差し込む光で、目が覚めた。

ひなたさんは、まだ俺の腕の中で眠っている。肩で切りそろえた髪が、頬にかかって、寝顔がとんでもなく無防備で可愛い。

すぅ……すぅ……。

須永悠真(……夢じゃ、なかった)

窓を開けると、朝の港が見えた。漁船が、一艘、また一艘と海へ出ていく。空も海も、洗ったように青い。

藤代ひなた「ん……♡ 悠真さん……?」

ひなたさんが目を覚ました。寝起きの、少しかすれた声。俺の腕の中で、目を細めて笑う。

藤代ひなた「……おはようございます」

須永悠真「おはよう。……今日は、さすがに帰らないと」

藤代ひなた「……ですよね」

ちょっと寂しそうに、ひなたさんが目を伏せた。俺は、ずっと考えていたことを、言葉にした。

須永悠真「ひなたさん。……旅先の出会いで終わらせたくないんだ、俺」

藤代ひなた「……え」

須永悠真「東京から、ここまで、フェリーで二時間ちょっとだろ。月に一度くらい、会いに来ちゃ、だめかな」

ひなたさんの目が、まんまるになった。それから、じわっと潤んで、ぽろっと一粒こぼれた。

藤代ひなた「……いいん、ですか? 私、島から出られないのに」

須永悠真「出なくていい。俺が来る。……それに」

俺は、彼女の手を握った。

須永悠真「正直、この島に、本気で住んでみたいって思い始めてる。リモートでできる仕事だし。……いきなりすぎ?」

藤代ひなた「……いきなりすぎます♡」

笑いながら、ひなたさんが泣いていた。

藤代ひなた「でも……うれしい。私も、悠真さんと、もっと一緒にいたい」

須永悠真「……付き合ってくれる?」

藤代ひなた「……はい。今日から、恋人ですね♡」

ひなたさんが背伸びして、俺の唇に、ちゅっと軽くキスをした。

一階に降りると、ハマ江さんが朝ごはんの支度をしながら、ニヤニヤしていた。

ハマ江さん「あらまあ、お二人さん。よう眠れたかい?」

須永悠真「……おかげさまで」

ハマ江さん「ふふ。また来るんやろ? 次は、ちゃんとフェリーの時間、確認してきな」

藤代ひなた「……女将さん、全部お見通しなんだから」

三人で、からから笑った。

港まで、ひなたさんが見送りに来てくれた。フェリーの汽笛が鳴る。乗り込む間際、彼女が言った。

藤代ひなた「悠真さん。次は……ちゃんと、最終便、逃さないでくださいね♡」

須永悠真「……いや。たぶん、また逃すと思う」

藤代ひなた「もう♡」

笑って手を振るひなたさんが、青い海を背に、どんどん小さくなっていく。

燃え尽きて、逃げるように飛び乗ったフェリー。土砂降りの雨宿りで飛び込んだ、小さな美術館。たった一人の客だった俺を、最後まで案内してくれた人が――今、俺の恋人だ。

これは、たまたまの二日間なんかじゃない。きっと、何度でもこの島に通う、その始まりの日だ。

デッキから振り返ると、梅雨明けみたいに晴れた空の下、汐ノ島が、青い海にぽつんと浮かんでいた。

― 終 ―


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