社会人三年目。二十五歳。
俺、園田陽介(そのだ ようすけ)には、会社帰りの楽しみがある。
駅から自宅までの道にある、小さなケーキ屋。
『Pâtisserie fleur(パティスリー・フルール)』。
白い壁にパステルピンクの看板。ガラス張りのショーケースに宝石みたいなケーキが並んでいる洋菓子店だ。
俺は甘党だ。昔から筋金入りの。大学のときケーキバイキングに一人で行ってたし、今も会社のデスクにチョコを常備している。
そんな俺が、半年前にこの店を──正確には、この店の「あの人」を見つけてしまった。
「いらっしゃいませ♡」
白いパティシエコートに、ストライプ柄のエプロン。
ショーケースの向こうから、ふわっと微笑むその人。
桐島紗月(きりしま さつき)さん。二十三歳。この店のオーナーパティシエ。
製菓専門学校を出てフランスで二年修業し、去年この店をオープンしたらしい。
ふわふわのミルクティー色のボブ。くりっとした大きなヘーゼルブラウンの瞳。ぽてっとした桜色の唇。小さな顔にちょこんと可愛い鼻。
──で、何がやばいって。
パティシエコートの胸元を、ぱんっと押し上げている豊満な膨らみ。エプロンの紐が上下で布を引き締めて、余計に強調されている。
かがんでケーキを取り出すたびに、ふるんっと揺れる。
(見るな見るな見るな……)
毎回自分に言い聞かせてるのに、目が勝手に吸い寄せられる。
通い始めたきっかけは半年前の十月。残業帰りにふらっと入った閉店間際。
「今日のおすすめは、このモンブランです♡ 熊本産の利平栗を使って、ラム酒を少しきかせてるんですよ」
──一目で心臓を撃ち抜かれた。
帰って食べたモンブランは、人生で一番うまかった。味に感動して翌週も行った。その翌週も。気づけば週二、三回通う常連になっていた。
何度も顔を合わせるうちに会話が増えた。
「園田さん、今日の新作はピスタチオとフランボワーズのタルトです♡ 感想聞かせてくれると嬉しいです」
「もちろん!」
翌日。
「紗月さん、昨日のタルト最高でした。ピスタチオの風味がしっかりあるのに甘すぎなくて、フランボワーズの酸味とのバランスが絶妙で」
「ほんとですか!?♡ 配合を三回やり直したんです!」
「三回も!?」
「嬉しい……♡ 園田さんの感想、すっごく的確で♡ 味の違いをわかってくれる人ってなかなかいなくて」
紗月さんが胸の前で手をきゅっと合わせて、ふにゃっと笑った。
──この日から、俺は毎回感想を伝えるようになった。
「紗月さん、あのバスクチーズケーキの表面の苦みと中のとろとろのコントラスト最高でした。あと、ほんのりオレンジの香りしました?」
「えっ、わかりました!?♡♡ オレンジの皮を少しだけ入れたんです。気づいてくれたの園田さんが初めて♡♡」
紗月さんがカウンター越しに身を乗り出す。ふわん、と甘い匂い。
──シャンプーか、仕事中に染みついた香りか。どっちにしても、たまらなくいい。
(近い近い近い。顔が近い。あと胸が──カウンターの上で潰れて──)
「園田さん? 顔赤いですよ?」
「いっ、なんでもないです!」
「ふふ♡」
(この人、自分の破壊力わかってないだろ……)
通い始めて四ヶ月。バレンタイン前の二月。
閉店間際、客は俺だけだった。
「あの、園田さん」
紗月さんがもじもじとエプロンの端を握った。
「来週の日曜、お店休みにして新作の試食会しようと思ってるんです。春メニューの試作の感想がほしくて……」
「お客さん何人くらい呼ぶんですか?」
「えっと……園田さんだけ、なんですけど……」
「……え?」
「だ、だめですか……? 園田さんの感想がいちばん信頼できるから……」
俺だけ。日曜に。二人きりで。
心臓がどくん、と跳ねた。
「行きます。絶対行きます」
「ほんとですか!?♡ 断られたらどうしようって、ずっとドキドキしてたんです」
「断るわけないですよ」
「えへへ♡ じゃあ日曜、午後一時に来てくださいね♡」
帰り道、冬の冷たい空気の中、俺の顔はたぶん真っ赤だった。
日曜日。午後一時。
裏口から入ると、厨房から紗月さんが出てきた。
──息が止まった。
いつものコートじゃなく、淡いピンクのニットにデニムスカート。その上にベージュのリネンエプロン。ゆるふわのヘアはちょっと巻かれていて、耳の後ろに小さな花のピン。薄いピンクのリップ。明らかにおしゃれしている。
そして──ピンクのニットが胸元をぱつんと押し上げて、エプロンの紐がその膨らみの上を通って、とんでもないラインを作っている。
(反則だろこれ……)
「あの、変ですか……?」
「全然! めちゃくちゃ似合ってます」
「えへへ♡ 普段コート姿ばっかりだから、たまにはちゃんとした格好しなきゃって♡」
厨房の作業台に、六種類のプチガトーが並んでいた。
「春のメニュー候補です♡ 桜のムース、苺のミルフィーユ、抹茶のテリーヌ、レモンとラベンダーのタルト、ピーチメルバ、マンゴーのヴェリーヌ」
一つ目の桜のムース。口に入れた瞬間、ふわっと桜の香り。舌の上でとろけて消えて、フランボワーズのジュレがきゅっと酸味を加える。
「桜の余韻がすごくいい。食べ終わっても口の中にふわって残る」
「わぁ♡♡」
苺のミルフィーユのカスタードに隠されたタヒチ産バニラビーンズも当てた。残りの四つも次々と食べた。どれもレベルが違う。
「レモンとラベンダーのタルト、口に入れた瞬間はレモンで後味がラベンダーっていう二段構え、最高です」
「きゃっ♡♡ まさにそれを狙ったんです!」
六つ目。マンゴーとパッションフルーツのヴェリーヌ。
「マンゴーの濃厚さとパッションフルーツの酸味が混ざって、南国の風みたいです。最後にミントの爽やかさが来る。この季節感の演出、天才だと思います」
ふと横を見ると、紗月さんが目をうるうるさせていた。
「ごめんなさい……嬉しくて……♡」
エプロンの端で目元を拭う。
「お店を始めてから、ずっと一人で全部やってきて。『美味しい』って言ってくれるお客さんはいるけど、何がどう美味しいのか具体的に言ってくれる人はいなくて」
「……」
「園田さんはいつもちゃんと味を見てくれて。素材のこと、香りのこと、バランスのこと。園田さんの感想が──私にとって一番のご褒美なんです……♡」
胸の奥がじわっと熱くなった。
「紗月さん」
俺は紗月さんの方に体を向けた。潤んだ瞳。睫毛に涙の雫。ほんのりピンクの頬。
「俺、紗月さんのケーキ大好きです。でも──それだけじゃなくて」
心臓がばくばくいってる。でも、ここで言わなかったら一生後悔する。
「紗月さんのことが、好きです」
しん、と静まった厨房。冷蔵庫のぶーんという音だけ。
「好きです♡」
紗月さんが、真っ赤な顔でまっすぐ俺を見ていた。
「私も、園田さんのことが好きです♡」
「……マジで?」
「マジです♡」
涙をぽろぽろ流しながら笑った。
「初めてお店に来てくれた日から気になってて。園田さんが来る日は朝からそわそわして、ケーキをいつもより丁寧に仕上げちゃって。今日の試食会も──ほんとは二人きりになりたかっただけで……♡」
──もう我慢できなかった。
紗月さんの頬にそっと手を添えた。こくん、と小さく頷く紗月さん。
唇を重ねた。
ちゅっ。
「んっ……♡」
ぷるぷると柔らかくて、ほんのり甘い唇。
少しだけ離れる。数センチの距離。甘い吐息が唇にかかる。
「もう一回……いいですか♡」
「何回でも」
今度は深く。舌先で紗月の唇をなぞると、おずおずと唇が開いて、舌と舌が触れ合った。
ちゅ……ちゅるっ……
「んんっ……♡ れろ……♡」
深いキスをしながら、自然と背中を撫でていた。
「陽介って呼んでいい?」
「はい♡ ……陽介さん♡」
「紗月」
「……♡♡」
ふにゃっと笑って、俺の胸に顔をうずめた。
抱きしめているうちに、理性がどんどんやばくなってきた。
紗月の胸が俺の胸板に押しつけられて、ふにゅっと形を変えている。
「んっ……♡」
「ごめん、苦しかった?」
「ううん……♡ ちょっと、どきどきして……♡」
とろんとした瞳。紅潮した頬。半開きの唇。
(この顔はずるいだろ)
「触って、いいですか♡」
──こっちのセリフだった。最後のブレーキが外れた。
エプロン越しに、紗月の胸に手を触れた。
ふにゅ。
「ひゃっ……♡」
手のひらに収まりきらない大きさ。じんわり伝わる体温。両手で包み込むように揉んだ。
ふにゅ……むにゅ……
「はぁ……♡ あっ、陽介さん……♡」
「エプロン、そのままでいい?」
「……えっちです♡」
「否定はしない」
「ふふ♡ じゃあそのままで♡」
エプロンの下に手を滑り込ませ、ニットの上から直接揉む。
ふにゅるんっ。
「あぁっ♡♡」
親指で先端を探って、くりっ。
「ひぁっ♡♡ こ、ここ弱いです……♡」
くりくりっ。
「やぁっ♡♡ あっ、だめっ♡♡」
ニットの裾をめくり上げると、淡いラベンダー色のレースブラ。谷間に薄っすら汗が光り、カップから溢れそうな双丘。
ブラをずらすと、ぷるんっと飛び出す白い果実。桜色の先端がつんと硬くなっている。
先端を指でつまんで、くにっ。
「ひぁっ♡♡♡」
もう片方に舌を這わせた。ちゅるっ。
「ひゃあっ♡♡♡ 舌はだめぇ……♡♡」
れろ……ちゅっ、ちゅる……
先端を唇で咥えて吸いながら舌先で転がす。
「あっ♡ あっ♡ きもちいっ♡♡♡」
紗月が俺の頭を抱きしめた。
「もっと、触りたい」
「……♡♡」
小さく頷く紗月。
デニムスカートの裾から太ももに手を滑り込ませた。すべすべで、むちっとした弾力。内側に向かって進むと、紗月の息が荒くなっていく。
指先がショーツに触れた。──びしょびしょに濡れていた。
「こんなに?」
「だって……♡ 陽介さんがおっぱい気持ちよくしてくれるから……♡♡」
ショーツの端をずらして、直接触れた。ぬるっ。
「ひゃぁっ♡♡♡」
とろとろに蕩けた花びらの間を、指先がすべる。上の小さな突起に触れると──
「ひぁっ♡♡♡♡ そこっ♡♡ 気持ちいいっ♡♡」
くりくり刺激しながら、入口にそっと指を滑り込ませた。ずぶっ。
「んんっ♡♡♡」
熱くて、きゅうきゅうで、とろとろ。もう一本追加。
くちゅくちゅくちゅ。
「あっ♡ あっ♡ だめっ♡♡ きもちいいっ♡♡♡」
二本の指で中をかき回しながら、親指で上を同時に刺激する。
「いっちゃうっ♡♡ 陽介さんっ♡♡ いっちゃ──♡♡♡」
びくんっ♡♡♡
紗月の体が大きく跳ねて、指をぎゅうっと締めつけた。
「あああっ♡♡♡♡」
ぷるぷると震えながら絶頂を迎える紗月。指の周りに、とろとろの蜜が溢れてくる。
「はぁ……♡ はぁ……♡ 指だけでこんなの初めて……♡♡」
紗月がとろんとした目で、俺のベルトのあたりに視線を落とした。
「……陽介さんも、こんなに♡」
「いや、これは──」
「私にもさせてください♡」
紗月がゆっくりしゃがんだ。エプロン姿のまま、俺の前にひざまずく。
(この絵面、やばすぎる……)
ベルトを外して、取り出す。ぶるんっと解放されたそれが紗月の目の前でびくびく脈打つ。
「……おっきい♡♡」
紗月が舌を伸ばした。ぺろっ。先端をちろちろと舐める。
「ん♡ ちゅっ……れろ……♡」
ぱくっと咥えた。ずぶっ。
温かくて湿った口の中。舌がうねうねと絡みつく。
ちゅぱっ、ちゅぱっ、じゅるるっ。
「はぁ♡ 美味しい……♡♡」
紗月が口を離して笑った。唇の端から唾液が糸を引く。
「もっと奥まで……♡」
再び咥えて、ぐっと深く──ずぶぶぶっ。
「んぐっ♡♡」
喉の奥まで飲み込まれる。きゅうっと締めつけてくる感触。
ずぶっ……ちゅるっ……ずぶぶっ……
「紗月、やばい……もう──」
紗月が口を離した。ぬらぬらと光るそれを見つめて。
「陽介さん♡ 入れてほしいです♡」
真っ赤な顔で、まっすぐ俺を見て。
紗月を作業台の上に座らせた。
スカートをたくし上げ、びしょびしょのショーツをゆっくり脱がせる。蜜で糸を引きながら太ももを伝っていく。
エプロンはそのまま。ニットは胸までめくれて白い胸が露わで、下はスカートがたくし上がって──
(エプロンつけたままこの状態、エロすぎる……)
紗月の両脚の間に立って、先端を入口にあてがった。たっぷりの蜜がぬるっと濡らす。
「入れるよ」
「はい……♡ お願いします……♡♡」
ゆっくり腰を進めた。
ずぶ……ずぶぶ……ずぶんっ。
「はぁっ♡♡♡♡ 入ってくるぅ……♡♡♡」
奥まで全部。紗月が大きく仰け反った。
「紗月の中、めちゃくちゃ気持ちいい……」
「陽介さんのも……♡♡ 奥まで届いてるぅ……♡♡」
ゆっくり引いて、また突き入れる。ずちゅっ、ずちゅっ。
きゅうきゅうと締めつける内壁が、ねっとりと包み込んで絡みつく。
ぱんっ、ぱんっ、ぱんっ。
「あっ♡ あっ♡ きもちいいっ♡♡♡ 奥っ♡♡ 奥に当たってぇっ♡♡♡」
紗月が俺の首に両腕を回してしがみつく。揺れる胸が俺の胸板にぷにぷに潰れる。
ぱんぱんぱんぱんっ。ペースを上げた。
「やぁっ♡♡♡ はげしっ♡♡♡ またイっちゃうっ♡♡♡♡」
「イっていいよ」
「あっ♡ あっ♡♡♡──イクッ♡♡♡♡♡」
びくんびくんっ♡♡♡
中がぎゅうぅっと締めつけてきた。
「俺ももう──」
「中にっ♡♡♡ 中に出してっ♡♡♡♡」
どくっ、どくっ、どくどくどくっ。
紗月の一番奥に、全部注ぎ込んだ。
「あぁっ♡♡♡♡♡ あついっ♡♡♡ あついのが入ってくるぅっ♡♡♡♡♡」
びくんびくんと痙攣しながら、紗月がぎゅうっと抱きしめてくる。
「はぁ……♡♡ はぁ……♡♡ すごかった……♡♡♡」
余韻は数分だった。
繋がったまま、中で再び硬くなっていく。
「あっ♡♡ 陽介さん、まだ元気……♡♡」
「紗月が可愛すぎて……」
「もっと、してほしいです♡」
紗月を作業台から降ろして、くるっと向きを変えた。
「えっ♡♡ 後ろから?♡」
「このエプロンの後ろ姿が──ずっと気になってたから」
「えっち♡♡♡」
紗月が作業台に両手をついて、お尻をこっちに向けた。
エプロンの紐が背中で蝶々結びになっていて、その下にむちっとした白いお尻。太ももの間から、さっき出したものがとろりと垂れている。
先端をあてがって、一気に──ずぶんっ♡♡♡
「んんんっ♡♡♡♡」
後ろからだと角度が違う。奥の別の場所に当たる。
「あぁっ♡♡♡ さっきと違うところに当たるっ♡♡♡♡」
ぱんっ、ぱんっ、ぱんっ。
作業台がガタガタ鳴る。製菓道具がかちゃかちゃ揺れる。
エプロンの紐を片手で掴んで、ぐいっと引く。紗月の体が反り返る。
「ひぁっ♡♡♡♡♡」
「紗月がエプロン姿で誘うから──」
「ちょっと誘いましたっ♡♡♡♡」
ぱんぱんぱんぱんっ。さらに激しく、深く。
「あっ♡♡♡ イクっ♡♡♡♡ またイっちゃうっ♡♡♡♡♡」
「俺も──」
「中にっ♡♡♡♡ また中に出してぇっ♡♡♡♡♡」
「──紗月っ!!」
どくっ、どくっ、どくどくどくどくっ。
二回目を、一番奥に全部出した。
「あぁぁっ♡♡♡♡♡♡♡ いっぱい出てるぅっ♡♡♡♡♡♡」
びくんっ、びくんっ。紗月の中がぎゅうぅっと搾り取るように締めつける。
紗月がぐったり作業台に突っ伏して、俺も覆いかぶさるように倒れた。
エプロン越しに、紗月の背中の温もりが伝わる。
「紗月」
「はい……♡♡」
「好きだ。めちゃくちゃ好きだ」
「私も……♡♡♡ 大好きです……♡♡♡♡」
気づいたら、二人で厨房の床に座り込んでいた。紗月が俺の肩にもたれかかって、くったりと体を預けている。
「陽介さん♡」
「ん?」
「ケーキ、食べる?♡」
紗月がよろよろと立ち上がって、冷蔵庫を開けた。取り出したのは、小さなハート型のケーキ。真っ白な生クリームに赤い苺。チョコのプレートに繊細な文字。
『大好きです♡ ──さつき』
「実はね、最初からこれを渡して告白するつもりだったんです♡♡ でも陽介さんが先に言ってくれたから……」
「マジか……」
「はい、あーん♡」
フォークでひと口。甘い。とろとろの生クリーム、ふわふわのスポンジ、ジューシーな苺。
でも、いちばん甘かったのは──紗月の笑顔だった。
「どうですか?♡♡」
「最高。世界一美味い」
「えへへ♡♡♡」
紗月が俺の唇にちゅっとキスして、いたずらっぽく笑った。
「これからも、甘いもの──いっぱいあげるね♡♡♡」
「ケーキ?」
「ケーキも♡ ……それ以外も♡♡♡」
──ああ、もう。
この子は。この子のケーキは。この子の全部は。
俺の人生で、いちばん甘い。
<了>