俺、別府優、26歳。リモートワークのエンジニアだ。
会社に行くのは月に二、三回。あとは下町の古いアパートの一室で、ずっとコードを書いている。
そんな引きこもり生活が、ある日いきなり崩れた。
風呂が、壊れた。
正確には、給湯器が完全に沈黙した。お湯をひねっても、しゅんともすんとも言わない。
「……マジか」
管理会社に電話したら、部品の取り寄せに二週間かかると言われた。
二週間、風呂なし。
(シャワーくらい、なんとかなるか……いや、無理だな)
六月とはいえ、汗はかく。一日中座って仕事をしていても、人間は意外と汚れる。
そこで思い出したのが、アパートから歩いて三分のところにある銭湯だった。
『富士の湯』。
引っ越してきて一年、毎日その前を通っていたのに、一度も入ったことがなかった。
煙突から白い湯気が立ち上っている、いかにも古い建物。
暖簾には色あせた富士山の絵。
(行ってみるか)
タオルと着替えを袋に詰めて、俺は生まれて初めて、その暖簾をくぐった。
がらり、と引き戸を開けると、木とお湯の匂いがした。
正面に番台がある。昔ながらの、高い位置から見下ろすやつだ。
そこに——女の子が座っていた。
「あいよ、いらっしゃい!」
ぱっと顔を上げて、にっと笑う。
俺は一瞬、固まった。
歳は俺と同じか少し下くらい——あとで聞いたら24歳だと言っていた。ショートボブの黒髪を、紺色の手ぬぐいでさっと結んでいる。
切れ長の目が、いたずらっぽくきらきらしている。
色白で、頬がほんのり桜色。
そして——胸元がぱつんと張った、白いTシャツにエプロンというラフな格好なのに、それがやけに似合っている。
「あ、えっと……銭湯、初めてで」
「お、見ない顔だと思った。兄さん、近所の人?」
「はい。すぐそこのアパートで」
「あー、坂の上のね! ようこそようこそ。料金は五百二十円ね」
下町の、軽快な言葉。
俺が財布をもたついて出していると、彼女はくすっと笑った。
「ふふ、緊張してる? 大丈夫、難しいことなんてないから」
「いや、その、下足札ってどうやって……」
「あー、そっか。今どきの人は銭湯わかんないか」
彼女が番台から身を乗り出して、入口の下足箱を指さした。
「そこの木の札、抜いて靴入れて、また札を差す。で、こっち来るとき札持ってきて。鍵代わりだから」
「なるほど」
「で、脱衣所のロッカーも同じ仕組み。木札にゴム付いてるから、手首に巻いとけば失くさないよ」
丁寧に、でもテンポよく教えてくれる。
「あたし、滝川さくら。ここの番台。困ったら呼んで」
にっと笑うその顔が、なんというか——人懐っこくて、目が離せなかった。
(……可愛いな、この子)
慌てて視線を逸らして、俺は脱衣所に向かった。
浴場に入って、もう一度驚いた。
正面の壁一面に、富士山のペンキ絵が描かれていた。
青い空、白い雪をいただいた富士。手前には松林と湖。
色は少し褪せているけど、堂々として、見ていると不思議と心が落ち着く。
「……すげぇ」
熱めの湯に肩まで浸かって、富士山を眺める。
体の芯から温まって、二週間ぶりに、ちゃんと風呂に入った気がした。
風呂上がり、番台の前で腰に手を当てて、瓶のコーヒー牛乳を一気に飲んだ。
「……うま」
「ふふ、それやりたかったでしょ。みんなやるんだ、初めての人」
「ばれました」
「兄さん、また来なよ。うちの湯、いいでしょ?」
「めちゃくちゃ良かったです。また来ます」
社交辞令、じゃなかった。
俺は本当に、その翌日も、富士の湯に来た。
そして、その翌日も。
二週間のつもりが——気づけば、給湯器が直っても、俺は通い続けていた。
理由は、一つじゃない。
熱い湯と富士山のペンキ絵。それは確かに最高だった。
でも、本命はたぶん——番台のさくらちゃんだった。
「あいよ、兄さん、今日も来たね!」
「来ました」
「もう常連だね。給湯器直ったんでしょ?」
「直りました。でも、うちの風呂じゃ富士山見えないんで」
「ふふっ、うまいこと言うじゃん」
通い始めて二週間もすると、さくらちゃんは俺の顔を見ただけで、棚の奥から瓶を出してくるようになった。
「はい、コーヒー牛乳。兄さんの分、取り置いといた」
「え、取り置き?」
「夕方になると売り切れちゃうからさ。兄さん絶対これ飲むでしょ」
「……ありがとうございます」
その『取り置き』が、俺にはやけに嬉しかった。
七月になると、もう完全に「いつもの兄さん」だった。
下町の銭湯は、コミュニティだ。
常連のおじいちゃんたちが将棋を指し、おばちゃんたちが番台で世間話をしていく。
その真ん中で、さくらちゃんが軽快にさばいていく。
「松本さん、孫の運動会どうだった?」
「いやあ、リレーでうちの孫がさあ」
「あはは、自慢の孫だもんねぇ」
そういう景色が、俺は好きだった。
さくらちゃんは、この『富士の湯』の三代目の孫娘だという。
「おじいちゃんが二代目でさ。今は腰悪くして奥で休んでるんだ。だからあたしが番台」
「ご両親は?」
「父さんは別の仕事してて、銭湯はやらないって。だから……あたしが継ぐしかなくてさ」
そう言ったとき、さくらちゃんの声が、いつもの軽快さから、少しだけ落ちた。
年相応の、不安げな声に。
「……継ぎたい、んですか?」
「……うん。このペンキ絵、好きなんだ。おじいちゃんの代からの職人さんが描いてくれてんの」
さくらちゃんが、壁の富士山をちらっと見た。
「子供のころから、ずっと見て育ったから」
その横顔が、なんだか妙に、胸に残った。
八月のある日。
富士の湯に行くと、入口に手書きの貼り紙があった。
『8月20日 ペンキ絵 描き替えにつき 一部足場を組みます』
「描き替え?」
「あ、兄さん。そうなんだ、年に一回、富士山描き直してもらうんだ」
「へえ、見てみたいな」
「……ねえ兄さん、暇?」
「暇です」
即答した。我ながら反応が早い。
「あのね、当日、人手が足りなくてさ。職人さんの手元手伝ったり、足場運んだり。バイト代は出せないけど、コーヒー牛乳飲み放題でどう?」
「やります」
「ほんと!? 助かる〜!」
そして迎えた、ペンキ絵描き替えの日。
朝早くから富士の湯に行くと、浴場の湯が抜かれて、足場が組まれていた。
白髪の職人さんが脚立に上って、刷毛で空の青を塗っていく。
俺は一日中、ペンキの缶を運んだり、刷毛を洗ったり、足場を押さえたりした。
「兄さん、こっちのバケツ持ってきてー!」
「了解!」
「あはは、兄さん意外と動けるじゃん」
「これでも体力はある方なんで」
さくらちゃんも、汗だくになりながら働いていた。
手ぬぐいを首に巻いて、Tシャツの袖をまくって、てきぱきと指示を出す。
汗で額に張り付いた前髪を、手の甲でぐいっと拭うしぐさが——妙に、色っぽかった。
(……いや、何見てんだ俺)
慌てて作業に戻る。
夕方、ようやく富士山が完成した。
塗りたての青い空と、真っ白な雪を抱いた富士。
前のより、ずっと色鮮やかで、堂々としている。
「うわぁ……今年も、きれいだ」
さくらちゃんが、浴場の真ん中に立って、富士山を見上げた。
夕日が窓から差し込んで、その横顔をオレンジ色に染めている。
「……ほんとだ。すごくいい」
「でしょ?」
くるっと振り向いて、にっと笑う。
その笑顔に、俺の心臓が、どくんと跳ねた。
職人さんが帰って、二人で後片付けをした。
足場をばらして、道具を片付けて。
気づけば、外はもう暗くなっていた。
「兄さん、一日中ありがと。ほんと助かった」
さくらちゃんが、番台の横のベンチに、どすっと座り込んだ。
俺もその隣に腰を下ろす。
「いえ。楽しかったです」
「……ねえ、兄さん」
「はい?」
さくらちゃんが、膝を抱えて、ぽつりと言った。
「あたしさ……この銭湯、続けられるか、わかんないんだ」
「……え?」
声のトーンが、いつもと違った。
軽快な下町言葉じゃなくて、不安に揺れる、年相応の声。
「ボイラーがさ、もうガタガタなんだ。だましだまし使ってるけど、いつ完全に壊れてもおかしくない。修理に何百万もかかるって言われてて」
「……」
「お客さんも、昔より全然減っちゃって。常連のおじいちゃんおばあちゃんばっかりで、若い人は来ない。みんな家に風呂あるから」
膝に顎を乗せて、富士山の絵を見つめる。
「おじいちゃんの代からの、この絵もさ。あたしの代で、終わっちゃうのかなって」
「……」
「ごめん、こんな話。せっかく手伝ってもらったのに、湿っぽくして」
無理に笑おうとして、でも、うまく笑えていなかった。
その顔を見ていたら——俺の中で、何かがかちっと音を立てた。
「……さくらちゃん」
「ん?」
「俺、エンジニアなんです」
「うん、知ってる。パソコンの人でしょ」
「ちょっと、考えてもいいですか。この銭湯のこと」
さくらちゃんが、きょとんと俺を見た。
「……考えるって?」
俺は、ベンチから立ち上がった。
頭の中で、もういくつかアイデアが回り始めていた。
「集客と、収支。たぶん、今のままでも打てる手はあります」
その夜、俺はアパートに帰って、ノートパソコンを開いた。
それから一週間、俺は本業の合間に、富士の湯のことを考え続けた。
まず、現金しか使えなかった番台に、キャッシュレス決済を導入した。
QRコード決済と、交通系ICカード。
タブレット一枚と、小さな読み取り端末。設定は俺が全部やった。
「えっ、これ、ピッてやるだけでいいの?」
「そう。お客さんは小銭出さなくていいし、レジ締めも楽になります」
「すごっ……魔法じゃん!」
次に、SNS。
富士の湯のアカウントを作って、写真を撮って投稿した。
塗りたての富士山のペンキ絵。
湯気の立ちのぼる浴場。
レトロな番台と、瓶のコーヒー牛乳。
『創業70年。下町に残る、富士山の見える銭湯』
そういうキャプションをつけて、丁寧に発信した。
最初は反応がなかった。
でも、ある写真が——番台のさくらちゃんが、にっと笑ってコーヒー牛乳を差し出している一枚が、ぱっとバズった。
『看板娘が可愛すぎる下町銭湯』
そんなふうに拡散されて、リポストが何千と伸びた。
「兄さん! 兄さん大変! なんか若い子いっぱい来てる!」
ある夕方、富士の湯に行くと、暖簾の前に行列ができていた。
大学生風の男女、カメラを持った人、レトロ銭湯巡りが趣味だという女の子たち。
「……ほんとに増えましたね」
「兄さんのおかげだよ! あたし、もう、なんてお礼言ったらいいか……」
さくらちゃんが、興奮しながら俺の手をぎゅっと握った。
その手が、温かくて、少し汗ばんでいて——俺はどきっとした。
「ありがとう、兄さん。ほんとに、ありがとう」
その目が、うるっと潤んでいた。
「……まだ、これからですよ。ボイラーの修理費も貯めなきゃ」
「うん。うん! あたし、頑張る!」
それからの富士の湯は、見違えた。
若い客が増えて、SNSのフォロワーも伸びて、コーヒー牛乳は連日売り切れ。
さくらちゃんの顔から、あの不安げな影が、少しずつ消えていった。
九月の終わり、さくらちゃんが言った。
「ねえ兄さん、あのさ。今度、他の銭湯見に行きたいんだ」
「他の銭湯?」
「うん。流行ってるとこ、参考にしたくて。一緒に行ってくんない? その……視察として」
「視察ですか」
「し、視察だよ! ほかに何があんの!」
なぜか、さくらちゃんの頬が赤くなっていた。
そんなわけで、俺たちは休みの日に、隣町の人気銭湯に行った。
リニューアルした、おしゃれなサウナ付きの銭湯。
二人で下足箱に靴を入れて、木の鍵を抜く。
俺の鍵と、さくらちゃんの鍵を、ふと並べて持ったら——番号が、隣同士だった。
「あ、隣ですね。47と48」
「……ほんとだ。ふふ、なんか、夫婦みたい」
ぽろっと言って、さくらちゃんが、はっとした顔で口を押さえた。
「ち、違うよ! 今のなし!」
「……」
「兄さん、にやにやしない!」
赤くなってぷいっと横を向くさくらちゃんが、たまらなく可愛かった。
別々に湯に入って、ロビーで合流して。
二人でソフトクリームを食べながら、銭湯の感想を言い合った。
「サウナはうちにはないけど……うちは富士山があるもんね」
「そう。あれは唯一無二ですよ」
「……だよね。あたし、やっぱりあの絵が好きなんだ」
ソフトクリームを舐めながら、さくらちゃんが、ふっと笑った。
その横顔が、もう、ただの『番台の子』じゃなかった。
帰り道、二人並んで夕暮れの川沿いを歩いた。
どっちからともなく、歩く距離が、少しずつ近くなっていた。
その週末。
富士の湯の番台で、俺がさくらちゃんと話していると、常連のおばちゃんたちがやってきた。
「あらぁ、さくらちゃん、最近この兄さんといつも一緒じゃないの」
「ち、違いますよ松本さん! 兄さんは銭湯手伝ってくれてるだけで——」
「いやいや、いい人見つけたねぇ。背も高くて、優しそうでさ」
「だ、だから違うって——」
「さくらちゃん、顔真っ赤じゃないの。ほっほっほ」
さくらちゃんが、番台の帳簿をぱっと持ち上げて、顔を隠した。
「……もう、おばちゃんたち、からかわないで」
帳簿の陰から、ちらっとこっちを見て、また隠れる。
俺も、なんだか顔が熱くなった。
(……俺、たぶん、この子のこと——)
もう、自分の気持ちは、はっきりしていた。
十月の、ある夜のことだった。
その日は平日で、お客さんも少なくて、早めに暖簾をしまった。
「兄さん、今日も来てくれてありがと。あのさ、悪いんだけど、閉店後の浴場掃除、手伝ってくんない? 今日、おじいちゃん腰やっちゃってて」
「もちろん」
最後のお客さんが帰って、二人きりになった。
湯を抜いて、デッキブラシで浴場のタイルを擦る。
まだ湯気がうっすら残る、静かな浴場。
天井から、ぽたん、と水滴が落ちる音だけが響く。
正面の富士山が、薄暗い照明の下で、青く沈んで見えた。
「……ここ、夜は静かですね」
「でしょ。あたし、この時間、けっこう好きなんだ」
二人でブラシを動かしながら、ぽつぽつと話した。
「兄さんが来てくれてから、ほんと、いろいろ変わったよ」
「俺、何もしてないですよ。さくらちゃんが頑張ったから」
「ううん。兄さんがいなかったら、あたし、たぶんもう諦めてた」
ブラシを動かす手が、止まった。
さくらちゃんが、富士山の絵を見上げて、ぽつりと言った。
「兄さん……あのさ」
「はい」
「ちょっと、こっち向いて」
俺は、ブラシを置いて、さくらちゃんの方を向いた。
湯気の残る浴場で、さくらちゃんが、まっすぐ俺を見ていた。
頬が、紅潮している。
切れ長の目が、いつもの軽快さじゃなくて、まっすぐで、震えていた。
「あたしね……ずっと、考えてたんだ。なんで兄さんが、ここまでしてくれるんだろうって」
「……」
「お金にもならないのに。本業だって忙しいのに。なのに、毎日来てくれて、銭湯のこと、あたしのこと、本気で考えてくれて」
さくらちゃんの声が、震えた。
「最初は、優しい人だなって思ってた。でも、だんだん、それだけじゃ説明つかなくなって」
「……」
「あたしも、兄さんが来ない日は、そわそわするようになって。今日は来るかなって、何度も入口見ちゃって。コーヒー牛乳、兄さんの分だけ取っとくの、当たり前になって」
ぎゅっと、エプロンの裾を握りしめる。
「だから、もう、ちゃんと言うね」
湯気の残る、静かな浴場に。
さくらちゃんの声が、はっきりと響いた。
「優くん。あたし、あんたが好きだ」
時間が、止まった気がした。
『兄さん』じゃなくて——『優くん』。
初めて、名前で呼ばれた。
「……さくらちゃん」
「ごめん、女のあたしから言っちゃって。下町の女はせっかちなんだよ。でも、もう、我慢できなくて——」
「俺も好きです」
さくらちゃんの言葉を、遮った。
自分でも驚くくらい、はっきりした声が出た。
「ずっと、好きでした。番台で笑ってるさくらちゃんに会いたくて、毎日通ってました。給湯器が直っても、来るのやめられなかったのは……さくらちゃんがいたからです」
「……っ」
さくらちゃんの目から、ぽろっと涙がこぼれた。
切れ長の目が、くしゃっと崩れて、それでも嬉しそうに笑っている。
「なんだ……両思いじゃん……」
「両思いです」
「もう……早く言ってよ、ばか……」
涙を手の甲で拭いながら、さくらちゃんが、一歩、俺に近づいた。
湯気の中で、その距離が、ゼロになる。
俺は、さくらちゃんの頬にそっと手を添えて、唇を重ねた。
ちゅっ。
「ん……っ」
濡れた浴場に、小さなキスの音が響いた。
さくらちゃんの唇は、お湯の湿気で少し冷たくて、でも、すぐに温かくなった。
一度離れて、見つめ合う。
さくらちゃんの頬は真っ赤で、目が潤んでいて、唇が微かに震えていた。
「……もう一回、いい?」
「……うん」
今度は、もっと深く。
ちゅっ……ちゅるっ……♡
さくらちゃんの唇が開いて、俺の舌先がそっと触れた。
応えるように、さくらちゃんの舌が、おずおずと絡みついてくる。
ちゅるっ、ちゅっ、ちゅるるっ♡
湯気の残る浴場に、湿ったキスの音が反響する。
「ん……っ♡ はぁ……♡ 優くん……♡」
「さくらちゃん」
「さくら、でいいよ……♡ ちゃん、いらない」
「……さくら」
「うん♡♡」
嬉しそうに微笑んで、さくらがまた唇を寄せてきた。
ちゅっ♡ ちゅるっ♡ んっ♡
キスをしながら、俺はさくらの腰に手を回した。
Tシャツ越しに触れる腰は、思ったより細くて、きゅっとくびれていた。
ぎゅっと引き寄せると——
むにゅっ。
さくらの胸が、俺の胸板に押し付けられた。
Tシャツ越しでも、その柔らかさがはっきり伝わってくる。
ぱつんと張っていたわけだ。想像以上の弾力に、形がふにゅっと変わる。
「ん……っ♡♡」
さくらが、小さく声を漏らした。
キスが、どんどん深くなる。舌と舌が絡み合って、甘い唾液が混ざる。
ちゅるっ♡ ちゅぷっ♡ んんっ♡♡
「はぁっ……♡ 優くん……ここ、寒くない?」
「正直、それどころじゃない」
「ふふ♡ じゃあ……母屋、来る? あたしの部屋」
潤んだ目で、上目遣いに見上げてくる。
その視線だけで、心臓が爆発しそうになった。
「……行く」
さくらが、にっと笑って、俺の手を取った。
濡れた浴場の灯りを消して、裏口から母屋に上がる。
廊下を、足音を忍ばせて進む。
「おじいちゃんの部屋、反対側だから……静かにね♡」
さくらの部屋は、こぢんまりとした和室だった。
畳の匂いと、ほのかに甘い、女の子の匂い。
「……散らかってて、ごめん」
「全然」
部屋に入って、ドアを閉めた瞬間、もう我慢できなかった。
さくらを抱き寄せて、また唇を重ねる。
ちゅっ♡ ちゅるっ♡ んっ♡♡
キスをしながら、ゆっくり畳の上に押し倒した。
さくらの手が、俺の背中に回る。
「ん……♡ 優くんの手、あったかい……♡」
「さくらの方が、熱いよ」
「もう……♡」
ふわっと笑うさくら。
その笑顔に見とれていると、さくらが俺の手を取って——自分の胸の上に、そっと導いた。
むにゅっ♡
「っ」
手のひらに広がる、信じられない柔らかさ。
Tシャツ越しでも、その弾力と質量がダイレクトに伝わってくる。
大きい。番台で見ていた以上に、大きい。指が沈み込んでいく。
「触って……いいよ♡」
さくらが、潤んだ目で見上げてくる。
「……いいの?」
「うん♡ あたし……ずっと、優くんに見られてたの、知ってたんだ♡」
「えっ」
「ふふっ♡ 番台で前かがみになるたびに、視線、感じてたもん♡」
「そ、それは——」
「いいの♡ むしろ……ちょっと、嬉しかった♡」
さくらが、俺の手をぎゅっと押し付ける。
むにゅうっ♡♡
「あっ♡ ん……♡」
俺は、さくらのTシャツの裾に手をかけた。
ゆっくり上にまくり上げると、白い肌が現れる。
きゅっと引き締まったお腹。その上に——スポーツブラに包まれた、たわわな膨らみ。
「脱がすよ」
「……うん♡」
Tシャツを頭から抜く。
スポーツブラの縁から、白い肉がむにゅっとはみ出していた。
「……すごいな」
「言わないでよ……恥ずかしい♡」
両手で胸を隠そうとするさくらの手を、そっとどけて、ブラに手をかける。
たくし上げると——
ふるんっ♡
解放された双丘が、ぷるんと揺れた。
「おぉ……」
思わず声が出た。
色白で、ハリのある肌。上を向いた、綺麗なお椀型。
頂点には、薄いピンク色の乳首が、ぷっくりと立ち上がっている。
「下町の銭湯娘のおっぱいなんて……ありがたみないでしょ♡」
「何言ってんの。最高だよ」
「……ばか♡」
俺は、両手でその胸を包み込んだ。
むにゅうっ♡♡
「あっ♡♡」
指が沈み込む。
とんでもない柔らかさ。もちもちした弾力が手のひらに吸い付いて、指の間から白い肉がむにゅっとこぼれる。
むにゅ♡ むにゅ♡ むにゅむにゅっ♡
「んっ♡ あっ♡ 優くん……気持ちいい……♡」
揉むたびに、さくらの口から甘い声が漏れる。
両手で、交互にリズムよく揉みしだく。
むにゅっ♡ むにゅっ♡ むにゅっ♡♡
「ひゃっ♡ やぁっ♡ そんなに揉んだら……♡」
「柔らかすぎるんだよ、さくらのおっぱい」
「もうっ……♡ えっちだ、優くん♡」
普段、番台で軽快に常連をさばいてる子が、こんな声を出している。
そのギャップが、たまらない。
「ここは?」
親指で、乳首をくりっと撫でた。
「ひゃんっ♡♡」
さくらの体が、びくんと跳ねた。
「そこっ……♡ 敏感なの……♡」
ツンと立った乳首を、指先でくりくりと転がす。
「やぁっ♡♡ んんっ♡♡ 優くんっ♡♡ そこぉっ♡♡」
可愛い。めちゃくちゃ可愛い。
我慢できなくなって、左の乳首に唇をかぶせた。
ちゅうっ♡
「ひあっ♡♡♡」
さくらの手が、俺の頭を抱え込んだ。
柔らかい胸に、頭が埋もれる。風呂上がりの、石鹸の甘い匂いが鼻をくすぐる。
ちゅるっ♡ れろっ♡ ちゅっ♡
舌先で乳首を弾きながら、もう片方の胸を手で揉み続ける。
「あっ♡♡ んんっ♡♡ 優くん、上手……♡♡」
交互に吸って、舐めて、揉んで。
「はぁっ♡ はぁっ♡ あたし……銭湯の母屋で、こんなことしちゃってる……♡♡」
さくらの体が、どんどん熱くなっていく。
ちゅう♡ ちゅるっ♡ むにゅっ♡♡
「んあっ♡♡ もう……♡ 優くんのせいで、とろとろになっちゃうよ……♡♡」
さくらの手が、俺のズボンに伸びてきた。
もっこりと膨らんだそこを、ズボンの上から、そっと撫でる。
「あ……優くん、ここ……おっきくなってる♡」
「当たり前だろ……こんな綺麗な子が目の前にいたら」
「嬉しい……♡」
さくらの指が、ベルトに触れた。
少し手間取りながらベルトを外して、ジッパーを下ろす。
ボクサーパンツの上から、形をなぞった。
「おっきい……♡♡ こんなの、入るのかな……♡」
パンツの中に手を入れて、直接握られた。
「っ——」
さくらの手は、思ったよりしっかりした力で、俺のモノを包み込んだ。
「あつい……♡ すごく硬い……♡」
にぎにぎっと握りながら、ゆっくり上下に動かしてくれる。
「さくら……っ」
「ねぇ、優くん♡」
さくらが、体を起こして、俺の足の間にしゃがみ込んだ。
潤んだ瞳が、下から見上げてくる。
「お口で……してあげる♡」
そう言って、さくらは俺のモノに唇を寄せた。
ちゅっ♡
先端に、柔らかいキスが落とされる。
「んっ♡ 優くんの匂い……♡」
ちろっと舌先が出て、先端を舐めた。
れろっ♡ ちろっ♡
「っ……」
「気持ちいい?♡」
「やばい……」
さくらが嬉しそうに目を細めて——ぱくっと口に含んだ。
「んっ♡♡」
温かくて、湿った口の中に包まれる。
じゅるっ♡ ちゅぷっ♡
さくらの舌が、俺のモノに絡みつきながら、上下に動く。
「じゅるるっ♡ んっ♡♡ んんっ♡♡」
切れ長の目が、少し蕩けて、俺を見上げている。
「さくら……上手すぎる……っ」
「んふふ♡ じゅるっ♡ ちゅるるっ♡♡」
嬉しそうに目を細めながら、さらに深くくわえ込んでくる。
じゅぽっ♡ じゅるっ♡ ちゅぷっ♡♡
「ぷはっ♡ 優くんの……美味しい♡」
一度口を離して、先端をれろれろと舐め回す。
そして——
「ねぇ、優くん♡ これも、してあげる♡」
さくらが、あの豊満な胸を両手で持ち上げた。
俺の硬くなったモノの左右に、ふわっと押し当てる。
むにゅんっ♡♡
「——っ!!」
全方位から、信じられない柔らかさに包まれた。
俺のモノが、さくらの谷間に、完全に沈み込んだ。
「わぁ♡ 全部、隠れちゃった♡ 優くんの、おっきいのに♡」
さくらが両手で胸を寄せながら、ゆっくり上下に動かし始めた。
むにゅっ♡ むにゅっ♡ むにゅっ♡
「あ……やば……」
柔らかい肉に包まれて、上下に動かされる感触が、やばい。
「気持ちいい?♡」
「すごい……気持ちいい」
「えへへ♡ よかった♡ あたしね、これ、してみたかったんだ♡」
「え、してみたかった?」
「うん♡ 優くんがいつも、ちらっと胸見てるの、気づいてたから……♡ このおっぱいで、優くんのこと気持ちよくしてあげたいなって……♡」
(この子、最高すぎる……)
にゅるっ♡ むにゅっ♡ ぬちゅっ♡
先走りで滑りが良くなった谷間を使って、さくらがリズミカルに動く。
「んっ♡ 優くんの、あつい……♡♡ おっぱいの中で、びくびくしてるのわかる……♡」
上目遣いで見つめながら、パイズリを続けるさくら。
谷間から先端が顔を出すたびに、ちゅっとキスをする。
ちゅっ♡ むにゅっ♡ ちゅるっ♡
そのまま、先端を口に含んだ。
ぱくっ♡
「っ!!!」
柔らかい胸と、温かくて濡れた口の中。
二重の快感が、同時に襲ってくる。
じゅるっ♡ むにゅっ♡ じゅぽっ♡♡
「んっ♡♡ じゅるるっ♡♡ んんっ♡♡♡」
「さくら……気持ちよすぎる……」
「んふふ♡♡ じゅるっ♡♡ ちゅるるっ♡♡」
嬉しそうに笑いながら、さらに激しく動く。
むにゅっ♡ じゅぽっ♡ ぬちゅっ♡♡
「さくら……そろそろ、やばい……っ」
ぷはっ、と口を離したさくらが、胸をぎゅっと寄せて、激しく上下に動かした。
むにゅっむにゅっむにゅっ♡♡♡
「出して♡♡ 優くんの、いっぱい出して♡♡」
「っ——出る、さくらっ!」
びゅるるっ♡♡
どぴゅっ♡ びゅるっ♡♡
白い液体が、さくらの胸と谷間に飛び散った。
「んっ♡♡♡ あったかい♡♡ いっぱい出たね♡♡」
さくらが、胸の間に溜まったそれを指ですくって、ぺろっと舐めた。
「んっ♡ 優くんの味……♡♡」
蕩けた瞳。
風呂上がりの、石鹸の匂いをまとった看板娘が、胸元を白く汚して微笑んでいる。
(こんな光景、現実でいいのか……?)
「ごめん、いっぱいかけちゃって」
「ううん……嬉しいの♡」
さくらが、にこっと笑って——
「でもね、優くん♡」
「うん?」
「あたし……まだ、終わりじゃないよ♡」
さくらが立ち上がって、ジーンズのボタンに手をかけた。
するすると脱ぐと、淡いピンクのショーツが現れる。
その真ん中が——じっとりと濡れて、布地が肌に張り付いていた。
「あたしね……さっきから、ずっと、こんなになっちゃってるの♡」
恥ずかしそうに俯きながら、さくらがショーツの濡れた部分を指でなぞった。
くちゅっ♡
「あっ♡ んっ♡」
「さくら……」
「優くんの……挿れて、ほしい♡」
潤んだ瞳が、まっすぐ俺を見つめる。
その視線だけで、さっき出したばかりなのに、もう硬くなっていた。
「——うん」
俺は、さくらを畳の上の布団に、そっと押し倒した。
ショーツに指をかけて、ゆっくり引き下ろす。
「ん……♡」
露わになった秘所は、もうとろとろに濡れていた。
薄い照明に照らされて、蜜が糸を引いているのがわかる。
「すごい濡れてる……」
「だって……♡ ずっと、優くんに触られて、おっぱい吸われて……♡ ずっと、感じてたんだもん♡♡」
俺は、さくらの太ももをそっと開いた。
その間に体を入れて、先端を入口にあてがう。
ぬるっとした感触。
「……挿れるよ」
「うん……♡ 来て♡」
ずぷっ♡
「あっ♡♡♡」
中に入った瞬間、さくらの体がびくんと震えた。
「あついっ……♡♡ 優くんの……あつい……♡♡」
ゆっくりと、奥まで入れていく。
ずぶ♡ ずぶ♡ ずぶっ♡♡
「んんっ♡♡♡ おっきい……♡♡ 奥まで……来てるっ♡♡」
さくらの中は、信じられないほど熱くて、きつくて、とろとろだった。
壁が俺のモノに絡みついて、吸い付くように締め付けてくる。
「さくら……めちゃくちゃ気持ちいい……」
「あたしもっ♡♡ 優くんので、いっぱいになってるっ♡♡」
正常位。
さくらの顔が、目の前にある。
上気した頬。潤んだ瞳。半開きの唇。乱れた前髪。
その全部が、色っぽくて、可愛くて、たまらない。
俺は、さくらの唇にキスをしながら、ゆっくり腰を動かし始めた。
ちゅっ♡ ぱんっ♡
「んむっ♡♡」
ぱんっ♡ ぱんっ♡
「んっ♡ あっ♡ あんっ♡♡」
奥まで突くたびに、さくらが甘い声をあげる。
ぱんぱんぱんっ♡♡
「あっ♡ あっ♡ あっ♡♡ 優くんっ♡♡ 気持ちいいっ♡♡」
さくらの胸が、突くたびに、たゆんたゆんと揺れる。
その揺れを見ながら腰を動かす。最高の光景だ。
「さくらの中……やばい……最高……」
「んっ♡♡ そんなこと言われたら……もっと気持ちよくなっちゃうっ♡♡」
さくらの腕が、俺の首に回された。
足も、腰に絡みついてくる。
「もっと……奥に、来て……♡♡」
ずぱんっ♡♡
「ひゃあっ♡♡♡ そこっ♡♡ そこ、当たってるっ♡♡♡」
奥の、一番気持ちいいところに当たったみたいだ。
さくらの中が、きゅうっと締まった。
「ここ?」
ずぱんっ♡♡
「そこぉっ♡♡♡ やっ♡♡ すごいっ♡♡♡」
同じ場所を、何度も突く。
ぱんっ♡ ぱんっ♡ ぱんっ♡ ぱんっ♡♡
「あっあっあっ♡♡ 優くんっ♡♡ もっとっ♡♡ もっと激しくっ♡♡♡」
言われるままに、腰の動きを速めた。
ぱんぱんぱんぱんっ♡♡♡
「んあぁっ♡♡♡ やばっ♡♡ 気持ちよすぎるっ♡♡♡」
さくらの中が、どんどんきつくなっていく。
布団がずれて、畳がきしむ。静かな母屋に、肉のぶつかる音と水音が響く。
「さくらっ……中、やばい……っ」
「優くんっ♡♡ あたしもっ♡♡ もうっ♡♡」
ぱんっ♡♡ ぐちゅっ♡♡ ぱんっ♡♡ ぬちゅっ♡♡
「あっ♡♡ イクっ♡♡ イっちゃうっ♡♡♡」
「俺も——っ」
「中にっ♡♡♡ 中に出してっ♡♡♡ 優くんのっ♡♡ いっぱい欲しいのっ♡♡♡」
ぱんぱんぱんぱんっ♡♡♡♡
「っ——出る、さくらっ!!」
「きてっ♡♡♡♡ イクッ♡♡♡♡」
びゅるるるっ♡♡♡♡
どくっ♡ どくっ♡ どくっ♡♡♡
さくらの一番奥に、熱いものが注ぎ込まれる。
「あああっ♡♡♡♡ なかっ♡♡ あついっ♡♡♡ いっぱい出てるっ♡♡♡♡」
さくらの中が、きゅうきゅうと痙攣しながら、俺のモノを搾り取るように締め付ける。
びゅるっ♡ どくっ♡♡
最後の一滴まで搾り出されて——
「はぁっ……はぁっ……♡♡」
「はぁ……はぁ……すごかった……」
まだ繋がったまま、お互いの額をくっつける。
汗ばんだ前髪が、ぺたっと額に張り付いている。
「さくら……♡♡」
「優くん……♡」
しばらく、そのまま呼吸を整える。
静かな母屋に、二人の荒い息だけが響いていた。
やがて、さくらが、俺の胸に頬を寄せて、ぽつりと言った。
「ねえ、優くん……」
「ん?」
「もう一回……したい♡」
「え?」
「だって……まだ、足りないんだもん♡♡ 今度は……あたしが、上で♡」
その言葉だけで——中でまた、硬くなっていくのがわかった。
「……わかった」
俺は一度抜いて、仰向けになった。
さくらが、ゆっくりと、俺の腰に跨る。
「ふふ♡ 今度は、あたしの番♡」
さくらが腰を持ち上げて、自分で位置を合わせた。
先端が入口に触れた瞬間、びくっと震える。
「ん……♡♡」
ゆっくりと、腰を下ろしていく。
ずぷっ♡ ずずずっ♡ ずぷんっ♡♡
「んあぁぁっ♡♡♡ 奥まで……♡♡♡ 届いてるっ♡♡」
重力で、さっきより深く入った。
目の前で、たわわな胸がぶら下がっている。
「さくら……この角度、やばい……」
「やらしい目で、見ないでっ♡♡♡」
さくらが、ゆっくりと腰を上下に動かし始めた。
ずちゅっ♡ ぬぷっ♡ ずちゅっ♡
「あっ♡♡ ん♡♡ はぁっ♡♡♡ 気持ちいい……♡♡♡」
動きが、どんどん激しくなる。
胸がたゆんたゆんと揺れて、白い肌が、薄っすらピンクに上気している。
ぱちゅっ♡ ぬちゃっ♡ ずちゅずちゅっ♡
「さくら、揺れすぎ……」
「言うなぁっ♡♡♡ 恥ずかしいっ♡♡♡」
俺は、下から突き上げた。
どんっ♡♡
「ひゃぁっ♡♡♡♡」
さくらが仰け反った。
両手でさくらの腰を掴んで、下からのピストンを加速させる。
ぱんぱんぱんぱんっ♡♡♡
「やっ♡♡♡ 下からっ♡♡♡♡ またイっちゃうっ♡♡♡♡」
揺れる胸を、下から鷲掴みにして、揉みながら突き上げる。
むにゅっ♡ ぱんっ♡ むにゅっ♡ ぱんっ♡♡
「あっ♡♡♡ 優くんっ♡♡♡ おっぱいもっ♡♡ 奥もっ♡♡♡ 両方やばいっ♡♡♡♡」
さくらが、前のめりに倒れ込んできた。
胸が、俺の顔に押し付けられる。
その乳首を、口に含んだ。
ちゅるっ♡
「あーーっ♡♡♡♡♡」
「俺も——出る——っ!」
「出してっ♡♡♡♡ 中にっ♡♡♡♡ いっぱいっ♡♡♡♡♡」
さくらが、自分から腰を打ち付けてきた。
ぱんぱんぱんぱんぱんっ♡♡♡♡
「イクっ♡♡♡♡♡——♡♡♡♡♡♡」
どくっどくっどくっどくっ♡♡♡♡
二回目を、さくらの一番奥に注ぎ込んだ。
「あっ♡♡♡♡♡ また熱いのっ♡♡♡♡♡ お腹、いっぱいっ♡♡♡♡♡♡」
びくんびくんびくん。
さくらが、俺の上に崩れ落ちた。
二人とも、汗だくだった。
「優くん……♡♡♡ 最高……♡♡♡」
「俺も。めちゃくちゃ」
「ふふ……銭湯掃除の途中で、こんなことしちゃった……♡」
「掃除、明日でいいよな」
「もうっ……優くんのせいでしょ♡♡」
二人で、くすくす笑った。
しばらくして。
俺たちは、布団の上で並んで横になっていた。
さくらが、俺の肩に頭を預けて、すうっと甘い石鹸の匂いがする。
「優くん」
「ん?」
「あたしと……付き合ってくれる?」
「もう付き合ってる、と思ってたけど」
「だ、だって、ちゃんと言葉にしないと、不安じゃん!」
「……付き合おう。さくら」
「……っ♡♡ うん! うん!」
さくらが、ぎゅうっと俺の腕に抱きついてきた。
「えへへ……あたし、彼氏できた♡♡ 番台で初めて会った兄さんが、彼氏になっちゃった♡」
「兄さん、もう卒業な」
「うん♡ これからは……優くんだ♡」
その笑顔が、世界で一番、可愛かった。
それからの、ある週末。
富士の湯の番台に、俺とさくらが、二人並んで座っていた。
そう。番台は、本来一人用だ。狭い。
でも、ぴったりくっついて座るのが、なんだか心地よかった。
そこへ、常連のおばちゃんたちがやってきた。
「あらぁ、さくらちゃん、なんでこの兄さんと並んで座ってんの」
「えへへ……実はね、あたしたち、付き合うことになって」
「えーっ! やっぱり! 言ったでしょ、いい人見つけたって!」
「おめでとうさくらちゃん! いやぁ、めでたい!」
「あ、ありがとうございます……」
さくらが、照れて、番台の帳簿で顔を半分隠した。
帳簿の陰から、ちらっと俺を見て、にっと笑う。
「兄さん、しっかりさくらちゃんのこと、頼むよ。なんてったって三代目の婿候補なんだから!」
「む、婿候補……」
「そうだよ! 将来は四代目だ! 富士の湯、頼んだよ!」
「ちょ、話が大きすぎ……」
「あはは! 優くん、顔真っ赤!」
「……さくらだって、真っ赤だろ」
「うっ……」
二人して、顔を見合わせて、笑った。
おじいちゃんも、奥から顔を出して、にやにや笑っていた。
「優くん、よろしく頼むよ。さくらは、いい子だから」
「……はい。こちらこそ、よろしくお願いします」
その夜、最後のお客さんが帰って、二人で暖簾をしまった。
がらり、と引き戸を閉めて、浴場に戻る。
塗りたての富士山が、薄暗い照明の下で、青く堂々と立っていた。
「ねえ、優くん」
「ん?」
「この銭湯、絶対、潰さないからね。優くんと一緒に、守っていくんだ」
「……ああ。一緒に守ろう」
「えへへ♡ 約束♡」
さくらが、ぎゅっと俺の手を握った。
「あ、そうだ。優くん、風呂上がりのコーヒー牛乳♡ はい、取り置きの最後の一本♡」
「……いつもありがとう」
「これからは、毎日取り置きしてあげる。彼女の特権ね♡」
にっと笑うさくらの顔が、富士山の絵を背に、きらきらしていた。
俺は、瓶のコーヒー牛乳を受け取って、腰に手を当てて、一気に飲んだ。
下町の銭湯に通い続けたら、最高の彼女ができた。
熱い湯と、富士山のペンキ絵と、看板娘の笑顔。
明日もまた、俺はこの暖簾をくぐる。
いや——もう、ここが俺の、帰る場所だ。
― 終 ―