保護した子猫を抱えて駆け込んだ夜間動物病院の獣医が、七年前に別れた元カノだった話

俺、結城颯太、29歳。都内の住宅設備メーカーで、法人営業をやっている。

6月の、梅雨らしい夜だった。 一日中ぐずついていた空が、夕方になって本降りになり、傘を差していても膝から下はぐっしょり濡れていた。残業を終えて、駅から自宅マンションまでの夜道を、俺は早足で歩いていた。

(あー、最悪だ。靴の中まで水が入ってきてる)

早く帰って、シャワーを浴びて、缶ビールでも開けたい。 そんなことを考えながら、コンビニの脇の路地を曲がったときだった。

みゃあ……みゃあ……

雨音に混じって、か細い声が聞こえた。 最初は気のせいかと思った。でも、立ち止まって耳を澄ますと、確かに聞こえる。

ガードレールの脇に、雨に打たれた段ボールが、ぐしゃっと潰れて置かれていた。 傘を傾けて中を覗き込むと——濡れて震える、小さな茶トラの子猫が一匹。痩せていて、目やにで片目がほとんど開いていない。

「……マジかよ」

俺は猫を飼ったことなんてないし、特別な動物好きでもない。 でも、その子猫が、最後の力を振り絞るみたいに俺を見上げて鳴いた瞬間、放っておくなんて選択肢は、頭から消えていた。

俺は上着を脱いで子猫をくるみ、スマホで「夜間 動物病院 救急」と検索した。 一番近いのは、二駅先の動物救急センター。タクシーを拾って、俺は震える子猫を胸に抱えたまま、その夜間病院に駆け込んだ。

夜間動物病院は、雨の中でも煌々と灯りがついていた。 自動ドアをくぐると、消毒液の匂いと、ひんやりした空気。受付には、若い男性スタッフが一人だけ立っていた。

「いらっしゃいませ。どうされましたか?」

「すみません、道で子猫を拾って……弱ってて、目も開いてなくて」

「分かりました、すぐに先生を呼びます。こちらの診察室へどうぞ」

促されて、診察室に入る。 ステンレスの診察台に子猫をそっと乗せると、上着の中で、ほとんど動かないくらい弱っていた。心臓が、嫌な感じに速く打っていた。

(頼む。間に合ってくれ)

しばらくして、診察室のドアが開いた。

「お待たせしました。当直の獣医です。子猫ちゃんを保護されたとのことで——」

白衣を着た、栗色の髪を後ろで一つに束ねた女性。 聴診器を首にかけ、慣れた手つきで子猫に近づいていく。落ち着いた、よく通る声。

その声を聞いた瞬間。 俺の中で、何かが、ぐらりと揺れた。

顔を上げて、彼女を見る。 切れ長の、優しい目。すっと通った鼻筋。少し下がり気味の眉。間違えるはずがなかった。

「……美緒?」

その名前を口にした瞬間、彼女の手が、ぴたりと止まった。 ゆっくりと、彼女が俺の顔を見る。目が、見開かれていく。

「……颯太、くん?」

七瀬美緒。 大学時代に二年付き合って、七年前に別れた、俺の元カノだった。

数秒、二人とも固まっていた。 診察室の時計の秒針の音だけが、やけに大きく聞こえる。先に我に返ったのは、美緒の方だった。

「……っ、ごめん。今は、この子が先」

彼女は小さく頭を振って、すぐに獣医の顔に戻った。 聴診器を子猫の胸に当て、瞼を指でそっと開いて、体温を測る。その横顔は、俺の知らない、プロの顔だった。

「脱水と、低体温を起こしてる。あと猫風邪。生後一か月くらいかな……かなり弱ってるけど、まだ大丈夫。今夜は預かって、点滴と保温をします」

「……助かるのか?」

「うん。任せて。……この子は、私が必ず助けるから」

「私が必ず助ける」。 その言い切り方に、迷いはなかった。 俺の知っている、ふわっと笑う美緒とは、別人みたいに頼もしかった。

入院の手続きを終えて、受付で支払いを済ませる。 男性スタッフ——名札には「動物看護師 木村」とあった——が、明日の連絡について説明してくれた。

「経過は、明日の昼以降にお電話します。面会も可能ですので、また来ていただいて構いませんよ」

「はい。……ありがとうございます」

診察室を出るとき、美緒がもう一度、俺の方を見た。 白衣の彼女と、ずぶ濡れの俺。七年ぶりの再会が、まさかこんな形だなんて。

「……颯太くん。また、明日」

「ああ。……子猫、よろしく頼む」

外に出ると、雨は少し弱まっていた。 俺は傘も差さずに、しばらく病院の灯りを見上げて立っていた。胸の奥が、子猫の心配とは別の理由で、ざわついていた。

帰りのタクシーの中で、俺はずっと、七年前のことを考えていた。

七瀬美緒。俺と同い年の29歳。 大学のサークルの新歓で知り合って、二年付き合った。 動物が好きで、いつも野良猫に話しかけていて、将来は獣医になりたいと言っていた。

別れたのは、進路のすれ違いだった。 俺は東京で就職が決まり、美緒は獣医になるために、大学院から地方の大学に編入する道を選んだ。 獣医学部は六年。さらに彼女は研究にも興味があって、進路はどんどん長く、遠くなっていった。

「待っててほしい」とは、お互い、言えなかった。 俺はまだ若くて、彼女の何年もかかる夢を背負う覚悟がなくて。彼女も、俺を縛りたくないと言って。 どっちも傷つかないフリをして、「お互いのために」なんて言葉で、別れた。

別れ際、美緒が改札の向こうで小さく手を振った、あの顔を、俺はずっと覚えていた。

そして今、彼女は本当に獣医になっていた。 夢を、ちゃんと、叶えていた。

翌日。 俺は仕事中も、子猫のことが頭から離れなかった。昼休みに病院から電話があった。出てくれたのは、美緒だった。

「七瀬です。子猫ちゃん、点滴が効いて、今朝はミルクも少し飲んでくれました。山は越えたと思う」

「……ほんとか。よかった……!」

「うん。生命力の強い子だね。目やにも、だいぶ取れて、両目開いてるよ」

「会いに行ってもいいか?」

「もちろん。……今日、私、夜まで勤務だから。いつでも来て」

その日の仕事を、俺は猛烈な勢いで片付けた。 定時で会社を飛び出して、まっすぐ病院に向かった。

面会室に通されると、小さなケージの中で、昨日とは見違えるくらい元気になった子猫が、みゃあみゃあ鳴いていた。

「お前……元気になったんだな」

そっと指を差し出すと、子猫が小さな舌で、ぺろっと舐めてきた。 胸の奥が、じんと熱くなる。 そこへ、白衣の美緒が入ってきた。

「すっかり、颯太くんになついてるね」

「そうか? ……なあ、美緒。この子、どうなるんだ。里親、探すのか?」

「うん。保護猫として、里親を募集することもできるけど……」

美緒が、少し言いにくそうに、続けた。

「もし、颯太くんが飼ってくれるなら、それが一番この子は幸せだと思う。あなたのこと、もう、命の恩人だって分かってる顔してるもん」

子猫が、ケージ越しに、俺をじっと見上げていた。 雨の夜、俺を見上げて鳴いた、あの目と同じだった。

「……分かった。俺が飼う」

「……っ、ほんとに?」

「ああ。拾ったのは俺だしな。最後まで、責任持つよ」

美緒が、ぱっと顔を輝かせた。 その笑顔は、白衣のプロの顔じゃなくて、俺の知っている、昔の美緒の笑顔だった。

「ありがとう。……颯太くん、変わってないね。そういう、放っておけないところ」

「うるさいよ」

それから数日、子猫の入院は続いた。 俺は仕事帰りに、毎日のように面会に通った。 半分は子猫の様子を見るため。でも、もう半分は——白衣の美緒に、会いたかったからだ。

子猫を挟んで、俺たちは少しずつ、言葉を交わすようになった。 近況。今の仕事。共通の友達の話。 七年の空白が、子猫のケージの前で、ぽつぽつと埋まっていった。

「私ね、地方の大学出て、最初は牧場の大動物の獣医やってたの。牛とか馬とか」

「牛? お前が?」

「失礼な。これでも力持ちなんだから。……でも去年、東京に戻ってきて、今はこの夜間病院。小さい命を救う方が、私には合ってたみたい」

そう言って、美緒は子猫の頭を、指先で優しく撫でた。 その横顔を見ていると、七年前、別れを切り出したときの自分を、殴りたくなった。

退院の日が来た。 子猫を引き取りに行くと、美緒が、子猫用のフードやトイレ砂の入った紙袋を、たくさん用意してくれていた。

「初めて猫飼うんでしょ? これ、最初に必要なもの一式。あと、育て方のメモも書いといた」

「……ここまでしてくれるのか」

「当然でしょ。私が助けた命なんだから。……それに」

美緒が、少しだけ言葉を切って、目を伏せた。

「颯太くんが、ちゃんと幸せに育ててくれるか、心配だし」

その言い方が、なんだか引っかかった。 子猫の心配なのか、それとも——俺は、思い切って言った。

「なあ、美緒。今度、飯でも行かないか。子猫のこと、いろいろ教えてほしいし。……ちゃんと、お礼もしたい」

美緒が、はっと顔を上げた。 頬が、ほんのり赤くなる。

「……いいの? 私と」

「お前がよければ」

「……うん。行く。子猫の名前、決めたら教えてね。それまでに、私も考えとくから」

子猫には、雨の夜に出会ったから「ソラ」と名付けた。 梅雨空の、その向こうの空に、あやかって。

週末の夜。 俺たちは、駅前の小さなイタリアンで、向かい合っていた。

白衣じゃない美緒は、ふんわりした白いブラウスに、淡いブルーのスカート。 栗色の髪を下ろしていて、診察室のときよりも、ずっと柔らかい雰囲気だった。

「……私服、新鮮だな。いつも白衣だから」

「ふふ。颯太くんも、スーツじゃない方が、昔っぽい」

ワインで乾杯して、料理をつまみながら、話は尽きなかった。 七年分の空白を、一つずつ、丁寧に埋めていく。

途中、ワインが少し回ったのか、美緒が、グラスを両手で包んで、ぽつりと言った。

「……ねえ。ずっと、聞きたかったことがあるの」

「なんだよ」

「あのとき。私たちが別れたとき。……颯太くんは、本当に、別れたかった?」

不意打ちだった。 俺は、フォークを置いた。

「……なんで、今さら」

「ずっと、気になってたから。七年間、ずっと」

美緒は、グラスに視線を落としたまま、続けた。

「私、本当は、別れたくなかった。獣医になるのに何年かかっても、待っててほしかった。でも、颯太くんに、自分の夢を背負わせるのが、怖くて。……だから、私から、『お互いのために』なんて言っちゃった」

「ずっと後悔してた。あのとき、もっとちゃんと、『待ってて』って言えばよかったって」

窓の外では、また雨が降り始めていた。 俺は、しばらく言葉が出なかった。そして、ようやく口を開いた。

「……俺も、別れたくなかった」

「……え」

「あのとき強がってたの、お前だけじゃない。俺も、本当はずっと、お前のそばにいたかった。でも、お前の夢が、俺なんかより、ずっと大きくて、眩しくて。俺がそばにいたら、その邪魔になる気がして……だから、わざと、突き放した」

美緒が、顔を上げた。 その目が、潤んでいた。

「ずっと後悔してたよ。あんな別れ方、しなきゃよかったって」

「……バカ」

「ああ。バカだったよ、俺」

美緒が、ふっと笑った。でも、目には涙が溜まっていた。

「七年も……お互い、同じこと思ってたんだ。私たち」

「……みたいだな」

二人の間に、七年分の沈黙が、降りた。 でもそれは、気まずい沈黙じゃなかった。ずっと言えなかったことを、やっと言えた、温かい沈黙だった。

店を出ると、雨が本降りになっていた。 俺の折りたたみ傘は小さくて、二人で入ると、肩が触れ合うくらいの距離になった。

「……近いね」

「……ああ。悪い」

「ううん。……このままで、いい」

美緒が、ぎゅっと、俺の腕に、腕を絡めてきた。 柔らかい体温が、雨の冷たさの中で、やけに熱く感じた。

「……なあ、美緒。ソラの様子、見に来ないか。お前が育て方のプロなんだし……まだ、不安なこと、いっぱいあるんだ」

「……それ、口実?」

「……半分は、本気だよ。半分は……」

「……ふふ。分かった。行く」

俺のマンションに着くと、玄関でソラが、みゃあみゃあと鳴いて出迎えた。 美緒が、しゃがんでソラを抱き上げる。

「ただいま、ソラ。……元気にしてた?」

ソラを抱いた美緒の横顔を、雨に濡れた前髪が縁取っていた。 俺は、もう、止められなかった。

タオルを渡そうと近づいて——でも、手が、止まった。 美緒も、ソラをそっと床に下ろして、立ち上がる。 二人の距離が、自然と、近くなる。

「……美緒」

「……うん」

「キス、していいか」

「……聞かなくても、いいよ」

俺は、美緒の濡れた頬に、そっと手を添えた。 ゆっくりと、顔を近づける。

ちゅ……

七年ぶりの、唇。 柔らかくて、ワインの香りと、雨の匂いがした。

「ん……っ」

美緒の体が、ぴくっと震えた。 一度離れて、もう一度。今度は、少し深く。

ちゅ……ちゅぷ……

「ん……ぅ……♡ 颯太くんの、キス……懐かしい……♡」

「お前も。全然、変わってない」

唇を重ねながら、俺の手が、美緒の背中に回る。 美緒も、俺のシャツを、ぎゅっと掴んできた。 舌を差し入れると、美緒も、おずおずと、舌を絡めてくる。

ちゅる……れろ……ちゅぷ……

「は……っ、ん……♡」

キスをしながら、リビングのソファへ移動する。 美緒を、そっとソファに座らせた。

「……颯太くん。雨で、濡れちゃった。シャワー……借りていい?」

「……一緒に、入るか」

「……っ、もう。そういうとこ、昔より、ずるくなった」

二人で、浴室に向かった。 濡れた服を、お互いに脱がせ合う。ブラウスのボタンを外すたびに、白い肌が現れる。 淡いベージュのブラに包まれた、豊かな胸。

「……綺麗だ」

「やだ……恥ずかしい……♡ あんまり、見ないで」

温かいシャワーを浴びながら、もう一度、唇を重ねる。 背中のホックに手を回すと、

パチン。

ブラが緩んで、ぷるんっと、柔らかな胸がこぼれた。

「だから、見ないでってば……♡」

俺は、片方の胸に、そっと手を添えた。

むにゅっ……

「あっ……♡」

「……柔らかい」

手のひらに収まりきらない、柔らかな重み。 指が沈み込んで、離すと、ぷるんと戻ってくる。 昔も触れていたはずなのに、七年ぶりの感触は、新鮮で、たまらなかった。

ゆっくりと、揉みしだく。

むにゅ……ふにゅ……

「ん……っ、あ……♡ そこ……♡」

「感じてる?」

「……っ、言わせないで……♡」

乳首を、指の腹で、そっと転がす。

くりっ……

「ひぁっ♡ そこ……っ♡」

美緒が、大きく仰け反った。 昔から、ここが弱かったのを、思い出す。

「ここ、相変わらず敏感だな」

「……っ、覚えてるの、ずるいよ……♡」

シャワーのお湯が、二人の体を伝って流れていく。 俺は、片方の胸に、顔を埋めた。

ちゅぷっ♡

「ひゃぅっ♡♡ す、吸っちゃ……っ♡」

乳首を口に含んで、舌先で、ねっとりと舐め回す。

れろっ♡ ちゅるっ♡ ちゅうぅっ♡

「あっ♡ あっ♡ やぁっ♡ 颯太くんっ……♡ きもちいぃ……♡」

片方を口で、もう片方を指で。 交互に責めていると、美緒の声が、どんどん甘く、とろけていった。 診察室の、凛とした獣医の声なんて、跡形もなかった。

「颯太くん……っ、私だけ、恥ずかしい……♡」

美緒の手が、俺の体に伸びてくる。 シャワーで濡れた肌を、すべるように撫でながら、下へ。

さわっ……にぎっ……

「……っ、もう、こんなに……♡ 熱い……♡」

「お前が、エロすぎるからだろ」

「もう……♡ でも、嬉しい♡」

このままじゃ、立っていられない。 お湯を止めて、体を拭いて、俺たちは、寝室のベッドに、なだれ込んだ。

「……颯太くん。私、してあげたい♡」

「……いいのか」

「うん。七年分、ちゃんと、可愛がってあげたいの♡」

美緒が、ベッドの上で、俺の前に、ちょこんと膝をついた。 両手で、俺のモノを包み込む。

にぎっ……しゅっ……しゅっ……

「ん……♡ 颯太くんの……硬い……♡」

「美緒の手、気持ちいい……」

「ふふ♡ じゃあ、お口でも……♡」

美緒が、先端に、ちゅっとキスをした。

ちゅっ♡ ちゅぷっ♡

小さなキスを繰り返してから、ゆっくりと、咥え込む。

ずぶ……ちゅぷ……♡

「っ……美緒……っ」

温かくて、濡れていて、舌が、ねっとりと絡みついてくる。 美緒が、ゆっくりと、頭を上下させ始めた。

じゅぶっ♡ ちゅぷっ♡ じゅるるっ♡

「んぷっ……ちゅるっ……れろれろ……♡」

「くっ……上手くなったな、お前……」

「んっ♡ ……颯太くんのだから、上手にしたいの♡」

美緒が、上目遣いで、俺を見上げる。 唇でしっかり圧をかけながら、舌先で、裏筋をなぞってくる。

じゅぷっ♡ ちゅぱっ♡ じゅるるるっ♡

「んんっ♡ ……颯太くんの味、懐かしい……♡」

「やべっ……このままだと、出ちゃう」

「んっ……ぷはっ♡ ……だめ。まだ、出さないで♡ 私の中で、出してほしいの……♡」

そう言って、美緒は、口を離した。 唾液の糸が、つぅっと、光る。

「……エロいな、お前」

「……っ、颯太くん限定だよ♡」

美緒が、ベッドに横になった。 自分から、ショーツに手をかける。

「……見て♡ こんなに、なっちゃった♡」

淡いベージュのショーツが、はっきりと、湿っていた。 ゆっくりと脱がすと——

つぅーーっ♡

蜜が、糸を引いた。

「……恥ずかしい♡ こんなに濡れてるの、見ないで……♡」

「見るに決まってるだろ。すげー、綺麗だよ」

「もう……っ♡」

美緒の秘所は、とろとろに、濡れていた。 指を一本、そっと、滑り込ませる。

ずちゅっ♡

「ひぁっ♡♡」

「すごい……もう、こんなに……」

「だって……っ、七年も、颯太くんに触られてなかったんだもん……♡」

指を、ゆっくり出し入れすると、くちゅくちゅと、音がする。

くちゅっ♡ くちゅくちゅっ♡

「あっ♡ あっ♡ きもちいぃ……♡」

二本目の指を入れて、前壁の、少しざらついた場所を、こりこりと擦る。

ぐちゅっ♡ ぐちゅぐちゅっ♡

「ひあっ♡♡ そこっ♡ そこ、やばいっ♡♡」

「ここ、好きだったよな」

「……っ、覚えてるの、ほんとずるいっ♡♡」

親指で、クリを、同時に刺激する。

くりくりっ♡ ぐちゅぐちゅっ♡

「あっ♡ あっ♡ あっ♡ だめっ♡ それ、両方されると……っ♡♡ もう……っ♡」

「イきそう?」

「うんっ♡ もう、我慢できないっ♡ 颯太くん、きて……っ♡ お願いっ♡」

俺は、避妊具を取り出そうとした。 すると、美緒が、俺の手を、そっと止めた。

「……あの♡ 私、ちゃんとピル飲んでるから……♡ もし、颯太くんがよかったら……そのまま、して?♡」

「……いいのか」

「うん♡ ……七年ぶりだもん。颯太くんのこと、全部、直接、感じたいの♡」

その言葉に、俺の中で、何かが弾けた。 美緒の足の間に、体を入れる。先端を、とろとろの入り口に、当てた。

「いくぞ、美緒」

「うん……っ♡ 優しく、してね……♡」

ずぷっ……♡

「んあぁっ♡♡♡」

先端が入った瞬間、美緒が、甲高い声を上げた。 きつい。なのに、とろとろに濡れているから、吸い込まれるように、奥へ入っていく。

ずず……ずぷぷっ……♡

「あぁっ……♡ おっきいの、入ってくるぅ……♡ 奥まで……っ♡」

「くっ……美緒の中、めちゃくちゃ気持ちいい……」

「ほんと……?♡ 私も……っ♡ 颯太くんので、いっぱいになってる……♡」

奥まで、入りきった。 美緒の中が、ぎゅうぎゅうと、俺を締め付けてくる。 昔の感触と、同じで、でも、もっと、深かった。

「動くぞ」

「うん……っ♡」

ずちゅっ♡ ぱんっ♡

「ひぁっ♡」

ずちゅっ♡ ずちゅっ♡ ぱんっ♡ ぱんっ♡

「あっ♡ あっ♡ あっ♡ 颯太くんっ♡」

正常位で、ゆっくりと、腰を動かす。 引くときに、きゅっと締まって、入れるときに、とろっと受け入れてくれる。 その繰り返しが、信じられないくらい、気持ちよかった。

ぱんっ♡ ぱんっ♡ ぱんっ♡

「あぁっ♡ やっ♡ そこっ♡ そこ、気持ちいいっ♡♡」

「ここか?」

ぐちゅっ♡♡

「ひあぁぁっ♡♡♡ そこぉっ♡♡」

奥の方を突くと、美緒が、大きく体を跳ねさせた。

「そこ当たると……っ♡ おかしくなっちゃうのぉ……♡♡」

「じゃあ、そこ、たくさん突いてやる」

ぱんっ♡ ぱんっ♡ ずちゅっ♡ ぱんっ♡

「あっ♡あっ♡あっ♡あっ♡ だめっ♡ そこばっかりっ♡♡ 壊れちゃうっ♡♡」

美緒の胸が、突くたびに、ぶるんぶるんと揺れる。 栗色の髪が、シーツの上で乱れて、汗で頬に張り付いている。 診察室の、凛とした獣医とは、別人みたいな表情。 そのギャップが、エロすぎて、腰の動きが、どんどん速くなる。

ぱんぱんぱんぱんっ♡♡♡

「あああっ♡♡ 颯太くんっ♡ きもちいいっ♡♡ すごいのっ♡♡」

「俺も……美緒の中、よすぎて……っ」

「ねぇっ♡ 颯太くんっ♡ ……抱きしめて♡ ぎゅってして♡」

俺は、体を倒して、美緒を、強く抱きしめた。 胸と胸が、密着する。腰を動かしながら、美緒の耳元で、囁いた。

「美緒……好きだ。やっぱり、お前のことが好きだ」

「……っ♡♡ 私もっ♡ ずっと、好きだったっ♡ 颯太くんのこと、一回も、忘れたことなかったっ♡♡」

抱き合ったまま、腰を打ちつける。

ぱんぱんぱんっ♡♡

「あっ♡ あっ♡ イクっ♡ 颯太くんっ♡ 一緒に、イこっ♡♡」

「ああ……俺も、もう……っ」

「中にっ♡ 中に、いっぱい出してっ♡ 七年分、全部っ♡♡」

ぱんぱんぱんぱんっ♡♡♡ ずぷぷぷっ——♡♡♡

「あぁぁぁっ♡♡♡ イクっ♡ イクイクっ♡♡ きてるっ♡ 中に、あったかいの、いっぱいっ♡♡♡」

「くっ……美緒っ……!」

奥深くで、全部、出した。 美緒の中が、びくびくと収縮して、搾り取るように、締め付けてくる。

「はぁっ……♡ はぁっ……♡ すごかった……♡ 颯太くんので、いっぱいにされちゃった……♡」

「美緒……大丈夫か」

「うん……♡ むしろ、幸せ……♡」

美緒が、とろんとした目で、笑った。 俺は、その隣に、横になる。 美緒が、すぐに、俺の胸に、顔を埋めてきた。

「……颯太くんの匂い、懐かしい♡」

「お前も。全然、変わってない」

しばらく、二人で、荒い息を整えていた。 窓の外では、雨音が、ずっと続いていた。 ふと、ドアの隙間から、ソラが、ちょこんと顔を出して、こっちを見ていた。

「……あ。ソラ、見てたかな」

「……気まずいな」

「ふふ♡ いいの。家族だもん」

「家族」。 その言葉が、なんだか、すとんと胸に落ちた。 俺は、美緒を、もう一度、抱き寄せた。すると、美緒が、いたずらっぽく、俺を見上げた。

「……ねえ、颯太くん。まだ、元気だよね……?♡」

視線の先を見ると——確かに、まだ、全然、萎えていなかった。

「七年分、まだ、足りないよ……♡ もっと、して?♡」

「……お前、意外と貪欲だな」

「颯太くん限定だってば♡ ……今度は、後ろから、してほしいな♡」

美緒が、ベッドの上で、四つん這いになった。 ぷりんと突き出されたお尻が、白くて、丸くて——エロすぎた。 さっき出したばかりの白いものが、繋がっていた場所から、とろりと溢れている。

「……恥ずかしい♡ こんな格好……♡」

「めちゃくちゃ綺麗だよ、美緒」

「もう……っ♡ 早く、来てよぉ……♡」

とろとろの中に、後ろから、挿入する。

ずぷっ♡♡

「あぁんっ♡♡ バック、深いぃ……♡♡」

この体勢だと、さっきよりも、深く入る。 美緒の中が、きゅうっと締まって、最奥に、密着してくる。

ぱんっ♡ ぱんっ♡

「あっ♡ あっ♡ んんっ♡ やぁ……っ♡ 奥、当たってるぅ……♡♡」

腰を掴んで、リズミカルに突く。 美緒のお尻が、ぶつかるたびに、ぱちんっと、弾力のある音を立てる。

ぱんぱんぱんっ♡♡

「あぁっ♡ これ、好きっ♡ 颯太くんのが、奥に当たるのっ♡♡ きもちいいのぉ♡♡」

前から手を回して、揺れる胸を、鷲掴みにする。

むにゅんっ♡♡

「ひゃぁっ♡♡♡ おっぱいも、だめぇっ♡♡ 一緒にされると、きもちよすぎっ♡♡」

胸を揉みながら、腰を叩きつける。

ぱんぱんぱんぱんっ♡♡♡

「あああっ♡♡ もうっ♡ またイっちゃうっ♡♡ 颯太くんと、一緒がいいっ♡♡」

「俺もっ……もう……っ!」

ぱんぱんぱんっ♡♡ ずぷぷぷっ——♡♡♡

「あぁぁぁっ♡♡♡♡ きてるっ♡♡ また、中にっ♡♡ いっぱい、出てるぅ♡♡♡♡」

「くぅっ……! はぁ……はぁ……」

二回目の中出し。 美緒の中が、ぎゅうっぎゅうっと、痙攣するように締め付けてきて、最後の一滴まで、絞り出される。 美緒が、そのまま、前に、ぺたんと崩れ落ちた。

「はぁっ……♡ はぁっ……♡ すごい……♡ お腹の中、あったかい……♡」

俺は、美緒の隣に、横になった。 美緒が、俺の腕の中に、すっぽりと収まってくる。

しばらく、二人で、ぼーっと、抱き合っていた。 いつの間にか、ソラも、ベッドの足元で、丸くなって眠っていた。

翌朝。

カーテンの隙間から、朝の光が差し込んでいた。 昨夜の雨は、すっかり上がっていた。 俺が目を覚ますと、美緒が、俺の腕の中で、すやすやと眠っていた。栗色の髪が、頬にかかっている。 七年前と、同じ寝顔だった。

しばらく、その寝顔を眺めていると、美緒が、ゆっくりと目を開けた。

「……ん……おはよ、颯太くん」

「おはよう」

「……夢じゃ、ないよね。これ」

「夢じゃない。現実だよ」

美緒が、くすっと笑って、俺の胸に、頬をすり寄せた。 俺は、美緒の頭を撫でながら、ずっと考えていたことを、口にした。

「……なあ、美緒。今度は、お前の夢を、言い訳にしない」

美緒が、顔を上げた。

「七年前、俺は、お前の夢を背負う覚悟がなくて、逃げた。でも、お前はちゃんと、夢を叶えた。立派な獣医になった。……だったら今度は、その隣で、ちゃんと支える側になりたい」

「もう一回、付き合おう。今度は、絶対に、手放さない」

美緒の目が、見る間に、潤んでいく。 そして、ぽろっと、涙がこぼれた。

「……っ、ずるいよ。朝から、そんなこと言うの……」

「返事は?」

「……うんっ♡ 付き合う♡ 私も、もう二度と、離さないっ♡」

涙ぐみながら、美緒が、力いっぱい、俺に抱きついてきた。 俺も、その背中を、しっかりと抱きしめた。七年かかって、やっと、戻ってこれた。

足元で、ソラが、みゃあ、と鳴いた。 まるで、二人を祝福するみたいに。

「……まさか、雨の夜に拾った子猫が、お前に会わせてくれるなんてな」

「ふふ♡ こっちのセリフだよ。診察室で颯太くんの顔を見たとき、心臓、止まるかと思った」

「……でも、ね♡ ちゃんと、獣医の仕事は、やり遂げたでしょ? プロでしょ、私♡」

「ああ。格好よかったよ、先生」

美緒が、嬉しそうに、笑った。

それから、ひと月後。

梅雨も明けて、ソラは、もうすっかり、やんちゃ盛りに育っていた。 美緒は、休みのたびに、俺の部屋に来るようになった。 名目は——「ソラの定期健診」。

「だって、私、ソラの主治医だもん♡ 健診は、欠かせないでしょ?♡」

「お前、それ、毎週やってたら、健診じゃなくて、ただの同棲だろ」

「いいの。半分は、本当に健診してるんだから♡」

そう言って笑う美緒は、もう、白衣の凛とした顔じゃなくて、俺だけに見せる、柔らかい笑顔だった。

ソラを膝に抱いた美緒が、ふと、真面目な顔で、俺を見た。

「ねえ、颯太くん。……いっそ、本当に、一緒に住まない? ソラの健康のためにも、その方がいいと思うんだけど」

「……それ、ソラを口実にしてるだろ」

「えへへ♡ バレた?♡」

七年前、俺たちは、夢と距離を言い訳にして、すれ違った。 でも、七年後、雨の夜に拾った小さな命が、また、俺たちを巡り合わせてくれた。

今度こそ、何も、言い訳にしない。 この手を——そして、この小さな家族を、もう二度と、離さない。

窓の外には、梅雨明けの、青い空が広がっていた。 膝の上のソラが、気持ちよさそうに、喉を鳴らしていた。

― 終 ―


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