梅雨の帰省で再会した幼馴染が実家の酒蔵を継いで美人蔵元になっていて、利き酒の夜にそのまま結ばれた話

俺、瀬川航(せがわこう)、二十八歳。東京の小さな広告代理店で働いている。

地元に帰るのは、本当に久しぶりだった。

新幹線を降りて、在来線に乗り換えて、さらにバスで四十分。山に囲まれた、川沿いの小さな町。日本酒の蔵がいくつも残る、酒どころとして少しだけ名の知れた、俺の生まれ育った場所だ。

帰省の理由は、祖母の七回忌だった。

(……十年ぶり、か)

進学で町を出てから、盆も正月も理由をつけて帰らなかった。仕事が忙しいふりをして、本当はただ、変わらない田舎の空気が少し息苦しかっただけだ。

六月の町は、雨に濡れていた。梅雨どきの、しとしとと降り続く細い雨。バス停から実家まで歩く間に、傘を差していても肩が湿った。

懐かしい匂いがした。土と、川と、どこからか漂ってくる、ほんのり甘い麹の匂い。

(あ、この匂い……隣の蔵だ)

俺の実家の隣は、昔から造り酒屋だった。『倉本酒造』。木造の古い蔵と、煤けた煙突。子どもの頃、その軒下でよく遊んだ。

そして、その蔵の娘が——俺の幼馴染だった。


法事は午前中で終わった。親戚への挨拶を済ませて、俺は逃げるように外へ出た。

雨はまだ降っていた。やることもなく、傘を差して、子どもの頃に歩いた道をぶらぶらと辿る。気づけば、足は自然と隣の蔵の前で止まっていた。

『倉本酒造』の看板。その下に、小さな立て看板が増えていた。『蔵元直売所 試飲できます』。

(こんなの、昔はなかったな)

ガラス戸の向こうに、明かりが灯っている。深く考えずに、俺は引き戸を開けた。からから、と建て付けの悪い音がする。

「はーい、いらっしゃ——」

奥から、女の人の声がした。前掛けで手を拭きながら出てきた、その人を見て、俺は固まった。

歳は俺と同じくらい。髪をうしろで無造作にひとつに結んで、紺の前掛けをつけている。化粧っ気はほとんどないのに、肌が白くて、目もとが涼しげで、ふっと目を引く整った顔立ちだった。

その顔に、見覚えがありすぎた。

「……千尋?」

声が、勝手に出た。

倉本千尋(くらもとちひろ)。俺のひとつ下の幼馴染。泣き虫で、いつも俺のうしろをついて回っていた、あの千尋。

向こうも、目を大きく見開いた。手にしていた布巾を、ぽとりと落とす。

「……航くん? うそ、航くんでしょ?」

雨の音だけが、店先にさあさあと響いていた。


「ちょっと待って、ほんとに航くん……? 十年ぶりくらいじゃない?」

「ああ、たぶんそのくらい。ばあちゃんの法事で帰ってきたんだ」

「そっか……お悔やみ、遅くなったけど。航くんのおばあちゃん、よくお団子くれたよね」

千尋は布巾を拾って、ぱたぱたと埃を払いながら笑った。その笑い方が、子どもの頃のままで、なんだか胸の奥がくすぐったくなる。

「千尋、ここ……継いだのか? 蔵」

「うん。三年前にね。お父さんが腰やっちゃって、ちょうど私も東京の会社辞めたタイミングで。……まさか私が継ぐとは思わなかったでしょ」

意外だった。千尋は昔、「こんな田舎、絶対出ていくんだ」が口癖だった。誰よりも町を出たがっていたのは、千尋のほうだったのに。

「正直、びっくりした。お前、町から出るって言ってたじゃん」

「言ってたねえ。出たよ、ちゃんと一回。東京で五年働いた。……でも、なんか、帰ってきちゃった」

千尋はちょっと困ったように笑って、棚に並んだ一升瓶を指でなぞった。

「この匂いがね、東京にいるとずっと恋しくて。航くんは? まだ東京?」

「ああ。広告の仕事してる。……お前と逆だな。俺は帰ってこなかった」

言ってから、少しばつが悪くなった。千尋は気にする様子もなく、ふふっと笑う。

「ねえ、せっかく帰ってきたんだしさ。うちの酒、飲んでってよ。試飲、できるんだよ」

その「飲んでってよ」の言い方が、なんだか昔、「遊んでこ」と誘ってきたあの頃の千尋と重なって、俺は断れなかった。


直売所の隅に、小さな試飲カウンターがあった。千尋はおちょこを二つ出して、冷えた瓶を傾ける。

「これがうちの定番。それで、こっちが私が初めて仕込みから任された純米吟醸」

「お前が造ったのか」

「杜氏のおじさんに手取り足取り、だけどね。でも、私の酒って言っていいやつ」

少し誇らしげに言う千尋の頬が、ほんのり上気していた。差し出されたおちょこを口に運ぶ。すっと喉を通って、あとから米の甘みと、かすかな果実みたいな香りが広がった。

「……うまい。これ、ほんとにうまいな」

「ほんと? お世辞じゃなく?」

「お世辞でこんなこと言わねえよ。びっくりした。すげえな、千尋」

その瞬間、千尋の顔がぱっと輝いた。泣き虫だった頃の面影のまま、でも、確かに大人の女の顔で。

「……うれしい。航くんにそう言ってもらえるの、いちばんうれしいかも」

その「いちばん」に、なんだか妙にどきりとした。誤魔化すように、俺はもう一杯おちょこを傾けた。

奥のほうから、年配の男の人がのっそりと顔を出した。蔵の杜氏さんらしい。

「千尋ちゃん、もう仕込み水の準備しとくか? ……おや、お客さんかい」

「あ、田所さん。お客さんっていうか、隣の航くん。覚えてる? 瀬川さんちの」

「ああ、あの泣き虫の千尋ちゃんを、いっつも泣かせてた坊主か」

「泣かせてないですよ。守ってたんです」

「はは、どうだか。……千尋ちゃん、今夜は雨で蔵も静かだ。あとは若いもんで、ゆっくりやんな」

田所さんはそう言って、にやりと笑って奥へ引っ込んでいった。なんだか、気を利かせられたのが丸わかりだった。


雨は、夜になっても止まなかった。

直売所を閉めたあと、千尋は「二階、見てかない?」と俺を蔵の二階へ誘った。昔、よく二人で隠れて遊んだ、麹室の上の物置部屋。今は、千尋が試作の酒を並べる小さな利き酒部屋になっていた。

古い木の床に、座布団。窓の外には、雨に煙る町の灯りがぼんやりと滲んでいる。

「ここ、覚えてる? 航くんと、よく秘密基地ごっこした」

「覚えてるよ。お前が梯子から落ちて大泣きして、俺が怒られたとこだろ」

「もー、それ一生言うじゃん」

笑いながら、千尋は新しい瓶を開けて、二つのグラスに注いだ。今度は常温の、もっと香りの濃い酒だった。二人で、ぽつぽつと昔話をした。誰が転校した、どの店が潰れた、田んぼの蛙がうるさかった夜のこと。

話しているうちに、酒も手伝って、千尋の頬がだんだん赤くなっていった。

「……ねえ、航くん。正直に言うとね」

「ん?」

「私が東京から帰ってきたの、蔵のためだけじゃないんだ」

雨の音が、急に近くなった気がした。

「東京、しんどくてさ。仕事も、人も。そういうとき、思い出すのいつも、この町のことで……この町のこと思うと、絶対、航くんが出てくるんだよね」

「……俺?」

「うん。子どもの頃、私が泣くと、航くんだけは絶対そばにいてくれたから。……ずっと、ちょっとだけ、好きだったんだよ。航くんのこと」

ぽつりと落とされたその言葉に、俺は何も返せなくなった。胸の奥が、じんと熱くなる。

「……それ、酒のせいで言ってるんじゃないだろうな」

「半分はそうかも。でも、半分は、ほんと」

千尋は、いたずらっぽく、でもどこか不安そうに、俺の目をのぞき込んだ。


その目を見ていたら、もう、誤魔化せなかった。

「……俺も。十年ぶりにお前の顔見て、正直、心臓やばかった」

「うそ」

「ほんとだよ。泣き虫だったお前が、こんなきれいな蔵元になってて……ずるいだろ、それ」

千尋の目が、みるみる潤んでいった。やっぱり泣き虫は変わってないな、と思った瞬間、俺はもう手を伸ばしていた。彼女の頬に触れる。少し冷たい指先とは逆に、頬は酒のせいで熱かった。

「……航くん」

「キス、していいか」

「……聞かないでよ、そういうの」

それが、答えだった。ゆっくり顔を近づけて、俺は千尋の唇に、自分の唇を重ねた。

ちゅ、と。

「ん……っ」

柔らかくて、ほんのり酒の味がした。一度離れて、目を合わせて、どちらからともなく、もう一度深く重ねる。

ちゅ……ちゅぷ……

「は……ん……っ」

唇のあわいから舌が触れると、千尋はおずおずとそれに応えた。十年分の距離が、溶けていくみたいだった。俺は彼女の背中に腕を回して、ぐっと引き寄せた。


「……千尋。続き、いいか」

「……うん。誰も、来ないから。今夜は」

雨の二階に、二人きり。窓の灯りだけが、ぼんやりと部屋を照らしていた。俺は千尋を、敷いた座布団の上にそっと横たえた。隣に座ると、彼女の体温が肩から伝わってくる。

「緊張、する……。十年も、想ってた相手だから」

「俺もだよ。……嫌なら、やめる」

「やめないで」

自分から、はっきりとそう言った千尋に、胸の奥が締めつけられた。もう一度、唇を重ねる。今度のキスは、さっきより深くて、もっと熱かった。

ちゅぷ……れろ……ちゅ……

「ん……ふ……っ」

キスをしながら、俺は彼女の前掛けの紐をほどいた。シャツのボタンを、一つ、また一つと外していく。急かさないように、ゆっくりと。

「……きれいだ、千尋」

「やだ……あんまり見ないで……恥ずかしいよ……」

「無理。十年ぶりなんだから、ちゃんと見せろ」

恥ずかしそうに顔を背ける千尋の、その首筋に唇を落とす。

ちゅ……ちゅっ……

「ん……っ」

鎖骨に、肩に、唇を這わせるたびに、白い肌がぴくんと震える。ブラのホックを外すと、形のいい胸がこぼれ出た。手のひらでそっと包むと、しっとりと吸いついてくる。

「あ……っ」

「やわらかいな……」

「もう……いちいち言わないでってば……っ」

やわやわと揉みながら、指の腹で、つんと立ちはじめた先端をかすめると、千尋の体がびくっと跳ねた。

「ひゃ……っ、そこ……っ」

「ここ、弱いのか」

「し、知らない……っ」

強がる千尋の先端を口に含んで、舌で転がしはじめると、もうだめだった。

れろ……ちゅ……ちゅうっ……

「あ……っ、ん……っ♡ やぁ……っ♡」

甘い声が、勝手に漏れる。雨の音に混ざって、その声が部屋に溶けていく。胸を愛撫しながら、もう片方の手を、彼女の腿の内側へ滑らせた。

「ん……っ♡」

「力、抜いて。痛くしないから」

その声に、千尋の体から少し力が抜けた。下着の上から、いちばん敏感なところに触れると、布越しでも、もうそこが熱を持っているのがわかった。

くちゅ、と。

「ひゃ……っ♡」

「……もう、こんなになってる」

「言わないで……っ♡ キスのとき、から……っ」

下着をずらして、直接そこに触れる。敏感な突起を、指の腹でくるくると撫でると、千尋は俺の腕にぎゅっとしがみついた。

くちゅ……くちゅ……

「あっ♡ あっ♡ そこ……っ♡」

「気持ちいいか」

「うん……っ♡ 気持ちいい……っ♡」

指を、ゆっくり中へ滑り込ませる。

ずぷ……っ

「あぁ……っ♡」

熱くて、とろとろに濡れていた。中をゆっくり押し広げて、感じる場所を確かめるように撫でると、千尋の腰が浮いた。

「ここか」

「っ♡♡ そこ、やばい……っ♡」

弱い場所を指の腹で擦りながら、親指で突起を転がす。千尋の腰は、もう自分の意思では止まらないようだった。

くちゅくちゅくちゅっ……

「あっ♡ あっ♡ だめ……っ♡ それ続けたら……っ♡」

「いいよ。イって」

「やっ♡ 見ないで……っ♡ 恥ずかしいの……っ♡♡」

指の動きを速めると、千尋の体はあっという間に高みへ押し上げられた。

「あっ♡ あっ♡ あっ♡——っ♡♡♡」

びくびくっ、と腰が跳ねて、彼女は俺の腕の中で体を丸めて達した。息を切らせる千尋の額に、俺はそっとキスを落とした。汗で張りついた前髪を、指でよけてやる。

「……イったな」

「……っ、言わないでってば……っ♡」


「……ねえ、航くん」

「ん」

「私ばっかり、ずるいよ。航くんのも……ちゃんと、ちょうだい」

息を整えながら、千尋がそう言った。十年ぶりに会った幼馴染が、こんなことを言うなんて。俺は、ごくりと喉を鳴らした。彼女がゆっくり体を起こして、俺のシャツに手をかける。

千尋を、もう一度横たえる。脚の間に体を割り込ませると、彼女がきゅっと俺の腕を握った。

「……ちゃんと、つけるから」

「うん……。航くん、優しくして……。久しぶり、だから……っ」

避妊具をつけて、俺はもう一度、彼女の頬に手を添えた。

「いくぞ」

「……うん。来て、航くん」

ずぷ……っ♡

「ん……あぁ……っ♡♡」

入っていく瞬間、千尋は俺の背中に腕を回してしがみついた。きつい。でも、とろとろに濡れているから、彼女のいちばん奥まで、ゆっくりと収まっていく。

ずず……っ

「あ……っ♡ 奥まで……来てる……っ♡」

「……っ、千尋の中、すごい熱い」

根元まで繋がって、俺はふっと息を吐いた。十年分の距離が、繋がった場所から、じんわり埋まっていく気がした。千尋が、震える声で囁く。

「……繋がってる。航くんと、私……っ♡」

「ああ。……ずっと、こうしたかったのかもな。俺たち」

「っ♡♡ そういうの、ずるい……っ♡」

ゆっくり、動きはじめる。

ずちゅ……ぱちゅ……

「あっ♡ あっ♡ ん……っ♡」

最初は、彼女の体を気遣う優しい律動。引くたびに切なくて、奥に届くたびに、千尋の口から甘い声が漏れる。

「千尋、気持ちいいか」

「……っ♡ うん……っ♡ すごく……っ♡」

「俺も。……お前と、こうなれるなんてな」

千尋が俺の首に腕を回して、自分から唇を求めてきた。キスをしながら繋がって、だんだん律動が深くなっていく。奥のいちばん感じる場所を突くたびに、彼女の体が跳ねた。

ぱちゅ……ぱちゅ……ぱちゅっ♡

「あっ♡ あっ♡ そこ……っ♡ 奥、当たるの……っ♡♡」

「ここ、好きか」

「っ♡♡ 好き……っ♡ 航くんの、好き……っ♡♡」

口走ってから、それが体のことなのか、俺自身のことなのか、千尋は自分でもわからなくなっているようだった。たぶん、どっちもだ。俺は彼女の脚を抱え直して、結合を深くした。

ぱちゅんっ♡♡

「ひあっ♡♡ 深いっ……♡♡」

「千尋、中、すごい締まってる」

「だって……っ♡ 気持ちよくて……っ♡♡」

雨の音と、二人の息と、肌のぶつかる音が、古い蔵の二階に満ちる。俺はもう、目の前のこの子が愛しくてたまらなかった。

「千尋……そろそろ……っ」

「うん……っ♡ 私も……っ♡ 一緒が、いい……っ♡」

千尋をぎゅっと抱きしめて、最後の律動を速める。

ぱちゅぱちゅぱちゅっ♡♡♡

「あっ♡ あっ♡ あっ♡♡ イクっ……♡ 航くん、一緒に……っ♡♡」

「ああ……っ、千尋……っ!」

ぱちゅんっ——♡♡♡

「あぁぁ……っ♡♡♡」

奥でびくびくと跳ねる俺を、千尋の体がぎゅうっと締めつけながら受け止めた。二人で、同じ波にさらわれる。俺は彼女の上で、はぁ、と大きく息を吐いた。汗ばんだ二つの体が、ぴったり重なったまま、しばらく動けなかった。

「……はぁ……っ♡ すごかった……」

「……千尋」

「ん……?」

「好きだ。十年ぶりに会って、こんなこと言うの変かもしれないけど。……好きだ」

千尋の目から、ぽろぽろと涙がこぼれた。笑いながら、泣いていた。

「……私も。ずっと好きだった。やっと言えた」

「お互いさまだな」

俺は、涙で濡れた千尋の頬に、何度もキスを落とした。


気づくと、窓の外の雨が、いつのまにか小降りになっていた。

雲の切れ間から、夜明け前の薄い光が滲みはじめている。俺は千尋の隣で寝そべって、彼女の髪をくしゃくしゃと撫でていた。麹の甘い匂いと、千尋の体温が、同じくらい心地よかった。

「……ねえ、航くん」

「ん」

「航くんは、東京に帰っちゃうんだよね」

「……ああ。仕事、あるからな」

千尋が、ちょっとだけ寂しそうな顔をした。でも、俺はもう、決めていた。

「でもさ。俺の仕事、リモートでもできるんだ。ノートパソコン一個あれば、どこでも」

「……それって」

「月の半分くらい、こっちにいてもいいかもって話。……お前の蔵の手伝い、できるかわかんないけど。直売所の看板くらいなら、デザインできる」

千尋の目が、まんまるになった。それから、くしゃっと顔をほころばせる。

「……ほんとに? 無理しなくて、いいんだよ?」

「無理じゃない。俺さ、ずっと地元が息苦しいって思ってた。でも、それ、たぶん帰る理由がなかっただけなんだよな」

「……理由、できた?」

「できたよ。お前っていう、でかいのが」

千尋は、また泣いた。今度は、はっきり笑いながら。

「もー、泣き虫はそっちじゃん」

「うるさい。お前ほどじゃねえよ」

二人で笑って、もう一度、軽くキスをした。

階下から、田所さんが仕込みを始める音がする。木桶を転がす、ごとごとという音。新しい一日が、蔵に始まろうとしていた。

「ねえ、航くん。下、降りよ。朝ごはん、作るから」

「ああ。……あと、あれ。お前が初めて仕込んだっていう、あの吟醸」

「ん?」

「あれの名前、俺に考えさせてくれよ。広告屋の仕事だろ、そういうの」

「ふふ、いいよ。じゃあ、すっごくいいの、頼むね」

俺たちは、服を着て、二人で軋む梯子を降りた。

十年も帰らなかった町の、雨上がりの朝。隣の家の幼馴染は、いつのまにか美人の蔵元になっていて、そして今、俺の恋人になった。

窓の外、雨に洗われた山の緑が、朝の光を浴びて、まぶしいくらいに輝いていた。

― 終 ―


編集部プロフィール画像

編集部が運営。「あの夜」で読める恋の体験談を厳選して公開しています。