梅雨の日曜、雨宿りに入った県立美術館で同じ海の絵の前に立っていたのが5年前に夢を追って別れた元カノだった話

1. 雨に追い込まれて

俺、藤代涼介(ふじしろりょうすけ)、28歳。都内のメーカーで製品デザインの仕事をしている。

6月の日曜日。梅雨らしい、朝からずっと降ったりやんだりの鬱陶しい天気だった。 特に予定もなかったから、久しぶりに郊外の古本屋でも冷やかそうと電車に乗ったのが間違いだった。最寄り駅を出た瞬間、空がざあっと泣き出して、折りたたみ傘なんかじゃ太刀打ちできない本降りになった。

(うわ、最悪だ……)

駅前のアーケードを抜けて、雨脚が弱まるのを軒下で待ってみたけど、空はますます暗くなるばかり。ふと顔を上げると、街路樹の向こうに、灰色のコンクリートの建物が見えた。 『県立近代美術館 ── 企画展 開催中』。 そういえば、こんなところに美術館があったのか。入場料は数百円。雨宿りには上等すぎる避難先だ。俺は濡れた肩を払いながら、自動ドアをくぐった。

エントランスは、雨の日特有のしんとした静けさに満ちていた。客はまばらで、足音が吸い込まれるように消えていく。 受付でチケットを買い、薄暗い常設展のほうへ足を向ける。絵のことなんてよく分からない。ただ、雨が上がるまでの時間を、ここで潰せればよかった。

そのはずだったんだ。

2. 同じ絵の前で

常設展の一番奥。人気のない小さな部屋に、その絵はあった。

一枚の、海の絵だった。 曇り空の下、灰色がかった海が静かに広がっている。波は荒くないのに、どこか寂しくて、見ていると胸の奥がきゅっとなるような絵。 俺は、その絵の前で足を止めた。理由は、自分でもよく分かっていた。

学生の頃、俺は美術部だった。そこで2年付き合った彼女がいた。彼女は、こういう静かな海の絵が、世界で一番好きだった。

(……似てるな、あいつの好きそうな絵に)

そんなことをぼんやり考えていたら、隣に、ひとりの女性が並んで立った。 香水じゃない、石鹸みたいな清潔な匂いがふわりとした。なんとなく横顔に目をやって──俺は、息を止めた。

少し伸びた黒髪を耳にかけて、まっすぐ絵を見つめている。白いシャツに、紺のロングスカート。大人びて、でも、その横顔の輪郭に、はっきりと見覚えがあった。

(……嘘だろ)

向こうも、視線に気づいたのか、ゆっくりとこちらを向いた。 目が合った瞬間、彼女の瞳が、大きく揺れた。

「……涼介?」

時間が、止まった。 その、少しかすれて、それでいて澄んだ声。5年経っても、忘れられるわけがなかった。

「……美咲」

宮原美咲(みやはらみさき)。俺と同い年の28歳。 大学の美術部で出会って、2年付き合った元カノだ。絵が好きで、いつも油絵の具の匂いをさせていて、誰よりも静かな海の絵を愛していた女の子。

そして──卒業のとき、絵の勉強をするためにパリへ渡って、それきり別れた相手だった。

3. 五年ぶりの「久しぶり」

「うそ……本物の涼介だ。なんで、ここに」

「いや、それはこっちのセリフだろ。雨宿り。傘、役に立たなくて」

「ふふ、それで美術館に逃げ込むの、相変わらず行き当たりばったり」

美咲が、口元をほころばせた。その笑い方が、5年前とまったく同じで、俺は不覚にも心臓を掴まれた。

「美咲こそ、なんで。フランスにいるんじゃ……」

「3年前に帰ってきたよ。今は、こっちの美術館で学芸員やってる。今日はお休みで、他所の企画展、勉強しに来てたの」

学芸員。あいつは、夢を、ちゃんと掴んでいた。 パリへ行く、絵の世界で生きていく、と言って俺の前から消えた美咲は、その言葉どおりの場所に立っていた。誇らしさと、置いていかれたような寂しさが、同時に胸に来た。

「涼介は? ちゃんとデザイナーになったの?」

「……一応な。メーカーで、製品のデザイン。絵じゃなくて、家電とか、そういうのだけど」

「すごいじゃない。ちゃんと、好きだったこと、仕事にしてる」

二人して、また、目の前の海の絵に視線を戻した。 沈黙が落ちる。でも、気まずいだけの沈黙じゃなかった。5年分の言いたいことが、お互いの中で渋滞して、言葉にならないだけだった。

「……ねぇ、この絵」

「ん」

「私たちが部室でよく見てた画集の、あの海に、似てない?」

俺は、ぐっと喉が詰まった。同じことを、さっき考えていた。

「……俺も、それ思ってた」

美咲が、ふっとこちらを見上げて、泣きそうな顔で笑った。

4. ミュージアムカフェの窓辺

外は、まだ本降りだった。 どちらからともなく、館内のカフェに入った。ガラス張りの窓の外で、中庭の木々が雨に濡れて光っている。客は俺たちだけだった。

「ホットの、カフェラテ。涼介は、ブラックでしょ」

「……なんで覚えてんだよ」

「2年も付き合えば、嫌でも覚えるよ」

向かい合って座る。湯気の立つカップを両手で包んで、美咲がぽつりぽつりと、5年分の話をした。 パリの美術学校での苦労。言葉も通じず、最初の一年は泣いてばかりだったこと。それでも食らいついて、向こうで小さな賞をもらったこと。3年前に帰国して、今の美術館に潜り込んだこと。

「夢、叶えたなんて、かっこいいもんじゃないよ。ただ、必死だっただけ」

「……立派だよ。俺なんかより、ずっと」

「そんなことない。涼介の作った炊飯器、私、使ってるかもよ」

「炊飯器は担当してねえよ」

「ふふ、なにそれ」

笑いながら、ふと美咲の左手に目がいった。指輪は、ない。 気づかれたのか、美咲が少しだけ目を伏せた。

「……いないよ。向こうで一回、付き合った人いたけど、続かなかった。帰ってきてからは、ずっとひとり」

「……そっか」

「涼介は?」

「俺も、いない。仕事ばっかりだった。……ていうか、なんか、ずるずる、誰とも本気になれなくて」

言ってから、しまった、と思った。 本気になれなかった理由なんて、目の前のこいつに決まっているのに。 美咲は、何も言わずに、ラテをひとくち飲んだ。

5. 雨は、上がらない

カフェを出ても、雨はやまなかった。 それどころか、空はますます暗く、窓を叩く雨脚は強くなる一方だった。閉館までの時間を、俺たちは、なんとなく一緒に企画展を回ることにした。

「ここはね、構図がすごいの。ほら、視線が、自然と真ん中の人物に集まるでしょ」

「……ほんとだ。言われると分かる」

「ふふ、職業病。つい解説しちゃう」

絵の前を、ふたりでゆっくり歩く。 美咲が絵を語るときの、あの真剣な横顔。少し前のめりになって、まつ毛が震えるその表情は、5年前、部室で画集をめくっていたときと、何ひとつ変わっていなかった。

距離が、少しずつ縮まっていた。 人気のない展示室で、肩が触れそうになって、お互い、わざとらしく半歩だけ離れる。その繰り返しが、くすぐったかった。

ふいに、館内に静かなアナウンスが流れた。

「まもなく、閉館のお時間でございます。お客様は、出口へお進みください」

美咲が、はっと顔を上げた。

「……もう、こんな時間」

「ああ」

二人で、なんとなく顔を見合わせる。 この扉を出たら、また5年前みたいに、別々の方向へ歩いていくのか。そう思った瞬間、胸の奥が、ぎゅっと締めつけられた。

6. 傘がひとつ

エントランスを出ると、外は、土砂降りだった。

「うわ……すごい雨」

「これ、駅まで歩いたらずぶ濡れだな」

美咲が、自分の小さな折りたたみ傘を広げて、それから、俺の手元を見た。俺の傘は、骨が一本折れて、半分使い物にならない代物だった。

「……涼介の傘、それ、壊れてるじゃない」

「まあ、なんとかなる」

「ならないよ。……入って。私の」

差し出された傘は、ひとり用の小さなものだった。 そこに二人で入ると、肩が、ぴったりとくっつく。雨の匂いの中で、美咲の髪から、あの石鹸の香りがした。

「……狭いな」

「我慢して。すぐそこだから」

「すぐそこって?」

「……私の家。この美術館の、二駅向こう。歩いてもいける距離なの」

肩を寄せ合って、雨のアーケードを歩く。 傘から、お互いの外側の肩が、半分ずつ濡れていく。それでも、どちらも、傘を相手のほうへ寄せ合っていた。 無言だった。でも、その沈黙が、不思議と苦しくなかった。

美咲の住むマンションの前まで来て、俺たちは立ち止まった。

「……ねぇ、涼介」

「ん」

「この雨、当分やまないと思う。……お茶、飲んでく? タオルも、貸すから」

その声が、少しだけ震えていた。 俺は、ひとつ深呼吸して、うなずいた。

7. 止まっていた時間

美咲の部屋は、彼女らしい部屋だった。

本棚には画集がぎっしり詰まって、壁には、自分で描いたらしい小さな海の絵が掛かっていた。窓の外では、相変わらず雨が街を煙らせている。 タオルを受け取って、濡れた髪を拭く。淹れてくれた紅茶を、ローテーブルを挟んで飲んだ。

「……あの絵、覚えてる? 部室で、二人で見た海の」

「ああ。さっきの絵に、似てたやつだろ」

「うん。……あのね、私、パリにいる間、ずっと、あの海の絵を描こうとしてたの。何枚も、何枚も。でも、どうしても、上手く描けなかった」

美咲が、壁の小さな海の絵を見上げた。

「あの海を見てたときの気持ちが、思い出せなくなってたから。……隣に、涼介がいないと、あの色が、出せなかった」

俺は、紅茶のカップを置いた。

「……美咲」

「あのとき、私、夢を選んだの。でも、ほんとは──涼介に、『行くな』って、言ってほしかった」

その言葉は、5年間、俺の胸にも刺さったままの棘だった。

「……俺は、お前の夢を、邪魔したくなかった。俺が引き止めたら、お前は一生、後悔すると思った。だから……『頑張れ』って、送り出した」

「ばか。……強がりなんだよ、涼介は、いつも」

美咲の目から、ぽろっと、涙がこぼれた。

「あのときは、それが、お前のためだと思ったんだ。……でも、本当は」

俺は、テーブルを回り込んで、美咲のすぐ隣に座った。

「本当は、ずっと、後悔してた。あのとき、無理にでも、引き止めればよかったって」

美咲が、涙でぐしゃぐしゃの顔で、俺を見上げた。

「……今さら、ずるいよ」

「ずるいって、よく言われる」

「……っ」

俺は、そっと、美咲の濡れた頬に手を添えた。 美咲は、逃げなかった。むしろ、自分から、ほんの少しだけ、顔を寄せてきた。

「美咲。……キス、していいか」

「……聞かないでよ、そういうの」

それが、答えだった。 俺は、ゆっくりと顔を近づけて──5年ぶりに、美咲の唇に触れた。

8. 五年分の距離

ちゅ……。 柔らかい唇は、紅茶の匂いと、涙の味がした。

「ん……っ」

美咲の体が、びくっと震えて、それから、自分から、深く唇を重ねてきた。 ちゅ……ちゅぷ……。 唇の隙間から舌を差し入れると、美咲も、おずおずと絡めてくる。最初は遠慮がちに、それから、5年分の飢えを埋めるみたいに、夢中になっていく。

ちゅる……れろ……ちゅぷっ……。

「ん……っ♡ 涼介……っ♡」

キスをほどくと、唾液の糸が、つうっと光って引いた。 美咲の頬は上気して、瞳は、とろんと潤んでいる。

「……美咲、きれいになったな」

「やだ……そういうの、ずるい……♡」

俺は、美咲の体を、そっとベッドのほうへ導いた。 窓の外の雨音が、二人を包む。シャツのボタンに手をかけると、美咲が、恥ずかしそうに目を伏せた。

「……あんまり、見ないで。5年も経って、変わってるかもだし……」

「見るに決まってんだろ。5年ぶりなんだから」

ボタンをひとつずつ外していくと、白い肌が現れた。 下着に包まれた、形のいい胸。シャツを脱がせて、ブラのホックを外すと、たわわな乳房が、ふるんと揺れて零れ出る。

「……きれいだ」

「もう……見すぎ……♡」

俺は、その胸に、そっと手を伸ばした。 むにゅっ……。

「あっ……♡」

手のひらに、柔らかい重みが沈み込む。指の間から溢れるくらいの量が、ふにふにと形を変えた。

「柔らかい……」

「んっ……♡ あんまり、揉まないで……恥ずかしい……♡」

ゆっくりと、両手で包み込むように揉む。 むにゅ……ふにふに……。 指の腹で、つんと立ち始めた先端を掠めると、美咲が、ぴくっと跳ねた。

「ひゃっ♡ そこ……っ♡」

「ここ、感じる?」

「……っ、知らない……♡」

くりっ。

「ひあっ♡♡」

先端を指で転がすと、美咲が、大きく仰け反った。 口では強がるのに、体は、正直だった。片方の先端を口に含んで、舌先で、れろれろと舐め転がす。

ちゅっ♡ れろっ♡ ちゅうぅっ♡。

「あっあっ♡ やぁっ♡ 涼介っ♡ それ、だめぇ……っ♡」

胸を吸いながら、片手を、スカートの中へと滑らせる。 内ももは、しっとりと汗ばんで、俺の手を受け入れるように、わずかに開いた。

9. 雨音に溶けて

指を、その奥へと進める。 触れた瞬間、ぬるっとした感触が、指に絡んだ。

くちゅっ……。

「ひぁっ♡♡」

「もう、こんなに……」

「だって……キスから、ずっと……っ♡」

下着の中は、すでに、とろとろに濡れていた。 小さな突起を見つけて、指の腹で、くるくると円を描く。

くちゅくちゅ……くりくり……。

「あっ♡あっ♡♡ そこっ……♡ 弱いのっ……♡♡」

クリを刺激しながら、中指を、ゆっくりと中へ滑り込ませた。 ずぷっ……。

「あぁぁっ♡♡♡」

熱い内壁が、きゅうっと指を締めつけてくる。 5年経っても、覚えている。美咲の、形だ。前壁のざらついた場所を、指の腹で、こりこりと擦り上げる。

くちゅくちゅくちゅっ……。

「そこっ♡♡ やばっ……そこ、やばいぃっ♡♡♡」

二本目を追加して、中をかき回しながら、親指で、クリを同時に攻める。 ぐちゅっ♡ ぐちゅっ♡ くりくりっ♡。

「あっ♡あっ♡あっ♡♡ だめっ♡ いっぺんは……っ♡♡」

美咲の腰が、跳ねるように浮いて、内ももが、俺の手をぎゅうっと挟み込む。

「だめっ♡♡ それ続けたらっ……イっちゃうっ♡♡♡」

「イっていいよ」

「やっ♡♡ 恥ずかしいっ♡♡ 見ないでっ……っ♡♡」

親指でクリを潰しながら、中の弱い場所を、激しく擦り上げる。 ぐちゅぐちゅぐちゅっ♡♡。

「あっ♡あっ♡あっ♡♡──っっ♡♡♡」

びくびくびくっ♡♡♡。 美咲の体が、弓なりに反り返って、じゅわっと、温かいものが俺の指に溢れ出した。

「……イったな」

「……っ、言わないでよ、ばか……♡♡」

息を切らせて、美咲が、腕で顔を隠した。 その指の隙間から、潤んだ目が、こっちを見ている。しばらくして、美咲が、のろのろと体を起こした。

「……次は、私が」

「無理しなくていい」

「無理してない。……涼介のこと、私も、気持ちよくしたいの」

美咲が、俺のベルトに手をかけた。 ボクサーの上から、もう、はち切れそうに張り詰めているのが分かる。ゴムに指をかけて、ゆっくりと下ろすと、ぶるんっと、それが弾け出た。

「……すご。こんなだったっけ……♡」

細い指が、そっと根元を包む。 ひんやりした感触に、ぞくっと背筋が震えた。

しゅっ……しゅっ……。

「……舐めても、いい?♡」

「……無理すんなよ」

「無理じゃないってば。……したいの」

美咲が、ちゅっと、先端にキスをした。 ちゅっ♡ ちゅぷっ♡。 小さなキスを繰り返してから、舌を出して、裏筋を、つうっと舐め上げる。それから、ぱくっと、先端を咥え込んだ。

れろ……ちゅぷ……じゅぽっ……。

「っ……美咲……」

温かい口の中に包まれる。 美咲が、ゆっくりと頭を上下させながら、潤んだ瞳で、俺を見上げてくる。

じゅぷっ♡ ちゅぱっ♡ じゅるっ♡。

「ん……っ♡ ちゅぷ……♡ もっと、気持ちよくなって……♡」

頬を窄めて吸い上げながら、舌を、うねうねと絡めてくる。 じゅぼっ♡ じゅぼっ♡ じゅぷぷっ♡。

「くっ……美咲、それ以上は……一回、止めてくれ」

「ん……ぷはっ♡」

美咲が、ちゅぽんと口を離した。 唾液の糸が、つうっと光って引く。とろんとした目で、美咲が、こちらを見上げた。

「……ねぇ、涼介。……このまま、口でじゃなくて」

「……いいのか」

「私の中で、イってほしいの。……ピル、飲んでるから。そのまま、来て」

10. もう一度、繋がる

美咲が、自分からベッドに横たわって、両膝を立てて、わずかに開いた。 さっき、俺の指で達したばかりのそこは、まだ、とろりと光っている。

「……美咲」

「ねぇ……早く♡」

俺は、美咲の脚の間に体を入れて、先端を、入り口に当てた。 とろっとした熱が、ぴたりと吸い付いてくる。

「いくぞ」

「うん……♡ 優しく、して……5年ぶり、だから……♡」

ずぷっ……♡。

「んあぁっ♡♡♡」

先端が入った瞬間、美咲が、甲高い声を上げた。 きつい。なのに、とろとろに濡れているから、吸い込まれるように、奥へ進んでいく。

ずず……ずぷぷっ……♡。

「あぁっ……♡ おっきい……♡ 奥まで、来てる……♡」

「くっ……美咲の中、めちゃくちゃ熱い……」

根元まで入りきった。 美咲の中が、5年分の隙間を埋めるみたいに、ぎゅうぎゅうと、俺を締めつけてくる。

「……ねぇ、繋がってる……♡ 私たち、また、繋がってる……っ♡」

「ああ」

「夢、みたい……♡」

「動くぞ」

「うん……っ♡」

ずちゅっ♡ ぱんっ♡。

「ひぁっ♡」

ずちゅっ♡ ずちゅっ♡ ぱんっ♡ ぱんっ♡。

「あっ♡ あっ♡ あっ♡ 涼介っ♡」

ゆっくりと、腰を動かす。 引くときに、きゅっと締まって、入れるときに、とろっと受け入れてくれる。その繰り返しが、信じられないくらい、気持ちいい。

ぱんっ♡ ぱんっ♡ ぱんっ♡。

「あぁっ♡ やっ♡ そこっ♡ そこ、当たるのっ♡♡」

「ここか」

ぐちゅっ♡♡。

「ひあぁっ♡♡♡ そこぉっ♡♡」

奥の方を突くと、美咲が、大きく体を跳ねさせた。

「そこっ♡♡ 昔より……感じるっ♡♡♡」

「じゃあ、ここ集中で」

ぱんっ♡ ぱんっ♡ ずちゅっ♡ ぱんっ♡。

「あっ♡あっ♡あっ♡♡ だめっ♡ そこばっかりっ♡♡ おかしくなるっ♡♡」

美咲の胸が、突くたびに、ぶるんぶるんと揺れる。 その光景がエロすぎて、腰の動きが、どんどん速くなる。

ぱんぱんぱんっ♡♡♡。

「ああっ♡♡ 涼介っ♡ きもちいいっ♡♡ すごいのっ♡♡」

「俺も……美咲の中、よすぎる……っ」

美咲の両脚が、俺の腰に絡みついて、ぐっと引き寄せられ、結合が、さらに深くなる。

「もっと……っ♡ もっと、奥まで来てっ♡♡」

「これでどうだ」

ずぐっ♡♡。

「ひああっ♡♡♡ 奥っ♡♡ 一番奥っ♡♡♡」

俺は、美咲の体を抱き起こして、背中を抱き寄せた。 対面座位の形で、二人の体がぴったり密着して、美咲の胸が、俺の胸板に押し付けられて、ぷにゅっと潰れる。

「あっ♡♡ 密着してるっ♡ 涼介の、心臓の音、聞こえる……♡」

「美咲」

「ん……っ♡」

「好きだ。あのときも、今も、ずっと、好きだった」

美咲が、目を見開いて、それから、潤んだ瞳から、ぽろっと、涙がこぼれた。

「……っ♡♡ 私もっ♡♡ ずっと、ずっと、好きだったよっ♡♡♡」

ずちゅっ♡ ぱんっ♡ ぐちゅっ♡。

「あっ♡あっ♡あっ♡♡ イクっ♡ 涼介っ♡ 一緒に、イこっ♡♡」

「ああ……俺も……もう……っ!」

「中にっ♡♡ 全部、中に、出してっ♡♡♡ 5年分、ぜんぶっ♡♡♡」

ぱんぱんぱんぱんっ♡♡♡♡。 ずぷぷぷっ──♡♡♡♡♡。

「あぁぁぁぁっ♡♡♡♡ イクっ♡ イクイクイクっ♡♡♡♡ 中に、いっぱいっ♡♡♡♡♡」

「っ……!! 美咲っ……!!」

奥の奥に、全部、注ぎ込んだ。 美咲の全身が、びくびくっと痙攣して、ぎゅうっと、俺にしがみついてくる。

「はぁっ♡♡ はぁっ♡♡ ……すごかった……♡♡」

「はぁ……はぁ……ああ……最高だった……」

抱き合ったまま、しばらく、動けなかった。 窓の外の雨音が、二人の荒い息に、静かに溶けていく。

11. 雨上がりの約束

どれくらい、そうしていただろう。 ふと気づくと、あれだけ降っていた雨が、やんでいた。窓の外から、雲の切れ間の、淡い夕日が差し込んでいる。

美咲が、俺の腕の中で、くるりとこちらを向いた。 汗で額に張り付いた前髪。とろんとした目。上気した頬。

「……ねぇ、涼介」

「ん」

「これって……復縁、ってことで、いいんだよね」

「……聞くなよ、そういうの」

「だめ。今度は、ちゃんと、涼介の言葉で言って」

美咲が、まっすぐ、俺を見上げた。 冗談に紛れさせない、本気の目だ。 俺は、5年前に言えなかった言葉を、今度こそ、ちゃんと口にした。

「……付き合おう。今度こそ、ちゃんと。もう、二度と、送り出したりしない」

「……うん♡」

「もう、離さないよ」

美咲が、くしゃっと笑って、俺の胸に、顔を埋めた。

「……5年分、取り返してよね」

「ああ。一生かけて」

「うわ、重っ……ふふ」

「お前が言わせたんだろ」

二人で笑って、もう一度、唇を重ねた。

12. その後の話

それから、俺たちは、また付き合い始めた。

驚いたのは、美咲が、あの海の絵を、もう一度描き始めたことだ。 あの日、美術館で見た、灰色の海。隣に俺がいないと、あの色が出せなかったと言っていた絵を、今度は、俺の部屋の窓辺で、毎週末、すこしずつ描き進めている。

「ねぇ涼介、ここの空、もう少し、青を足したほうがいいと思う?」

「俺に聞くなよ。家電のデザイナーだぞ」

「いいから。隣にいてくれるだけで、色が決まるの」

絵筆を動かす美咲の横顔は、5年前の、あの部室のときと、何ひとつ変わっていなかった。 ただひとつ違うのは──もう、隣の席が、空いていないことだ。

梅雨が明けたら、二人で海を見に行こう、と約束した。 あの絵の、本物の海を。今度は、ちゃんと、隣同士で。

「ねぇ、涼介」

「ん」

「あのとき、雨が降ってなかったら、私たち、再会してなかったね」

「……だな。傘が壊れててよかった」

「ふふ、なにそれ」

窓の外には、梅雨の合間の、晴れた空が広がっていた。 止まっていた5年分の時間が、あの雨の日曜から、もう一度、静かに動き出していた。

― 終 ―


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