俺、結城涼介、32歳。都内の物流系の会社で、中堅どころの会社員をやっている。
仕事はそれなりに順調だ。役職も付いて、給料も悪くない。 ただ、私生活の方は——正直、行き詰まっていた。
きっかけは、去年の年末。地元の友達が立て続けに結婚して、気づけば独身は俺だけになっていた。 焦って、マッチングアプリを片っ端から入れた。 週末は知らない女性とカフェで一時間、当たり障りのない会話をして、二度と会わない。 合コンにも行った。盛り上がっても、連絡先を交換した翌週には返信が途絶える。
半年。ひたすら、すり減った。
(……もう、自分一人でやるの、限界だな)
そんな俺を見かねて、会社の同期の田所が言ったのだ。
「お前さ、もうアプリとか合コンとか向いてないんだよ。プロに頼め、プロに」
「プロって」
「結婚相談所。俺の従兄弟、それで結婚したぞ。担当のカウンセラーが全部お膳立てしてくれるんだと」
「相談所か……なんか、ハードル高いな」
「四の五の言うな。一回、面談だけ受けてこい。無料なんだから」
田所に半ば背中を押される形で、俺は駅前の結婚相談所に、初回面談の予約を入れた。
*
6月の、水曜の夜。
梅雨入りしたばかりで、朝からしとしとと雨が降り続いていた。 仕事を定時で切り上げて、傘を差して、相談所の入っているビルに向かう。 予約は19時。正直、気が重かった。
(婚活相談所って、どんな感じなんだろ。ガツガツ営業されたら、やだな)
ビルの5階。降りると、落ち着いた内装のフロアが広がっていた。 間接照明に、観葉植物。受付の女性に名乗ると、奥のカウンセリングルームに通された。
個室だった。小さな丸テーブルを挟んで、二人掛けのソファが向かい合っている。 俺はソファに座って、出されたお茶に口をつけた。
しばらくして、ノックの音。
「お待たせいたしました。本日、担当させていただきます——」
ドアが開いて、女性が入ってきた。 紺のジャケットに、白いブラウス。きちんとまとめた髪。手には、ファイルと名刺入れ。
その顔を見た瞬間。 俺の心臓が、どくん、と大きく跳ねた。
(……え)
見間違いかと思った。でも、違う。 切れ長の、少し下がり気味の優しい目。鼻にかかった、特徴的な低めの声。 間違えるはずがない。だって、2年も付き合っていたんだから。
「——カウンセラーの、七瀬と……」
名刺を差し出しかけた彼女の言葉が、ぴたり、と止まった。 七瀬の視線が、俺の顔で固まる。名刺を持つ指が、わずかに、震えた。
「……結城、くん?」
藤代七瀬。 3年前まで、俺の恋人だった女だ。 そして——別れを切り出したのは、他でもない、俺の方だった。
*
カウンセリングルームの空気が、完全に凍りついた。
七瀬は名刺を差し出した姿勢のまま、しばらく動けずにいた。 俺も、お茶のカップを持ったまま、固まっていた。
「……マジで、七瀬、なのか」
「……うん。びっくり、した。お名前、結城涼介様って……同姓同名かと思って」
「いや、その、まさかお前がここで……」
七瀬は、ふっと息を吐いて、それから、すっと背筋を伸ばした。 さっきまでの動揺を、無理やり仕舞い込むみたいに。
「……失礼しました。改めまして。担当カウンセラーの、藤代七瀬と申します」
そう言って、彼女は、テーブルに名刺を置いた。 完璧な、営業スマイル。でも、その笑顔が、ほんの少しだけ、引きつっているのを、俺は見逃さなかった。
藤代七瀬、29歳。 俺より3つ下。付き合っていた頃は、雑貨メーカーで営業事務をやっていた。 おっとりして、でも芯のしっかりした女だった。
別れたのは、3年前。 当時の俺は、ちょうど今のポジションに昇進する直前で、毎晩終電、休日出勤も当たり前。 七瀬と会う時間が、どんどん削られていった。
「最近、ちゃんと顔も見れてないね」
そう寂しそうに言う七瀬に、俺は、こう返してしまった。 「今は仕事が大事な時期なんだ。お前を幸せにできる自信がない。……一回、距離を置こう」と。
距離を置く、なんて、ただの言い訳だった。 本当は、忙しさを理由に、向き合うのが面倒になっていただけ。 七瀬は、泣きながら、「分かった」と言って、去っていった。
その七瀬が今、結婚相談所のカウンセラーとして、俺の前に座っている。 「あなたの結婚を、お手伝いします」という顔で。
(……なんつう、皮肉だよ)
「えっと……結城様。今日は、ご入会の前の、初回カウンセリングということで……ご希望の条件とか、結婚への価値観とか、お伺いしていくんですけど」
「……様、はやめてくれ。やりにくい」
「……でも、お仕事ですから」
七瀬は、ファイルを開いて、ボールペンを構えた。 プロの顔。でも、ペンを持つ手は、まだ少し、震えていた。
*
カウンセリングは、ぎこちなく進んだ。
七瀬は、マニュアル通りに質問してくる。 希望する相手の年齢、職業、結婚後の生活のイメージ。 俺は、しどろもどろに答える。元カノに「どんな女性が好みですか」と聞かれて、まともに答えられる男がどこにいる。
「では……結婚相手に求める条件を、3つほど挙げていただけますか」
「条件って言われてもな……」
「価値観が合う方、とか。一緒にいて落ち着く方、とか」
「……一緒にいて、落ち着く人、かな」
書き取ろうとした七瀬の手が、止まった。 ほんの一瞬。彼女は、何か言いかけて、でも、何も言わずに、ペンを走らせた。
俺は、たまらず、口を開いた。
「……七瀬さ。なんで、この仕事してんの」
「……仕事の話と関係ない質問は」
「いいじゃん。久しぶりなんだから」
七瀬は、少し迷ってから、ペンを置いた。
「……前の会社、辞めたの。2年前に。なんか、こう……自分が幸せになるより、人の幸せのお手伝いをする方が、向いてるなって思って」
「人の幸せ、ねえ」
「うん。だって、私……」
そこで、七瀬は、言葉を切った。 言いかけて、飲み込んだ。何を言おうとしたのか、俺には、なんとなく分かった気がした。
窓の外では、雨が、まだ降り続いていた。
「……結城くんは、結婚、したいんだね」
「まあ……周りがみんな結婚していって、焦ってるだけかもしれないけど」
「焦り、か」
「お前は。……してないの、結婚」
「……っ」
七瀬の頬が、わずかに、こわばった。
「……してないよ。人の縁を結ぶ仕事してるのに、自分の縁は、さっぱり」
そう言って、七瀬は、力なく笑った。 その笑い方が、3年前と、まったく同じで。 俺の胸の奥が、きゅっと、痛んだ。
*
その日の面談は、結局、ろくに条件も決まらないまま終わった。
帰り際、エレベーターホールまで、七瀬が見送りに来た。 他のスタッフはもう奥に引っ込んでいて、フロアには、俺たち二人だけだった。
「……今日は、ごめんね。私が担当だと、結城くん、やりにくいよね」
「いや……」
「担当、変えてもらうこともできるから。男性のベテランカウンセラーもいるし」
「……お前がいい」
口から、勝手に、言葉が出ていた。 七瀬が、目を丸くして、俺を見た。
「いや、その。お前が担当の方が、なんつーか……気楽っていうか」
「気楽って……元カレ相手に、気楽って」
「……変か」
「……変だよ。ふふ」
七瀬が、ちょっとだけ、いつもの調子で笑った。 プロの営業スマイルじゃない。昔の、俺の知ってる七瀬の笑顔だった。
エレベーターが来て、俺は乗り込んだ。 ドアが閉まる直前、七瀬が、ぽつりと言った。
「……来週、本入会の手続き、来てね。待ってるから」
ドアが閉まる。 一人になった箱の中で、俺は、自分の心臓が、やけに速く打っているのに気づいた。
(……なんで、こんなにドキドキしてんだよ)
婚活のために来た相談所で、まさか、元カノに再会するなんて。 しかも、別れを切り出した、罪悪感のある相手に。
なのに、俺の頭の中は、もう、新しい出会いのことなんて、これっぽっちも考えていなかった。 七瀬の、引きつった営業スマイルと、最後に見せた、昔のままの笑顔のことばかり、考えていた。
*
翌週。俺は、本当に、本入会の手続きに行った。
七瀬が、書類の書き方を、丁寧に説明してくれる。 プロフィールの作り方、お見合いの申し込み方、断り方のマナー。
「お見合いの場って、慣れないと緊張するから。よかったら、一回、練習しておく?」
「練習?」
「うん。模擬お見合い。私が相手役やって、会話の流れとか、見てあげる。サービスの一環だから」
——サービスの一環。 そう言いながら、七瀬は、なぜか、少しだけ目を逸らしていた。
数日後の、土曜の昼。 模擬お見合いの場所として七瀬が指定したのは、相談所が提携している、ホテルのラウンジだった。 本番のお見合いと、同じシチュエーションで練習する、ということらしい。
ラウンジに現れた七瀬を見て、俺は、息を呑んだ。
仕事用のジャケット姿じゃなかった。 淡いブルーのワンピース。緩く巻いた髪。控えめだけど、きちんとした化粧。 お見合いの「相手役」として、女性の側の装いをしてきたのだ。
「……お前、それ」
「な、なに。模擬お見合いだもん。ちゃんと、女性側の格好してこないと、練習にならないでしょ」
「……いや。似合ってる」
「……っ、もう。茶化さないで」
頬を赤くして俯く七瀬は、カウンセラーの顔じゃなくて、完全に、一人の女だった。
模擬お見合いは、和やかに進んだ。 七瀬は「初めまして、藤代と申します」なんて、他人のフリをして会話をリードする。 俺も、それに乗っかって、初対面の男のフリをする。
でも、20分もすると、二人とも、フリを続けられなくなった。
「……ふふっ。だめだ。結城くん相手に、初対面のフリ、無理」
「俺も。お前のこと知りすぎてて、緊張感ゼロだわ」
「練習にならないね、これ」
「なってないな」
二人で、声を上げて笑った。 気づけば、模擬お見合いなんて、どこかに吹き飛んで。 ただの、3年ぶりの、元恋人同士の、お茶になっていた。
*
ラウンジを出ると、空が、急に暗くなっていた。 さっきまで止んでいた雨が、ざあっと、本降りになっている。梅雨らしい、突然の豪雨だった。
「うわ……すごい雨」
「傘、持ってきたか」
「……持ってきてない。やだ、どうしよ」
俺は、自分の折りたたみ傘を開いた。一本しかない。
「……入れよ。駅まで」
「え……いいよ、悪いよ」
「いいから。濡れるぞ」
七瀬は、おずおずと、俺の傘の中に入ってきた。 小さな折りたたみ傘。二人で入ると、肩が、ぴったりとくっつく。 昔と同じ、柔軟剤の匂いがした。それだけで、3年前の記憶が、どっと押し寄せてくる。
雨脚が強くて、駅まで遠回りになった。 軒先で、少し雨宿りをすることにした。閉まったシャッターの前。雨音だけが、響いている。
しばらく、二人とも、黙っていた。 やがて、七瀬が、雨を見つめたまま、ぽつりと言った。
「……ねえ、結城くん。私、ずっと、聞きたかったことがあるの」
「なんだよ」
「あのとき。私たちが別れたとき。……結城くんは、本当に、私のこと、もう好きじゃなくなってたの?」
不意打ちだった。 俺は、雨を見つめたまま、すぐには答えられなかった。
「ずっと、思ってたの。私、何か悪いことしたのかなって。もっと、結城くんの仕事のこと、理解してあげればよかったのかなって」
「……違う。お前は、何も悪くない」
「じゃあ、なんで」
「……俺が、逃げたんだ」
ようやく、言えた。 3年間、ずっと、喉の奥に引っかかっていた言葉。
「仕事が忙しいのは、本当だった。でも、それを言い訳にして、お前と向き合うのが、怖くなったんだ。お前を幸せにできるのか、自信がなくて。……だから、自分から、突き放した」
「……っ」
「ずっと、後悔してた。あんな別れ方、しなきゃよかったって。お前のこと、傷つけて、本当に、悪かった」
七瀬が、顔を上げた。 その目に、みるみる、涙が溜まっていく。
「……バカ」
「ああ。バカだったよ、俺」
「3年も、経ってから……今さら、そんなこと言われても……」
そう言いながら、七瀬の手が、俺のシャツの裾を、きゅっと掴んでいた。
「私……ずっと、結城くんのこと、忘れられなかった。人の縁を結ぶ仕事しながら、自分は、結城くんと別れたこと、引きずってたの。情けないでしょ」
「……情けなくなんかない」
「結城くんが、入会の予約してきたとき。名前見て、心臓、止まるかと思った。神様、いるのかなって、思った」
雨音が、二人を、包んでいた。 俺は、七瀬の濡れた頬に、そっと手を伸ばした。
*
「……七瀬」
「……っ、待って。私、今、仕事中で……」
「もう、仕事の時間、とっくに過ぎてる」
七瀬が、はっとして、腕時計を見た。 模擬お見合いの予定時間は、とっくに終わっていた。
「……ほんとだ」
「だろ」
「……ずるいよ、そういうの」
涙の溜まった目で、七瀬が、俺を見上げた。 雨に濡れた前髪。潤んだ瞳。半分開いた、震える唇。
俺は、もう、自分を止められなかった。
「……うち、来るか。この近くなんだ」
「……っ」
「嫌なら、断ってくれていい」
七瀬は、しばらく、俯いていた。 そして、ゆっくりと、小さく、頷いた。
「……行く。結城くんちに、行きたい」
その声は、カウンセラーの声じゃなかった。 3年前、俺だけが知っていた、一人の女の声だった。
俺のマンションは、その駅から、歩いて10分のところにあった。 傘を一本、二人で差して、肩を寄せ合って歩く。 玄関のドアを開けて、二人で中に入る。ドアが閉まった瞬間、空気が、変わった。
「……なんか、緊張する」
「俺も」
「3年ぶりだもん。結城くんと、こんなふうに、二人きりになるの……」
俺は、七瀬の濡れた肩から、そっとカーディガンを外した。 七瀬が、びくっと震えて、でも、逃げなかった。 ゆっくりと、顔を上げる。涙の跡が残る頬。潤んだ瞳。3年前と、同じ顔。
「……キス、していいか」
「……聞かないでよ。恥ずかしい……」
俺は、ゆっくりと、顔を近づけた。
ちゅ……
3年ぶりの、唇。柔らかくて、雨の匂いと、七瀬の甘さがした。
「ん……っ」
七瀬の体が、ぴくっと震えた。一度離れて、もう一度。今度は、少し深く。
ちゅ……ちゅぷ……
「ん……ぅ……♡ 結城くんの、キス……変わってない……♡」
「お前も。全然、変わってないよ」
唇を重ねながら、俺の手が、七瀬の背中に回る。 七瀬も、俺のシャツを、ぎゅっと握ってきた。 舌を差し入れると、七瀬も、おずおずと、舌を絡めてくる。
ちゅる……れろ……ちゅぷ……
「は……っ、ん……♡」
*
キスをしながら、俺たちは、寝室へ移動した。 七瀬を、そっとベッドに座らせる。スプリングが、きしっと鳴った。
「……あんまり、見ないで。3年前より、ちょっと、痩せちゃったから……」
「バカ。お前、昔より、綺麗になってるよ」
「……っ、ずるい。そういうとこ、昔のまんま……♡」
俺は、七瀬のワンピースのファスナーに、手をかけた。 背中のファスナーを、ゆっくりと下ろしていく。 白い肌が、現れる。淡いブルーのブラに包まれた、柔らかそうな胸。
「……綺麗だ」
「やだ……恥ずかしい……♡」
ワンピースを肩から滑り落として、背中のホックに手を回す。
パチン。
ブラが緩んで、落ちる。ぷるんっ、と、柔らかな胸が、解き放たれた。
「……っ、見ないでってば……♡」
形のいい、ふっくらとした胸。薄いピンクの先端が、もう、少し硬くなりかけていた。 俺は、片方の胸に、そっと手を添えた。
むにゅっ……
「あっ……♡」
「……柔らかい」
手のひらに、収まりきらない、柔らかな重み。 指が沈み込んで、離すと、ぷるんと戻ってくる。 3年ぶりの感触は、懐かしくて、それでいて、新鮮で、たまらなかった。ゆっくりと、揉みしだく。
むにゅ……ふにゅ……
「ん……っ、あ……♡ そこ……♡」
「感じてる?」
「……っ、言わせないで……♡」
先端を、指の腹で、そっと転がす。
くりっ……
「ひぁっ♡ そこ……っ♡」
七瀬が、大きく仰け反った。昔から、ここが弱かったのを、思い出す。
「ここ、相変わらず敏感だな」
「……っ、覚えてるの、ずるいよ……♡」
両方の先端を、同時につまんで、くりくりと弄ぶ。
くりくりっ♡ こりこりっ♡
「あぁんっ♡ だめっ……両方、いっぺんにっ……♡」
七瀬の呼吸が、荒くなっていく。俺は、片方の胸に、顔を埋めた。
ちゅぷっ♡
「ひゃぅっ♡♡ す、吸っちゃ……っ♡」
先端を口に含んで、舌先で、ねっとりと舐め回す。
れろっ♡ ちゅるっ♡ ちゅうぅっ♡
「あっ♡ あっ♡ やぁっ♡ 結城くんっ……♡ きもちいぃ……♡」
片方を口で、もう片方を指で。 交互に責めていると、七瀬の声が、どんどん甘く、とろけていく。 さっきまでの、凛としたカウンセラーの面影なんて、跡形もなかった。
「結城くん……っ、私だけ脱がされてるの、恥ずかしい……♡ 脱いで……?♡」
俺は、シャツを脱ぎ捨てた。 七瀬が、俺の胸に、そっと手を当てる。
「……ちょっと、引き締まった? 昔より、男っぽくなってる……♡」
「3年も経ってるからな」
「……えっち♡」
そう言って、七瀬は、俺のベルトに手をかけた。
カチャ……ジー……
ズボンを下ろすと、下着の中で、もうパンパンに張り詰めているのが、丸わかりだった。
「……っ、すごい♡ もう、こんなに……♡」
「お前が、エロすぎるからだろ」
「もう……♡ でも、嬉しい♡」
七瀬が、おずおずと、下着の上から、俺のモノに触れた。
さわっ……にぎっ……
「……熱い♡ ねえ……私、してあげたい♡」
「……いいのか」
「うん。3年分、ちゃんと、可愛がってあげたいの♡」
七瀬が、ベッドの上で、俺の前に、ちょこんと膝をついた。両手で、俺のモノを包み込む。
にぎっ……しゅっ……しゅっ……
「ん……♡ 結城くんの……硬い……♡」
「七瀬の手、気持ちいい……」
「ふふ♡ じゃあ、お口でも……♡」
七瀬が、先端に、ちゅっとキスをした。
ちゅっ♡ ちゅぷっ♡
小さなキスを繰り返してから、ゆっくりと、咥え込む。
ずぶ……ちゅぷ……♡
「っ……七瀬……っ」
温かくて、濡れていて、舌が、ねっとりと絡みついてくる。 七瀬が、ゆっくりと、頭を上下させ始めた。
じゅぶっ♡ ちゅぷっ♡ じゅるるっ♡
「んぷっ……ちゅるっ……れろれろ……♡」
「くっ……上手くなったな、お前……」
「んっ♡ ……結城くんのだから、上手にしたいの♡」
七瀬が、上目遣いで、俺を見上げる。 唇でしっかり圧をかけながら、舌先で、裏筋をなぞってくる。 先端に来るたびに、ちゅるんっと、舌で転がす。
じゅぷっ♡ ちゅぱっ♡ じゅるるるっ♡
「んんっ♡ ……結城くんの味、懐かしい……♡」
「やべっ……七瀬、気持ちよすぎ……」
「んっ♡ もっと、してあげる……♡」
ずぶっ♡ ずぶっ♡ じゅぷぷぷっ♡
奥まで咥え込んで、喉の奥が、当たる。
「んぐっ……♡ んぷっ……♡」
「っ……七瀬、一回、止めてくれ。このままだと、出ちゃう」
「んっ……ぷはっ♡ ……だめ。まだ、出さないで♡ ちゃんと、私の中で、感じてほしいの……♡」
そう言って、七瀬は、口を離した。唾液の糸が、つぅっと、光る。
「……エロいな、お前」
「……っ、結城くん限定だよ♡」
七瀬が、ベッドに横になった。 ストッキングを脱いで、自分から、ショーツに手をかける。
「……見て♡ こんなに、なっちゃった♡」
淡いブルーのショーツが、はっきりと、湿っていた。 ゆっくりとショーツを脱がすと——
つぅーーっ♡
蜜が、糸を引いた。
「……恥ずかしい♡ こんなに濡れてるの、見ないで……♡」
「見るに決まってるだろ。すげー、綺麗だよ」
「もう……っ♡」
七瀬の秘所は、とろとろに、濡れていた。 指を一本、そっと、滑り込ませる。
ずちゅっ♡
「ひぁっ♡♡」
「すごい……もう、こんなに……」
「だって……っ、3年も、結城くんに触られてなかったんだもん……♡」
指を、ゆっくり出し入れすると、くちゅくちゅと、音がする。
くちゅっ♡ くちゅくちゅっ♡
「あっ♡ あっ♡ きもちいぃ……♡」
二本目の指を入れて、前壁の、少しざらついた場所を、こりこりと擦る。
ぐちゅっ♡ ぐちゅぐちゅっ♡
「ひあっ♡♡ そこっ♡ そこ、やばいっ♡♡」
「ここ、好きだったよな」
「……っ、ほんと、覚えてるの、ずるいっ♡♡」
親指で、敏感な芽を、同時に刺激する。
くりくりっ♡ ぐちゅぐちゅっ♡
「あっ♡ あっ♡ あっ♡ だめっ♡ それ、両方されると……っ♡♡ もう……っ♡」
「イきそう?」
「うんっ♡ もう、我慢できないっ♡ 結城くん、欲しい……っ♡ お願いっ♡」
俺は、財布から、ゴムを取り出して、身につけた。 七瀬の足の間に、体を入れる。先端を、とろとろの入り口に、当てた。
「いくぞ、七瀬」
「うん……っ♡ 優しく、してね……♡」
ずぷっ……♡
「んあぁっ♡♡♡」
先端が入った瞬間、七瀬が、甲高い声を上げた。 きつい。なのに、とろとろに濡れているから、吸い込まれるように、奥へ入っていく。
ずず……ずぷぷっ……♡
「あぁっ……♡ 結城くんの、入ってくるぅ……♡ 奥まで……っ♡」
「くっ……七瀬の中、めちゃくちゃ気持ちいい……」
「ほんと……?♡ 私も……っ♡ いっぱいに、なってる……♡」
奥まで、入りきった。 七瀬の中が、ぎゅうぎゅうと、俺を締め付けてくる。 3年前の感触と、同じで、でも、もっと、深かった。
「動くぞ」
「うん……っ♡」
ずちゅっ♡ ぱんっ♡
「ひぁっ♡」
ずちゅっ♡ ずちゅっ♡ ぱんっ♡ ぱんっ♡
「あっ♡ あっ♡ あっ♡ 結城くんっ♡」
正常位で、ゆっくりと、腰を動かす。 引くときに、きゅっと締まって、入れるときに、とろっと受け入れてくれる。 その繰り返しが、信じられないくらい、気持ちよかった。
ぱんっ♡ ぱんっ♡ ぱんっ♡
「あぁっ♡ やっ♡ そこっ♡ そこ、気持ちいいっ♡♡」
「ここか?」
ぐちゅっ♡♡
「ひあぁぁっ♡♡♡ そこぉっ♡♡」
奥の方を突くと、七瀬が、大きく体を跳ねさせた。
「そこ当たると……っ♡ おかしくなっちゃうのぉ……♡♡」
「じゃあ、そこ、たくさん突いてやる」
ぱんっ♡ ぱんっ♡ ずちゅっ♡ ぱんっ♡
「あっ♡あっ♡あっ♡あっ♡ だめっ♡ そこばっかりっ♡♡ 壊れちゃうっ♡♡」
七瀬の胸が、突くたびに、ぶるんぶるんと揺れる。 緩く巻いた髪が、シーツの上で乱れて、汗で頬に張り付いている。 さっきまでの、凛としたカウンセラーとは、別人みたいな表情。 そのギャップが、エロすぎて、腰の動きが、どんどん速くなる。
ぱんぱんぱんぱんっ♡♡♡
「あああっ♡♡ 結城くんっ♡ きもちいいっ♡♡ すごいのっ♡♡」
「俺も……七瀬の中、よすぎて……っ」
「ねぇっ♡ 結城くんっ♡ ……抱きしめて♡ ぎゅってして♡」
俺は、体を倒して、七瀬を、強く抱きしめた。 胸と胸が、密着する。腰を動かしながら、七瀬の耳元で、囁いた。
「七瀬……好きだ。やっぱり、お前のことが好きだ」
「……っ♡♡ 私もっ♡ ずっと、好きだったっ♡ 結城くんのこと、一回も、忘れたことなかったっ♡♡」
抱き合ったまま、腰を打ちつける。
ぱんぱんぱんっ♡♡
「あっ♡ あっ♡ イクっ♡ 結城くんっ♡ 一緒に、イこっ♡♡」
「ああ……俺も、もう……っ」
「きてっ♡ いっぱい、きてっ♡ 3年分、全部っ♡♡」
ぱんぱんぱんぱんっ♡♡♡ びくびくっ——♡♡♡
「あぁぁぁっ♡♡♡ イクっ♡ イクイクっ♡♡ きてるっ♡♡♡」
「くっ……七瀬っ……!」
奥深くで、薄い膜越しに、全部、出した。 七瀬の中が、びくびくと収縮して、搾り取るように、締め付けてくる。
「はぁっ……♡ はぁっ……♡ すごかった……♡ 結城くんと、また、こうなれるなんて……♡」
「七瀬……大丈夫か」
「うん……♡ むしろ、幸せ……♡」
七瀬が、とろんとした目で、笑った。 3年前と、同じ、ふわっとした笑顔で。でも、その目には、うっすらと、涙が滲んでいた。
*
しばらく、二人で、荒い息を整えていた。 窓の外では、まだ、雨が降り続いていた。さっきより、少し、優しい雨脚で。
七瀬が、俺の胸に、そっと頬を寄せてきた。
「……ねえ、結城くん。これ、完全に、規約違反だよね」
「規約違反?」
「カウンセラーが、担当の会員さんと、その……こういうこと、するの。バレたら、私、クビかも」
「……マジか」
「ふふ。でも、後悔してない♡」
そう言って、七瀬は、いたずらっぽく笑った。 でも、その後、急に、しゅんとした顔になる。
「……でも、ね。結城くんは、結婚相手を探しに、相談所に来たんだよね。私と、こうなっちゃって……いいの?」
「……七瀬」
「私のこと、引きずってるだけかも、しれないよ。3年ぶりに会って、勢いで……」
「違う」
俺は、体を起こして、七瀬の顔を、まっすぐ見た。
「勢いなんかじゃない。俺、この一週間、ずっと、お前のことばっか考えてた。新しい出会いなんて、もう、これっぽっちも、興味なかった」
「……っ」
「俺が探してた『一緒にいて落ち着く人』。それ、最初から、お前だったんだよ」
七瀬の目から、ぽろっと、涙がこぼれた。
「……ずるいよ。そんなこと言うの……」
「七瀬。退会の手続き、頼んでいいか」
「え……?」
「俺、相談所、辞める。だって、もう、結婚したい相手、見つかったから」
七瀬が、ぱちぱちと、瞬きをした。 そして、くしゃっと、顔を歪めて、笑った。
「……それ、担当カウンセラーとして、一番、複雑な退会理由なんですけど……♡」
「悪いな。お前のせいだ」
「もう……っ♡」
七瀬が、俺の胸に、ぎゅっと、抱きついてきた。
*
しばらく抱き合ったあと、七瀬が、ふと、体を起こした。 とろんとした目で、俺を見て、ねだるように、言った。
「……ねえ、結城くん。まだ、元気だよね……?♡」
視線の先を見ると——確かに、まだ、全然、萎えていなかった。
「3年分、まだ、足りないよ……♡ もっと、して……?♡」
「……お前、意外と、貪欲だな」
「結城くん限定だってば♡ ……今度は、後ろから、してほしいな♡」
七瀬が、ベッドの上で、四つん這いになった。 ぷりんと突き出されたお尻が、白くて、丸くて——エロすぎた。
「……恥ずかしい♡ こんな格好……♡」
「めちゃくちゃ綺麗だよ、七瀬」
「もう……っ♡ 早く、来てよぉ……♡」
新しいゴムをつけ直して、とろとろの中に、後ろから、挿入する。
ずぷっ♡♡
「あぁんっ♡♡ バック、深いぃ……♡♡」
この体勢だと、さっきよりも、深く入る。 七瀬の中が、きゅうっと締まって、最奥に、密着してくる。
ぱんっ♡ ぱんっ♡
「あっ♡ あっ♡ んんっ♡ やぁ……っ♡ 奥、当たってるぅ……♡♡」
腰を掴んで、リズミカルに突く。 七瀬のお尻が、ぶつかるたびに、ぱちんっと、弾力のある音を立てる。
ぱんぱんぱんっ♡♡
「あぁっ♡ これ、好きっ♡ 結城くんのが、奥に当たるのっ♡♡ きもちいいのぉ♡♡」
前から手を回して、揺れる胸を、鷲掴みにする。
むにゅんっ♡♡
「ひゃぁっ♡♡♡ おっぱいも、だめぇっ♡♡ 一緒にされると、きもちよすぎっ♡♡」
胸を揉みながら、腰を叩きつける。
ぱんぱんぱんぱんっ♡♡♡
「あああっ♡♡ もうっ♡ またイっちゃうっ♡♡ 結城くんと、一緒がいいっ♡♡」
「俺もっ……もう……っ!」
ぱんぱんぱんっ♡♡ びくびくっ——♡♡♡
「あぁぁぁっ♡♡♡♡ イクっ♡♡ また、イっちゃうっ♡♡♡♡」
「くぅっ……! はぁ……はぁ……」
二度目を、出しきった。 七瀬の中が、ぎゅうっぎゅうっと、痙攣するように締め付けてきて、最後の一滴まで、絞り出される。 七瀬が、そのまま、前に、ぺたんと崩れ落ちた。
「はぁっ……♡ はぁっ……♡ すごい……♡ 腰、抜けちゃった……♡」
俺は、七瀬の隣に、横になった。 七瀬が、すぐに、俺の胸に、顔を埋めてくる。
「……結城くんの匂い、懐かしい♡」
「お前も。全然、変わってない」
しばらく、二人で、ぼーっと、抱き合っていた。 窓の外の雨音が、子守唄みたいに、響いていた。
*
翌朝。
カーテンの隙間から、朝の光が差し込んでいた。 昨日の雨が嘘みたいに、空は晴れている。梅雨の晴れ間だった。 俺が目を覚ますと、七瀬が、俺の腕の中で、すやすやと眠っていた。
しばらく、その寝顔を眺めていると、七瀬が、ゆっくりと目を開けた。
「……ん……おはよ、結城くん」
「おはよう」
「……夢じゃ、ないよね。これ」
「夢じゃない。現実だよ」
七瀬が、くすっと笑って、俺の胸に、頬をすり寄せた。 俺は、七瀬の頭を撫でながら、ずっと考えていたことを、口にした。
「……なあ、七瀬。今度は、仕事を言い訳にしない」
七瀬が、顔を上げた。
「3年前、俺は、仕事を言い訳にして、お前から逃げた。でも、もう、逃げない。もう一回、ちゃんと、付き合ってくれ。……いや、付き合うっていうより」
俺は、一度、息を吸った。
「結婚を前提に、もう一度、俺と、やり直してほしい」
七瀬の目が、見る間に、潤んでいく。 そして、ぽろっと、涙がこぼれた。
「……っ、ずるいよ。朝から、プロポーズみたいなこと言うの……」
「返事は?」
「……うんっ♡ やり直す♡ 私も、もう二度と、結城くんのこと、離さないっ♡」
涙ぐみながら、七瀬が、力いっぱい、俺に抱きついてきた。 俺も、その背中を、しっかりと抱きしめた。3年かかって、やっと、戻ってこれた。
「……まさか、婚活で行った相談所の担当が、お前だったとはな」
「ふふ♡ こっちのセリフだよ。名簿で結城くんの名前見つけたとき、心臓、止まるかと思った」
「……でも、結果的に、私、ちゃんとお仕事したことになるのかな? 会員さんを、無事、ご成婚に導いたわけだし♡」
「自分で自分を成婚させてどうするんだよ」
「あはは♡ 確かに♡」
七瀬が、口元に手を当てて、嬉しそうに笑った。
*
それから、ひと月後。
七瀬は、結婚相談所を、円満に退職した。 さすがに、担当会員と付き合うわけにはいかない、という、ごく真っ当な理由で。
「所長にね、正直に話したの。担当の方と、再会したら、昔の恋人で、復縁しちゃいましたって」
「所長、なんて?」
「最初は呆れてたけど……最後は、笑って『縁を結ぶのが仕事だけど、まさか自分で結ぶとはね』って」
「……いい所長だな」
「うん。お祝いに、退職金、ちょっと色つけてくれた♡」
その日、俺は、七瀬を連れて、地元の友達——田所たちの集まりに顔を出した。 俺に相談所を勧めた、張本人だ。
「みんな、紹介する。俺の、彼女。……というか、もうすぐ、婚約者」
「は? お前、相談所で見つけたのか!? 早すぎだろ!」
「ああ、相談所で見つけた。……担当のカウンセラーをな」
「……は?」
一瞬の沈黙のあと、田所が、素っ頓狂な声を上げた。
「担当って……お前、それ、どういうことだよ!」
「3年前に別れた元カノが、たまたま、担当カウンセラーだったんだ。それで、再会して、復縁した」
「ドラマかよ……!」
田所が、頭を抱えた。七瀬は、頬を赤くしながら、ぺこりと頭を下げた。
「藤代七瀬です。涼介さんのこと、これからも、よろしくお願いします♡」
俺は、七瀬の手を、テーブルの下で、そっと握った。 七瀬も、握り返してくる。その手は、もう、震えていなかった。
3年前、俺は、仕事を言い訳に、自分から、この手を離した。 でも、巡り巡って、婚活なんてものを始めたおかげで、また、この手を、握ることができた。
人生、どこで何が繋がるか、本当に分からない。 結婚相手を探しに行った場所で、まさか、3年前に手放した相手と、再会するなんて。
帰り道。梅雨明けの、晴れた夜空の下を、二人で並んで歩いた。 七瀬が、俺の腕に、ぎゅっと、腕を絡めてくる。
「ねえ、涼介さん。今度は、絶対に、仕事を言い訳にしないでよ?」
「ああ。誓うよ」
「ふふ♡ ……あのね。私、これでも、人の縁を結ぶプロだったんだから。自分の縁くらい、ちゃんと、最後まで結んでみせるんだから♡」
「……ああ。頼りにしてる、カウンセラーさん」
七瀬が、もう一度、口元に手を当てて、笑った。 その笑顔は、もう、プロの営業スマイルじゃなくて、俺だけに見せる、柔らかい笑顔だった。
― 終 ―