梅雨の残業続きで荒んだ深夜のオフィスに、週に一度だけ観葉植物の世話に来る寡黙なグリーンコーディネーターの彼女と、雨の屋上テラスで心を許し合い、植物だらけの部屋で結ばれた話

梅雨に入ってから、オフィスの空気がずっと重かった。

俺、倉持拓也(くらもち たくや)、二十八歳。十五人ほどの小さなシステム開発会社で、受託案件のエンジニアをやっている。

四月にローンチした案件が炎上して、五月いっぱい火消しに追われて、六月になっても収まらない。窓の外はずっと灰色で、定時を過ぎると同僚から順番に帰っていって、最後にフロアに残るのは、いつも俺だった。

倉持拓也(……今日も、終わらないな)

蛍光灯の半分が落とされた、しんとしたフロア。キーボードを叩く自分の音だけが響く。デスクの隅には、入社祝いにもらった小さな観葉植物の鉢があった。名前も知らない。葉先が茶色く枯れて、土はからからに乾いている。

ここ二ヶ月、水をやった記憶もない。俺自身が、その鉢みたいだった。

その夜も、二十二時を回っていた。

エレベーターホールの方で、台車の車輪が転がる、かすかな音がした。顔を上げると、フロアの入り口に、見慣れない人影があった。

紺色のエプロン。後ろでひとつに束ねた髪。両手にじょうろと霧吹きを持って、観葉植物の前で、静かに何かをしている女性だった。

倉持拓也(……誰だ?)

会社の人間ではない。でも、不審者という雰囲気でもない。彼女は窓際に並んだ大きな鉢を一つずつ見て、葉を裏返し、土に指を差し込んで、必要な分だけ水をやっていく。その手つきが、やけに丁寧だった。

俺の視線に気づいたのか、彼女がこちらを見て、小さく頭を下げた。

七尾葉月「……お仕事中に、すみません。植物のメンテナンスで、入らせていただいてます」

倉持拓也「あ……どうも。お疲れさまです」

それだけ言って、彼女はまた作業に戻った。よけいな言葉は、ひとつもなかった。

後で総務の戸塚さんに聞いたら、毎週水曜の夜、オフィスの観葉植物を手入れしに来る業者の人だという。

戸塚「ああ、グリーンの人ね。観葉植物のレンタルとメンテ、契約してんのよ。倉持、毎週水曜まで残ってんの? ……お前、いいかげん帰れよ」

倉持拓也「……はは。帰ります、そのうち」

そのうち、なんて言いながら、俺はその日も終電近くまで残った。

次の水曜も、彼女は来た。

二十二時過ぎ。台車の音。紺のエプロン。俺はもう、その気配でわかるようになっていた。

フロアにいるのは、相変わらず俺一人。彼女は黙々と窓際の鉢を見てまわって、それから——俺のデスクの、枯れかけた鉢の前で、ふと足を止めた。

七尾葉月「……これ、倉持さんの、ですか」

名札を見たのか、俺の名前を呼んだ。低くて、落ち着いた声だった。

倉持拓也「あ、はい。入社祝いにもらったやつで。……すみません、枯らしちゃってて」

七尾葉月「枯れて、ないですよ」

倉持拓也「え」

七尾葉月「葉先は傷んでますけど、根は生きてます。……ちょっと、触っても?」

うなずくと、彼女は鉢を持ち上げて、軽く揺すり、土に指を入れた。傷んだ葉を何枚か、根元から摘み取る。それから霧吹きで、葉の裏に細かい霧を吹きかけた。

七尾葉月「ポトス、っていう子です。乾燥には強いけど、暑さで葉焼けして、水を切らしすぎただけ。……ちゃんと、生きようとしてます」

倉持拓也「……そう、なんですか」

七尾葉月「土が乾いて、鉢が軽くなったら、受け皿に水が垂れるくらいあげてください。それだけで、ちゃんと戻ります」

そう言って、彼女はエプロンのポケットから小さなメモを破って、水やりの間隔を書いて、鉢の横に置いた。几帳面な、細い字だった。

倉持拓也「……ありがとうございます。なんか、すみません。俺の私物なのに」

七尾葉月「いえ。……枯れそうな子を見ると、放っておけなくて」

ふっと、彼女が目元だけで笑った。その表情が、なぜか妙に、頭に残った。

それから、水曜の夜が、少しだけ待ち遠しくなった。

正確に言えば、彼女が来る二十二時前になると、自然と手が止まって、エレベーターホールの方を気にするようになった。

台車の音がして、彼女が現れる。俺は「お疲れさまです」と言う。彼女も小さく頭を下げる。最初はそれだけだった会話が、回を重ねるごとに、少しずつ伸びていった。

倉持拓也「あの、これ。言われたとおり水やってたら、新しい葉が出てきて」

七尾葉月「……ほんとだ。新芽。きれいな黄緑」

倉持拓也「なんか、嬉しくて。毎朝確認してます」

七尾葉月「ふふ。……植物って、応えてくれるんですよ。手をかけた分だけ、ちゃんと」

名刺をもらって、彼女が七尾葉月(ななお はづき)さんという名前だと知った。グリーンコーディネーター、と肩書きにあった。オフィスや店舗の観葉植物を選んで、置いて、手入れする仕事なのだという。

倉持拓也「七尾さん、いつも夜なんですね。回ってるの」

七尾葉月「昼間は店舗が多くて。オフィスは、人がいない時間のほうが、邪魔にならないので」

倉持拓也「邪魔だなんて。……むしろ、助かってます。この時間、ここ、俺しかいないんで」

七尾葉月「……毎週、遅くまでなんですね。倉持さん」

倉持拓也「まあ……案件が、ちょっと荒れてて」

言いながら、自分でも情けない顔をしていたんだと思う。七尾さんは、霧吹きを持つ手を止めて、少しだけ俺を見た。

七尾葉月「……無理、しないでくださいね」

たった一言。でも、ここしばらく誰にも言われていなかった言葉だった。胸の奥が、こりっと小さく音を立てた。

ある水曜、彼女は小さな鉢をひとつ、余分に持ってきた。

七尾葉月「これ、よかったら。倉持さんに」

倉持拓也「え、俺に?」

七尾葉月「ポトスの、挿し木。あなたの鉢から切った枝を、水に挿しておいたら、根が出たんです」

透明なグラスの中で、切られた一本の枝から、白い根が何本も伸びていた。それを、彼女が小さな素焼きの鉢に植え替えてくれていた。

七尾葉月「枯れかけてた子の、子どもです。……ちゃんと、増えるんですよ」

倉持拓也「……すごいな。あの鉢から」

七尾葉月「家でも、置いてみてください。一人だと、部屋、しんとするので。……緑があると、ちょっとだけ、息がしやすくなる」

その言い方が、まるで自分のことみたいで。俺は、グラスの中の白い根を見ながら、少しだけ訊いてみたくなった。

倉持拓也「七尾さんは……どうして、この仕事を?」

七尾葉月「……長く、なりますよ。話すと」

倉持拓也「聞きたいです。……あ、迷惑じゃなければ」

彼女は少し迷うように霧吹きを置いて、窓の外の、雨に濡れたビル群を見た。

七尾葉月「前は、全然違う仕事をしてたんです。広告の会社で。……毎日、終電で、休みもなくて。ある朝、起きられなくなって」

倉持拓也「……」

七尾葉月「半年、家から出られませんでした。そのとき、ベランダの、枯れかけてた鉢に水をやるのだけが、唯一できたことで。……それが、生き返ったんです。私より先に」

そう言って、彼女は小さく笑った。けれど、その目は、笑っていなかった。

七尾葉月「だから今は、枯れそうな子を、放っておけないんだと思います。……植物も、人も」

最後の言葉のとき、彼女の視線が、ほんの一瞬、俺に触れた気がした。

梅雨も終わりに近づいた、六月のなかば。

その水曜の夜は、ひどい雨だった。台風崩れの低気圧で、窓に横殴りの雨が叩きつけている。フロアにはやっぱり俺一人で、二十二時を過ぎても、台車の音はしなかった。

倉持拓也(……今日は、来ないか)

少しだけ落胆して、コーヒーを淹れにいこうと立ち上がったとき、エレベーターのドアが開いた。雨に濡れた紺のエプロンの七尾さんが、息を切らして駆け込んできた。

七尾葉月「すみません、遅くなって……! あの、屋上の、テラスの鉢」

倉持拓也「屋上?」

七尾葉月「この前、置いたばかりの大きい子が、まだ根が張ってなくて。この風だと、倒れて割れちゃう。……一人だと、運びきれなくて」

うちのオフィスは最上階で、屋上に小さな緑化テラスがある。役員が打ち合わせに使うだけの、ふだん誰も上がらない場所だ。

倉持拓也「行きましょう。手伝います」

七尾葉月「え、でも、お仕事が……」

倉持拓也「いいから。……植物、放っておけないんでしょ。俺も、覚えました」

七尾さんが、ちょっと目を見開いて、それから、こくりとうなずいた。

屋上は、嵐だった。

雨合羽を一着しか持っていなかった彼女が、それを俺に押し付けようとするのを断って、二人ともずぶ濡れになりながら、大きな鉢を軒下へ運んだ。重い陶器の鉢を抱えて、足を滑らせそうになる七尾さんの腕を、とっさに掴んだ。

倉持拓也「危ない! ……持ちます、そっち」

七尾葉月「すみません……っ、ありがとうございます」

風で倒れた鉢を起こし、根の張っていない木を、雨の当たらない庇の下へ寄せていく。最後の一鉢を運び終えたとき、二人とも、髪から雫を垂らして、肩で息をしていた。

雨が当たらない、テラスの軒下。並んで座り込んで、しばらく、ただ荒い呼吸を整えた。

七尾葉月「……ごめんなさい。巻き込んで。ずぶ濡れに」

倉持拓也「いや。……正直、ちょっと、楽しかったです」

七尾葉月「楽しい?」

倉持拓也「ここ二ヶ月、ずっとパソコンの前で、頭ばっかり使ってて。……こうやって、何か、手で運んで、誰かと一緒に必死になるの、久しぶりで」

彼女が、濡れた前髪をかきあげて、こちらを見た。街の灯りが、雨越しに、彼女の頬を青白く照らしている。

七尾葉月「……倉持さん、最初に見たとき。あの枯れかけてたポトスと、同じ顔してました」

倉持拓也「……ばれてましたか」

七尾葉月「うん。……だから、放っておけなくて」

雨音だけが、二人の間を満たした。彼女の肩が、寒さで小さく震えている。俺は、着ていたジャケットを脱いで、そっと彼女の肩にかけた。

七尾葉月「……倉持さんが、寒いですよ」

倉持拓也「俺は平気。……七尾さんのほうが、ずっと細いし」

彼女が、ジャケットの襟を、きゅっと両手で握った。俯いた横顔が、ほんのり赤い。

七尾葉月「……あの。倉持さん」

倉持拓也「はい」

七尾葉月「このまま帰ったら、二人とも風邪ひきます。……うち、ここから近いんです。タオルと、着替えくらいなら」

雨の音の向こうで、彼女の声が、少しだけ震えていた。

七尾葉月「……寄って、いきませんか」

七尾さんの部屋は、駅から歩いて数分の、古いマンションの一室だった。

ドアを開けた瞬間、緑の匂いがした。窓辺にも、棚にも、床にも、大小さまざまな観葉植物。そのどれもが、つやつやと葉を光らせて、生き生きとしている。まるで、小さな森の中に、ベッドと机を置いたみたいな部屋だった。

倉持拓也「……すごい。森だ、ここ」

七尾葉月「ふふ。……増えちゃって。みんな、家から出られなかった頃の、生き残りで」

タオルを二枚、渡される。髪を拭きながら、俺はその部屋に満ちた、静かな生命の気配を吸い込んだ。さっきまでの嵐が、嘘みたいに遠かった。

彼女が、奥でブラウスを着替えている気配がする。振り向かないように、俺は窓辺の鉢を見ていた。やがて、背中で、ためらうような声がした。

七尾葉月「……倉持さん」

振り返ると、ゆったりした部屋着に着替えた七尾さんが、濡れたタオルを胸に抱えて、立っていた。化粧の落ちた素顔。濡れて、束ねていた髪がほどけて、肩に落ちている。

無防備で、やわらかくて、息を呑むほど綺麗だった。

倉持拓也「……七尾さん」

七尾葉月「あの。……私、たぶん、最初の水曜から、ちょっとだけ」

言いかけて、彼女が言葉を切る。俺は、一歩、距離を詰めた。

倉持拓也「俺もです。……毎週、水曜の夜だけ、生き返ってた」

彼女の頬に、そっと手を添える。冷たかった指先が、次第に熱を持っていく。潤んだ瞳が、俺を見上げて、静かに閉じられた。

ゆっくり、唇を重ねた。

ちゅ……。

雨に濡れた、ひんやりした唇。けれど、触れたところから、じんと熱が広がっていく。

七尾葉月「ん……♡」

一度離れて、もう一度。今度は角度を変えて、深く。彼女の手が、俺のシャツの胸元を、きゅっと掴んだ。

ちゅ……んっ……ちゅる……♡

唇を食むと、彼女の口がわずかに開いて、舌先がおずおずと触れ合う。

れろ……ちゅ……んっ……♡

ぷは、と離れると、二人とも息が上がっていた。

七尾葉月「……はぁ……♡ 倉持さん……」

倉持拓也「……止まれなくなりそうだ」

七尾葉月「……止まらなくて、いいです」

その一言で、理性の糸が、ほどけた。

緑に囲まれたベッドに、彼女をそっと横たえる。窓辺の植物の葉が、街灯の光を受けて、二人の上にやわらかな影を落とした。

部屋着のボタンを、ひとつずつ外していく。緊張で、指が少し震えた。

七尾葉月「……あんまり、見ないで。明るいの、恥ずかしい」

倉持拓也「……無理です。綺麗だから」

前を開くと、シンプルな下着に包まれた胸が現れた。細い体に、不釣り合いなほど、やわらかそうに実っている。

ホックを外して、下着をずらす。間接照明に、白い胸が浮かんだ。

倉持拓也「……綺麗だ」

七尾葉月「やっ……♡」

腕で隠そうとするのを、そっと外して、右手で包むように触れた。

ふにっ。

七尾葉月「あっ♡」

吸い付くような、やわらかい弾力。指を沈めると、むにっとはみ出す。先端を、親指でくりっと転がした。

七尾葉月「ひゃっ♡♡ んっ♡」

びくん、と体が跳ねる。先端が、指先で硬くなっていく。唇を、胸の先に落とした。ちゅう♡

七尾葉月「あぁっ♡♡」

舌先で転がしながら、反対の胸を揉みしだく。

ちゅるっ♡ れろ♡ ちゅう♡♡

七尾葉月「やっ♡♡ 声、出ちゃう……♡♡」

いつも植物に静かに触れる、あの繊細な指の持ち主が、俺の手の中で乱れていく。そのギャップに、頭が痺れた。

部屋着の下を脱がせ、最後の一枚に手をかける。下着の上から、そっと指で触れた。

すり……。

七尾葉月「んっ……!♡」

——じわり。薄い布越しに、熱と湿り気が、はっきり伝わってきた。

倉持拓也「……もう、こんなに」

七尾葉月「だって……屋上から、ずっと……♡♡」

下着に指をかけて、ゆっくりずり下ろす。とろりと、蜜が糸を引いた。脚の間に体を滑り込ませ、白い太ももの内側にキスを落としながら、ゆっくり中心へ近づいていく。舌先で、そっと触れた。ちろ……。

七尾葉月「んあっ♡♡!」

彼女の腰が、びくんと跳ねた。

ちゅる……れろ……ちゅっ……♡

七尾葉月「あぁっ♡♡ そこ……だめ……♡♡」

七尾さんの手が、俺の髪をぎゅっと掴む。小さな粒を舌先で見つけて、集中して転がした。

こりこり……ちゅっ……♡

七尾葉月「やっ♡♡♡ あっ、あっ……♡♡」

太ももを押さえて開かせながら、舌を動かし続ける。粒を唇で挟んで、ちゅうっと吸い上げた。

七尾葉月「——っ♡♡♡! だめっ、イっちゃ……♡♡♡ んんんっ……♡♡♡」

彼女の背中が、弓なりに反った。細い全身が、びくびくと震えて、やがて、力が抜けたようにシーツに沈んだ。

七尾葉月「はぁ……はぁ……♡♡ ……倉持さん、上手、すぎ……♡」

潤んだ瞳で見上げて、彼女が体を起こした。俺のシャツのボタンに手をかけて、頬を赤らめながら囁く。

七尾葉月「……今度は、私が」

張り詰めたものに、しなやかな指が、そっと添えられた。

七尾葉月「……すごい。こんなに……♡」

指が、ゆっくり上下に動く。しゅっ……しゅっ……。土に触れ、根に触れるその指は、思いのほか繊細で、力加減が絶妙だった。

七尾葉月「……口で、しても、いいですか」

上目遣いで訊いてくる表情が、艶っぽすぎて言葉にならなかった。ちゅ、と先端にキス。ぺろ、と舐めて——ぱくりと口に含んだ。

ずぷ……。温かく濡れた口の中に、包まれる。

七尾葉月「ん……じゅる……♡ んちゅ……♡」

ゆっくり頭を上下させて、頬をすぼめて吸い上げる。

ちゅぱっ……じゅるるっ……♡

倉持拓也「……七尾さん、やばい、気持ちよすぎる」

七尾葉月「ん……♡ もっと……♡」

ずぷっ……ずぷっ……。深く咥えられるたび、全身に電流が走った。

倉持拓也「……ストップ。このままだと、出る」

ぷは、と口を離した彼女の唇が、唾液で濡れて光っていた。

七尾葉月「……ふふ。我慢、できました?♡」

倉持拓也「……七尾さんが、煽るからでしょ」

彼女をベッドに引き上げて、財布から取り出したものを手早く着ける。蜜で濡れた入り口に、先端をあてがった。

七尾葉月「……来て、ください。倉持さん」

倉持拓也「……いきます」

ゆっくり、押し入れていく。ずぷ……っ。

七尾葉月「んんっ……♡♡!」

温かい。きつい。中が、ぎゅうっと締め付けてくる。

七尾葉月「入って……きてる……♡♡ 奥まで……♡♡」

根元まで収まると、下腹部が密着した。少し動きを止めて、馴染ませてから、ゆっくり腰を引いて、また押し込む。

ずぷ……ずちゅ……♡

七尾葉月「あっ♡♡ んっ♡♡」

パン……パン……パン……。

七尾葉月「あっ、あっ、あっ……♡♡♡ 気持ち、いい……♡♡」

ぐちゅ……ぐちゅ……。結合部から、卑猥な水音が響く。腰を掴んで、少しずつペースを上げた。

パンパンパンパン……!

七尾葉月「あっあっあっ♡♡♡♡ そこっ♡♡ 奥に当たって……♡♡♡」

角度を変えて突き上げると——

七尾葉月「そこぉっ♡♡♡! いいとこ、です……♡♡♡」

七尾さんの脚が、俺の腰に絡みついてくる。もっと奥を求めるように。

七尾葉月「もっと……♡ もっと、奥……♡♡♡」

緑の影が揺れる部屋の中、植物の葉擦れと、二人の息づかいが混じり合った。

パンパンパンパンパン……!!

七尾葉月「やばっ♡♡♡ また、来ちゃうっ♡♡♡ イっちゃう……♡♡♡♡」

倉持拓也「俺も……っ」

七尾葉月「一緒に……♡♡♡ 一緒に、イきたい……倉持さん♡♡♡♡」

彼女が、俺の背中に両腕を回してしがみつく。脚も、ぎゅっと腰に絡んだ。奥に押し付けるように——最後の一突き。

七尾葉月「あぁぁっ♡♡♡♡♡!!」

どくっ、どくっ、どくっ……!

七尾さんの全身が震えて、中が痙攣するように搾り取ってくる。

七尾葉月「はぁっ……♡♡♡ すごい……♡♡」

抱き合ったまま、荒い呼吸を繰り返した。ちゅ、と軽くキスをする。繋がったまま、しばらく互いの鼓動を聞いていた。

ゆっくり体を離すと、七尾さんが横を向いて、とろけた瞳で俺を見た。

七尾葉月「……倉持さん。私、こんなこと……ずっと、しばらく、なくて」

倉持拓也「……俺もです」

七尾葉月「ほんとに?」

倉持拓也「ほんとに。……七尾さんだから、だと思う」

彼女が、ふにゃっと笑って、俺の胸に頬をつけた。窓辺の植物が、夜風に、さわりと葉を鳴らす。

七尾葉月「……ねえ。もう一回、しても、いいですか」

倉持拓也「……こっちのセリフです」

新しいものを着け終えると、今度は七尾さんが、おずおずと俺の上にまたがってきた。間接照明に、しなやかな白い体が浮かぶ。緑の影が、その背中に揺れている。

角度を合わせて——ゆっくり、腰を落とした。

ずぷん♡♡

七尾葉月「あっ♡♡♡ この格好……奥まで、来る……♡♡♡」

倉持拓也「……っ、七尾さん、それ……」

七尾葉月「ふふ……♡ 気持ち、いい……?♡」

彼女が、ゆっくり腰を上下させ始めた。

ずぷ♡ ずちゅ♡ ずぷっ♡♡

七尾葉月「ん♡♡ 自分で動くの……恥ずかしい……っ♡♡」

目の前で揺れる胸に、手を伸ばして両方掴んだ。

むにゅっ♡♡

七尾葉月「ひゃんっ♡♡♡ 揉まないで……動けなくなる……♡♡♡」

倉持拓也「いいから、動いて」

ぱんっ♡ ぱんっ♡ ぱんっ♡♡

七尾葉月「あっあっあっ♡♡♡ いい場所、当たってる……♡♡♡♡」

たまらず、下から突き上げた。

ずぷんっ♡♡♡

七尾葉月「ひぁっ♡♡♡♡ 下から、だめっ♡♡♡」

彼女の動きと、俺の突き上げが、一番奥でぶつかる。

パンパンパンパンパンッ♡♡♡♡♡

ぐちゅぐちゅぐちゅ♡♡♡

七尾葉月「だめっ♡♡♡ そこばっかり……っ♡♡♡ おかしくなっちゃう……♡♡♡♡」

七尾さんが、俺の上に倒れ込んでくる。汗ばんだ胸が、俺の胸に押し付けられた。そのまま、ぎゅっと抱きしめて、下から激しく突き上げる。

パンパンパンパンッ♡♡♡♡

七尾葉月「あっあっあっ♡♡♡♡ また、来ちゃう……っ♡♡♡♡!」

倉持拓也「俺も……っ! 一緒に、イこう」

七尾葉月「うんっ♡♡♡ 一緒に……っ♡♡♡♡」

彼女が、俺の首にしがみつく。中が、きゅうきゅうとリズミカルに締め付けてくる。奥に押し付けるように——最後の一突き。

七尾葉月「イくぅっ♡♡♡♡♡!!」

どくんっ、どくっ、どくっ……!

七尾さんの全身が震えて、中が痙攣するように搾り取っていく。

七尾葉月「はぁっ……♡♡♡ すごかった……♡♡♡」

倉持拓也「……俺も。最高でした」

汗だくの体を重ねたまま、しばらく抱き合っていた。窓の外で、いつのまにか、雨がやんでいた。

しばらくして、七尾さんが、俺の腕の中で、ぽつりと言った。

七尾葉月「……水曜の夜だけの人で、終わりにしたくないな」

倉持拓也「……俺も、同じこと考えてました」

俺は、彼女の髪を撫でながら、はっきり言った。

倉持拓也「七尾さん。また、会いたいです。仕事の、業者さんとしてじゃなくて」

七尾さんが、顔を上げて、目を見開いた。それから、泣きそうな顔で、くしゃっと笑った。

七尾葉月「……うれしい。私も、ずっと、それを言ってほしかった」

倉持拓也「……付き合ってもらえますか」

七尾葉月「……はい。よろしく、お願いします」

ちゅ、と、彼女が俺の唇にキスをした。それから、窓辺の植物たちを見て、いたずらっぽく笑う。

七尾葉月「……この子たち、みんな、証人ですね」

倉持拓也「……はは。立派な森だ」

それから、季節が一巡りした。

俺は、あいかわらず同じ会社で働いている。けれど、もう、フロアに最後まで一人で残ることは、ほとんどなくなった。仕事を、人に渡せるようになった。早く帰りたい場所が、できたからだ。

デスクの隅のポトスは、あれから何度も枝を伸ばして、今では葉が机の縁から垂れている。

水曜の夜、彼女のオフィス巡回が終わる頃に、俺は迎えにいく。そして、二人で、緑だらけの彼女の部屋へ帰る。

七尾葉月「拓也くん、見て♡ あのとき挿し木した子、こんなに大きくなったの」

休みの朝、彼女——葉月が、窓辺の鉢を抱えて、得意げに差し出してくる。すっかり、俺の前でも気を抜くようになった。

倉持拓也「……ほんとだ。あの、グラスの一本が、これに」

七尾葉月「でしょ♡ ……枯れかけてた子も、ちゃんと根を張れば、こんなに増えるんですよ」

くしゃっと笑う葉月の手を、俺はぎゅっと握った。あの嵐の夜、テラスの軒下で、ジャケットの襟を握っていた、その手を。

今年も、梅雨が来る。

でも、もう、頭の芯は湿っていない。窓辺で静かに葉を広げる、青々とした緑が、毎年ちゃんと教えてくれる。手をかけた分だけ、ちゃんと応えてくれるものが、ここにあるのだと。

雨上がりの朝の光が、二人と、たくさんの植物の上に、やわらかく差していた。

― 終 ―


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