大学・学園
祖父のフィルムカメラを抱えて二年で潜り込んだ廃部寸前の大学写真部で、取り壊し間近の暗室にひとりこもる寡黙な四年の先輩に現像を教わるうち、最後の一本を引き伸ばした初夏の夜に赤い灯りの下で結ばれた話
祖父が遺したフィルムカメラの一本をどうしても現像したくて、僕は廃部寸前の写真部に二年で途中入部した。誰も使わなくなった暗室を守る四年の宮原先輩に手ほどきを受けるうち、夏休みに取り壊される部室棟の最後の夜、赤い安全光の下で距離がゼロになった。
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5件の記事
大学・学園
祖父が遺したフィルムカメラの一本をどうしても現像したくて、僕は廃部寸前の写真部に二年で途中入部した。誰も使わなくなった暗室を守る四年の宮原先輩に手ほどきを受けるうち、夏休みに取り壊される部室棟の最後の夜、赤い安全光の下で距離がゼロになった。
大学・学園
体育会の熱気からずっと逃げてきた僕が、二年の春になぜか飛び込んだ大学のボート部。陸の上ではぼそぼそ喋る小柄な同期・葉山鈴は、朝霧の湖面に出た途端、別人みたいに鋭い号令で八人を一つにまとめる舵手だった。シーズン最後のレースの夜、誰もいない艇庫で、いつも号令をかける彼女の声が、はじめてほどけた。
大学・学園
高校で肘を壊して野球をやめた僕が、ふらりと迷い込んだ大学の弓道場。そこには的の前で『早気』に苦しみながら、毎晩ひとり弦を引き続ける三年の結城先輩がいた。リーグ戦前夜、誰もいない射場で、凛として張りつめていた先輩の糸が、ほどけた。
大学・学園
学部四年の秋、卒論実験に行き詰まって毎晩研究室に居残る僕に、博士課程の芹沢先輩はいつも黙ってコーヒーを淹れてくれた。学園祭が終わって人の消えたキャンパス、古い分光光度計が壊れた徹夜の夜に、ガラス越しだった距離がゼロになった。
大学・学園
週に一度の深夜放送でいつも声が震えてしまう私を、ガラスの向こうの調整卓から黙って支えてくれた音響の冬野先輩。卒業まであと半年、大学祭の最終夜、誰もいない放送室で私はやっと本当のことを言えた。