前作につきましては皆様方のとても生暖かい・・・もとい、暖かい支援と多大なる評価を頂き、とても嬉しく思っております。
もちろん、厳しい評価につきましても読んでくれたからこその評価なんだとありがた迷・・・失礼!
大変有り難く頂戴いたしております。
今回はその後の展開や、私自身の過去でのトラブルにゴタゴタ話や綾との初体験から結婚に至る経緯をお話ししようと思っております。
自分的にはこの時期が一番大変だった気が・・・。
では、始めさせていただきますので、よろしくお願い致します。
綾の学校が夏休みに入り、世間はそろそろお盆休みに入る頃の午前中の事・・・。
俺はある選択をしていた。
「ねぇ?コウちゃん。そこまでこだわる事なんてないよぉ?」
綾の呑気な言葉を他所に、俺は右手をあごの下につけ、真剣な表情である物を眺めていた・・・。
ロダンの考える人とは実は何かを見ている人・・・との見解もあるらしいが、今の俺は正にそんな状態だ。
「悪いけどそうはいかない!これは俺にとって・・・いや、世の男達にとってとても大切な事といってもいいくらいなんだ!」
俺は綾に目もくれずただひたすら品定めを行った。
「そんな高いのなんていらないよぉ・・・さっき見たのでいいじゃん!」
いい加減、飽きたのか綾は急かすような台詞を俺に伝える。
「こちらなんていかがですか?結構人気ある商品なんですよ?」
「あっ!それでいいじゃん!人気あるっていうし」
女性店員が見せてくれた品物に綾は俺に妥協させる気満載の台詞で煽る。
「うーん・・・こういうのってオリジナリティーが大事だと思うんだ?!綾だってそういう物の方が嬉しいでしょ!?」
「まぁ、確かに特別な感じがして嬉しいけど・・・でもそうなると高いのしかないよ?」
綾は物より価格の心配をしているようだった。
「・・・よし!決めた!これにします!」
「はい!ありがとうごさいます!!では早速ご用意させていただきますね」
女性店員はにこやかな表情でガラスのショウウィンドウから品出しを始めた。
店を出たとき、綾がため息をつきながら話しかけてきた。
「ねえ、コウちゃん。大丈夫なの?そんな高いのなんて・・・」
「綾は心配しなくてもいいよ。これは綾のご家族に俺の人柄を見てもらう為の投資なんだから!」
俺は満足そうに綾の家族へ贈る品物。
それは馬の上に女性が跨がっているロゴが入った百円の消しゴム半分くらいのサイズで一個数百円はするだろう高級チョコレートの袋。
俺はそれを大事に抱えた。
(え・・・?婚約指輪とか思ったって?いやいや、その時はちゃんとその旨をお話ししますし、もし、あなたが女性の方なら男以上に妥協なんて絶対しないと思いますけど・・・逆にお伺いして申し訳ないのですが、そこんところはどうなんでしょうか・・・?っと、話が反れましたが続けさせていただきます)
「・・・ホントにごめんね。コウちゃん・・・あたしがつい話しちゃったもんだからお母さんや、特にお姉ちゃんなんかどうして今まで連れて来なかったの?!なんて叱られてさ・・・」
「まぁ、いつかは挨拶しに行かなきゃとは思ってたし、これも何かのご縁だと思う事にしなきゃ!」
俺は笑顔で綾に答えた。
「でも、お父さんに会えないのは少し残念な気もするけどね・・・」
「いいのいいの!あたしのお父さんって家にお金をあまり入れてくれなかったって。休みの日なんかいつも家族残してどっか行っちゃって家庭を顧みない人だったし、お母さんも離婚した事を後悔なんて全くしてないって言ってたもん」
綾自身も母親と同様に父親に対しての関心は薄いようだった。
綾の両親は綾が中◯生になる辺りで両親の不仲により、離婚したという。
そして、綾には俺よりも少し年齢が上の年の離れたお姉さんがいた。
お姉さんは両親の離婚した頃にはすでに社会人になっていて、綾が高◯へ進学する頃に結婚したらしいのだが、綾の中学校、そして現在の高◯の学費から修学旅行などの積み立てに至るまでの費用はその姉さんが全て賄(まかな)っているそうだ。
なんでもOLから退職を機に独立してピアノだかエレクトーンといった音楽教室の経営と講師を兼任しているらしい。
それもあり、綾にとってのお姉さんとは父親のような存在であり、厳しく、曲がった事が嫌いで、とても頭が上がらない人だと言っていた。
俺が持つ唯一の不安要素といえばそのお姉さんの存在である。
前のお話しを読んでくださった方にはご理解頂けるかと思いますが、俺は初めて会う人でもよほど怖い人でもない限り、老若男女問わず比較的平気で会話ができるタイプなので最初に綾から顔合わせの話を聞かされた時にはぶっちゃけ引っ越し先の隣近所へのご挨拶程度にしか考えていなかった。
ところが綾のお姉さんについて先ほどしたような話を聞かされているうちに真夜中に一人、真っ暗な部屋で驚愕系ホラー映画を観賞している時のような悪寒と冷や汗が止まらなかった。
(俺なんかで・・・大丈夫なのかよ・・・?!)
マナー講座とか礼儀作法でもやっときゃ良かったとか本気で考えていた。
だからこそ、冒頭でもう後がない受験中の浪人生並みの真剣さで品定めをしていたのである。
「コウちゃん?大丈夫?」
「はっ?!な、何?!」
俺の意識はもはやお姉さんへの対処方法に夢中で何も聞こえてないような状態だった。
「じゃあ、呼び鈴鳴らすね!」
「あっ?!ちょっ・・・」
暑くてだらけた格好のまま、身だしなみができていない状態にも関わらず綾は自宅の呼び鈴を鳴らす。
「・・・はい」
インターフォンから若い女性の声が聴こえてきた。
「あっ、お姉ちゃん!?来てたの?ただいまぁ!今日は約束通り、コウちゃんも一緒だよ!」
(はあぁ?!は、話が違うじゃねーか?!)
俺は焦った。
綾の話によればお姉さんは所用の為、綾の自宅である実家に来るのは午後になると言っていたはずだった・・・。
お姉さんに対しての心の準備はそれまでに済ませ、そして渡り合い、うまく切り抜ける策を模索し終える。
そんな算段であったのに・・・。
「綾、お帰り!」
明るい口調と共に玄関のドアが開き、そこからお姉さんが出てきた。
「あ・・・」
綾のお姉さんは俺の想像を遥かに凌駕していた。
一言で言ってしまえば綾を美人にすればこんな感じだろうか・・・。
伸長は綾より少し高い157センチの48キロ。
バストは88cm、ウエストは62cm、ヒップはわからないです。
(これは本人が話された情報なのでほぼ確実かと思われます)
髪は肩より長めの黒髪のストレートでCMに出れるんじゃないかと思わせるくらいさらさらで綺麗な髪質。
顔のパーツについてはやや大きめな瞳でありながらシャープな形をしており、鼻は高めで唇は綾と同じくらいの薄目だが、艶のある淡い赤色のルージュに彩られ、そしてその唇のすぐ側にある小さなホクロがさらにその色気を醸し出す。
綾が側にいるというのに不覚にも俺は見とれてしまった。
「こんにちは、えっと、コウチャンですよね?私、彩の姉で紗也(さや)と申します。いつも妹の綾が大変お世話になっております」
(またも懲りずに仮名で申し訳ありません。それと俺の名前についても綾と同じようにコウちゃんと呼んでくれましたが、混同してまうので片仮名で表現させていただきます)
紗也と名乗ったお姉さんは深くお辞儀をして俺を出迎えてくれた。
「わたくしっ!綾さんとっ!お付き合いを!させて頂いております!コウ!と申します!こ、これ!お口に合うかどうかわかりませんが!皆様でお召し上がりください!」
俺は鬼軍曹に挨拶について叱咤(しった)され、二度目の挨拶をする入隊初日の気弱な訓練兵のような口調と動作で自己紹介をした。
「まぁ!ご丁寧にありがとうごさいます!ここではなんですから中へどうぞ」
紗也はとても優しい表情で俺を迎え入れてくれた。
「失礼します!」
迎え入れられた部屋の中で俺に対し、紗也は俺の身体を見て驚いていた。
「えっ?!コウチャンってそんなに細いの?!」
「・・・え?」
俺はその日、身体のラインがでる程度の小さめサイズの白いタンクトップにシースルーぽい黒のジャケットを羽織り、ズボンは26インチのレディースサイズ(ウエスト56センチくらい)の黒のスキニージーンズを履いていた。
礼儀作法の一端としてしてジャケットは家に入る前に脱いだのでこれによって紗也は気がついたようだった。
「コウちゃんて細いなとは思ってたけどあたしより細いの履いてるの?!そしたらウエストも?!」
俺は健康診断の時に測った体格の数値と着用している服のサイズを伝えた所、綾も紗也同様に驚愕していた。
その時に紗也は自身のサイズを言っていたが綾に至っては絶対に言わないと頑(かたく)なに拒否された。
「だってあの時、コウちゃんの見た時はそんなに細く見えなかったよ!」
あの時・・・とは前作で俺の裸を見た時の事で、綾の視線は恐らく陰径に集中していた為、胴体や足などはろくに見てなかっただろうと思われるが、その綾の一言で俺がパニックに陥ったその時の状況は今だ鮮明に記憶している。
「あの時・・・?綾・・・あんたコウチャンと・・・」
紗也の言葉途中にテンパった俺がさらにやらかしてしまいました・・・。
「いえ!それは誤解でして僕らはまだ最後まではしてなくてっ!・・・あっ・・・?!」
「・・・くすくす・・・やっぱりあなたたちまだしてなかったんだ?!」
「・・・へ?やっぱり・・・?」
紗也からの返答は俺の想像していた言葉とは正反対の言葉だった。
「えっと・・・綾・・・ちゃん?」
俺は思わず隣にいた綾に首だけを向け聞いてみた。
「・・・実はお姉ちゃんにあたしが彼氏ができたって事がバレちゃった時にお姉ちゃんにいろいろ聞かれたの」
綾は照れ笑いしながら答えた。
(アナタ・・・どこまで喋ったんデスカ・・・?)
「まっ、綾だってもう子供じゃないから、あんたが決めた人なら私は何も言わないわ」
紗也は緩やかなため息を吐くような口調で綾に伝え、腕を組んで俺をじっと見つめながら綾に指示を出した。
「うーん、でもコウチャンは私でもちょっと嫉妬しちゃうくらい細いかなぁ。綾、コウチャンにお昼はここでたくさん食べていただくからお母さんと一緒にすぐに用意をしてきて」
「うん、わかった!じゃ、コウちゃん。ちょっと待っててね」
綾は笑顔で部屋を後にした。
(い、いかないでぇ・・・!)
俺は綾に心の叫びを聞いてくれとばかりに瞳で訴えたが、ものの見事に無視された。
「・・・コウチャン?」
「はい!?」
紗也の呼び掛けに思わず裏声に近い口調で過剰に反応してしまった。
「くすくすっ、やだっ。そんなに緊張しないで!おねーさんコウチャンの事つまんで食べたりなんてしないから」
紗也はその唇に軽く握った右手を当てて上目遣いをしながら微笑みながら伝えた。
(いえ、むしろ丸かぶりしていただきたいかと・・・)なんて切り返しを気取り顔で言ってやろうかと思ったが・・・冗談だけに冗談でも言えるわけがない・・・。
「・・・あの子から聞いた話の中で・・・綾がいじめられてたのを知った時ね・・・」
紗也は突然話を切り出した。
「あ、はい!」
「私、正直どうしたらいいのかわからなかったの・・・」
「・・・はぁ・・・イジメって難しいみたいですからねぇ・・・」
俺は腕を組んで頷いた。
「私は結婚して家を出ちゃったから週に一回くらいしかあの子の側にはいてあげられなくて、学校に訴えることも考えたんだけど解決するとは思えなくてね・・・」
「あの子、何も言ってくれなかったし、私が聞いても心配させたくないから何でもないって言うと思う」
紗也は遠い目をしながら語った。
「でも、突然あの子が明るくなって、オシャレに気を遣うようになって、友達とちょっと打ち合わせだなんて言いながらお出掛けする直前まで鏡で全身を確認したりしてね!」
遠い目をしていた紗也が探し物を見つけ出した時のような笑顔を俺の顔に近づけて語りかけた。
「へ、へえ・・・!そうだったんですか?!」
俺は紗也の接近した顔に対するドキドキ感と、綾が俺の為にしてくれた行動に対し、嬉しくなった。
そこで紗也は思い出したように笑顔で語った。
「それで、私があの子にカマかけてそこからコウチャンの事を聴いたの」
「コウチャンが身体張って助けてくれて、あたしのこと好きだって言ってくれて、ギュッてしてくれて、もう聞いてるこっちが恥ずかしくなるくらい」
「あはは・・・」
俺も恥ずかしかった・・・。
「それで私、ちょっとイジワルしてコウチャンとはエッチしたの?って聞いたらもうあの子ものすごく動揺しちゃって」
この時、俺もかなり動揺しました。
「コウチャンはすごく優しくしてくれた上に気を使ってくれたからってとこまでしか言わなかったんだけど・・・さっきのコウチャンの言葉でわかったわ」
「なんか・・・申し訳ない気持ちでいっぱいです・・・・・・」
「いいのよ!それでね。そこまで自慢の彼なら連れてきなさいって言ったのも、親心からっていうより私個人がコウチャンの事が気になってね」
「僕の事が・・・ですか?」
「ええ、・・・それで実際にお会いしてこうしてお話しをしてみて・・・こんなこと綾の前じゃとても言えないけど、やっぱり姉妹だけあって男性の好みも同じね!」
紗也は少しだけ照れ笑いをした顔を俺に見せた。
「え・・・?ええっ?!・・・そんな、勿体ないお言葉をっ!」
紗也の台詞に俺の方が赤面してしまった。
「・・・コウチャン、これからも綾のこと、お願いしますね」
紗也は微笑みながら俺に言った。
「はい!綾さんはこれからも大事にしていく所存であります!」
対して俺は土下座して返事をした。
その後、綾がお母さんと共にお昼ご飯を持ってきた時にご挨拶をさせていただいたが、綾のお母さんについてはお姉さんの年齢と合わせればそろそろ還暦を意識する頃かなと言った歳ではあるが、さすがにあの姉妹の親だけあり、美しい品のある方といった外見で穏やかな性格で口調も丁寧な感じ。
終始俺をベタ褒めしてくれた。
この日はバイクに乗り換えて綾とツーリングの予定だったが、結局夜までお邪魔してしまった。
それから夏、真っ盛りのお盆も中盤に差し掛かった頃、俺と綾にとって最大ともいえるトラブルが発生した。
それは綾の学校がある地方都市駅構内での事・・・。
その日の俺と綾は駅構内にある旅行代理センターの受付の一角を占領し、職員の方と話をしていた。
「ご確認の件ですが、こちらの日程で予約を入れさせていただいておりますので大丈夫です」
「わかりました。ではよろしくお願い致します」
綾は隣で満面の笑みを浮かべて俺と職員のやり取りを見守っていた。
旅行代理センターから出た途端、綾が俺の腕に自分の腕を絡ませてきた。
「もう!そういうことならもっと早く言ってくれれば良かったのにぃ!」
言葉だけ見れば怒っていそうな文面だが、実際の口調とその表情はまるで正反対である。
「お盆はいっぱいだし、予約が取れるかどうかわからなかったから変に期待させちゃうのも悪いと思ったからね」
俺は隣県の一泊二日の小旅行に使う宿の予約を取り、今日はその確認で旅行代理センターへ行っていた。
本当はもう少し範囲を広げたかったが、俺の仕事の都合により、このような日程になってしまった。
「コウちゃんと旅行なんてすっごい嬉しい!」
綾は甘えた表情で俺に告げた。
「じゃあ、これが綾の分ね」
俺は綾に鉄道と宿泊のチケットが入った封筒を手渡した。
「えへへ。コウちゃんとお揃いだ!」
綾は子供のようにはしゃいでいた。
「ところで、お母さんと紗也さんにはちゃんと俺と旅行に行くことは伝えたよね?」
「うん!ちゃんと言ったよ!お母さんなんて迷惑掛けないように!とか荷物は忘れてもお土産は忘れないでね!だって!」
綾は楽しそうに報告をしてくれた。
「ふぅ、それなら良かった」
とりあえず俺の心配事はそれだけであった。
その時までは・・・。
「あれ?!もしかして・・・コウ・・・か?」
俺と綾のいた場所から左斜めの方角から二人の男女が俺の名前を呼んできた。
「ん?」
俺が二人を見た時、そこに懐かしい顔があった。
「やっぱコウだ!久しぶり!」
「コウくん、お久しぶり!」
俺もまた二人に笑顔で応えた。
「修(しゅう)に・・・聡美(さとみ)!?久しぶり・・・」
二人は俺に近づき、互いを懐かしんだ。
「なんだよ!いきなりいなくなっちまった上に連絡も取れなくなってよぉ!俺らずっと気になってたんだぞ!!」
修は俺の両肩に手を置いて力強く語り掛けた。
「あ、ああ・・・本当にゴメン・・・実は携帯壊しちゃって・・・落ち着いたら連絡しよう思ってたんだけどデータ消えちゃってさ・・・」
「あー!もういいって!今こうして逢えたんだから辛気くせーのは無し!」
修は変わらず俺に接してくれた。
「てか相変わらず細っせーなぁ!その辺の女よりずっと細いだろそれ!ちゃんと飯食ってんのかぁ?!」
「あんたはあれから太り過ぎなんだから少しコウくんに脂肪あげなよ!」
聡美は呆れ気味に修にツッコミを入れた。
「コウくん・・・本当に・・・元気そうで良かったよ・・・」
「心配掛けてごめんね、聡美」
修の笑顔と聡美の安心した表情に対し、俺はふと二人に聞いてみた。
「ところで・・・二人はなんで一緒なんだ?まだバンドやってるのか?」
「・・・いや、バンドはコウが抜ける形になってから辞めたんだ。やっぱあのメンバーじゃないとな・・・」
修は少し寂しそうな顔をした。
「その時さ、俺、振られるの覚悟で聡美に告白したんだ・・・」
「待った!・・・では、その続きは聡美から聴かせてもらおうか・・・?」
俺は聡美に顔を向けた。
「聡美、結果はウェブでね!ってオチは無しで頼むよ?」
「ふふふ、相変わらずコウくんって言うこと面白いよねぇ!」
聡美は笑いながら俺の肩を軽く叩いた。
「実はあたし達・・・一年ほど前に結婚したの!子供はまだだけどね」
聡美は修と顔を合わせ、聡美は照れ笑いをしていた。
「マジかよ?!てかお前らいつもバンド内でガチのケンカまでしてたじゃねーか?!」
「え・・・?バンド・・・?」
綾が不思議そうに聞いてきた。
「あれ?後ろの子はひょっとして・・・彼女?」
修は俺のすぐ後ろにいた綾に気付き、俺に聞いてきた。
「ん?ああ、俺の大事な彼女で綾っていうんだ」
俺は綾に微笑みかけ、綾もまた照れ笑いを見せる。
「俺は修!こっちが嫁の聡美!よろしくね!綾ちゃん!」
「こんにちは、綾ちゃん」
「あ、私、綾です。よろしくお願いします」
綾は戸惑いながら綾は二人に対し、丁寧に自己紹介した。
「俺ら何年も前だけど音楽でバンド組んでた仲間だったんだよ」
修が俺との関係を綾に説明する。
「そうだったんですか?!コウちゃんが!?」
聴かされた綾は驚いた表情をしている。
「そう!しかもコウはキレイ化粧バリのビジュアル系で!」
「ちょっ、待て!てかあれはお前らがやらせたんだろ!?」
修の言葉に俺は慌てて反論した。
「えー?!でもコウくんも満更でもない感じだったよぉ?自分で化粧できちゃうくらい上達してたし、その時の仕草も女の子っぽかったし!女のあたしでもドキドキしちゃったもん!」
「そうそう!それに加えてその細さだろ?!暗かったってのもあったけどそのせいでライブ中のステージ上でヤローからコウへのガチの告白された時はどうなっちまうんだよとか思ったわ!」
「それに対してコウくんが、『ごめんね。俺、男だから』って言ったらあの男の子すごいショック受けてたよね」
「あの少年にとってあれが初恋だったかもなぁ・・・」
修は腕を組み当時を懐かしんでいた。
「しゅ、修も聡美も!俺が女の仕草してたのも役になりきる女方の歌舞伎役者の宿命みたいなものからであってな!」
「・・・まぁ、その辺は若気の至りってことでその話はその辺で勘弁してくれ!」
「それと綾、そこは笑う所じゃなくて、フォローするとこよ!」
修に引き続き、聡美までもが語り始め、俺は苦笑いしながら説明した。
綾は俺の側でくすくすと笑っていた。
「でも・・・元気そうで良かったよ!こんな可愛い彼女でまで出来てさ!」
「ああ、お陰さまでね」
俺は微笑みながら修に応えた。
「なんか吹っ切れたみてーだし!しっかし、あの時のコウはマジヤバかったよなぁ!そのまま死んじまうんじゃないかって心配してた・・・」
「ちょっ!?馬鹿っ!修!!」
修の台詞に強ばった表情をした聡美が咎める。
「え・・・?」
綾は目を見開き俺を見ていた。
「あ・・・わ、悪い!コウ・・・」
修は俺に頭を下げた。
「・・・いや、もう大丈夫だから気にすんなって!頭上げろよ・・・聡美も、修だって悪気があって言ったわけじゃないからさ。あの時はワケわかんなくなっててさ、マジ助かったよ・・・」
「う、うん・・・コウくん・・・ごめんね・・・」
「いいって!気にすんなよ!せっかく再会できたんだから!」
俺は陽気に振る舞ったがこの時、胃から酸っぱいものが込み上げてきたのを感じた。
「ね、ねぇ!今度みんなで呑みにでも行こうよ!もちろん綾ちゃんもね!」
聡美がフォローするように声を掛けてきた。
恐らく俺が胃から込み上げたモノによって感じた胸焼けにより少しだけしかめた顔に気づいたのだろう・・・。
今思えばその動作についてずっと俺を見ていた綾も察知していた・・・。
「あ、ああ。じゃあ俺、番号変わったから教えるよ」
俺は二人と携帯の番号を交換した。
「じゃあ後で連絡するから!またね!コウくん」
「・・・またな、コウ」
聡美は笑顔で、そして修は申し訳なさそうな顔でいつもの挨拶にて共に歩いていった。
「・・・コウちゃん」
二人が人混みの奥へ行った後、綾は俺を呼んだ。
「ん?どうかした?」
「う、ううん。あのっ・・・あたし、カラオケ行きたいなって」
綾は今思い付いたように俺に行き先を告げた。
「カラオケ?綾って歌うのあまり好きじゃないって言ってなかったっけ?」
俺は以前、綾をカラオケに誘った時があったが、上手くないからと断られてしまった事があり、それ以来俺からは誘うことはしなかった。
「こ、コウちゃんバンドやってたっていうからコウちゃんの歌声聴きたいなぁって・・・ほら、行こ」
「いや、俺はベースだったから・・・わっ!ちょっと、綾?!」
俺は半ば引っ張られるようにしてカラオケ店に向かった。
その後、カラオケ店に入店し、俺と綾はカラオケを楽しんだが、綾は何か言いたそうな雰囲気を漂わせていた。
入店から小一時間ほどたった頃、それは起った。
「・・・コウちゃん・・・」
「んー?何?なんか歌いたいのある?」
歌った事によりいつもより上機嫌になっていた俺はリモコンを操作しながら呑気な口調で綾に返事をした。
「・・・コウちゃん!ちゃんと聞いて!!」
「うわっ?!」
綾はマイクを握りしめ、大声で俺を呼び掛けた。
そして辺りにはハウリングと呼ばれるスピーカーから不快な高周波がガラスを擦ったような音に化け部屋中を所狭しと駆け巡っていた。
「な、何!?ど、どうしたの・・・?!」
俺は唖然とした表情で聞いていた。
「・・・あたし・・・コウちゃんの過去の事・・・何も知らなかった・・・」
綾はマイクを置き、語り掛けてきた。
「綾・・・?」
「・・・でも、そんな事どうでもいいって、あたしは今のコウちゃんが大好きだから・・・!!」
「・・・だから知らない方が幸せなのかな・・・?」
綾は困ったような顔をしながら俺に問い掛けた。
「・・・綾・・・」
「・・・でもさっき修さんが・・・コウちゃん死にそうだったって・・・」
「え・・・?あ、あれは言葉のあやってやつで・・・」
「やめて!!」
綾の大声に俺は沈黙せざるを得なかった。
「・・・コウちゃん・・・それってあたしには言えない事なの・・・?」
「・・・その事を今の綾の耳に入れるのには辛い想いをさせる事になるかもしれないから・・・」
俺はその場しのぎの言い訳をした。
「・・・あたしが辛いのは!」
綾は怒った顔しながら言い放った。
「あたしが辛いのは・・・コウちゃんの事をあたしが知らない事なの!」
「綾・・・」
「一体何があったの?コウちゃん。あたしには話せって言ったくせにコウちゃんはあたしには話してくれないの!?」
綾は絶対に引かないといった態度で俺を見つめている。
それに根負けした俺はぽつりぽつりと語りだした。
「・・・実はね、俺・・・バツイチなんだ・・・それに男の子が一人いた・・・」
「バツ・・・イチって結婚して離婚したって・・・いう?」
「うん・・・実質、一緒に過ごしたのは二年で結婚から離婚までは一年くらいだった・・・」
俺は綾の質問に丁寧な口調で応え、そのまま話を続けた。
「出会ったのはライブの打ち上げで飲み会してた時。聡美ちゃんの友達でね・・・」
「相手は俺の事については写真とかライブやってる時に知って紹介してくれって頼まれたらしくて・・・」
俺はそこでほぼ無意識にタバコをくわえ、火を着けた。
「俺も初めて会った時は特に意識はしてなかったんだけど・・・綾には申し訳ないけど会話をしてるうちにいい子だなって、お互い惹かれ合ったんだ・・・」
「ううん・・・大丈夫・・・」
綾は少しだけ身体を強張らせたが、うつむいて首を左右に降った。
「そんな事もあって俺達はすぐに付き合いだして・・・関係もって・・・三ヶ月くらい経った時に・・・向こうに子供ができて・・・」
「それで俺・・・好きだった事もあって結婚したんだ・・・」
俺はタバコの煙と共に大きく息を吐いた。
「・・・それでどうして離婚なんてしちゃったの・・・?ケンカしたとか・・・?」
綾の両親も不仲による離婚の為、同等の理由なのかと聞いてきた。
「・・・浮気・・・いや、その前の・・・俺が出会う前から・・・付き合ってた男がいたんだ・・・」
「え!?コウちゃんと付き合う前からって・・・どういう事!?」
綾は怒ったような口調になった。
「正確にはその時の彼氏とケンカ別れした後に俺と付き合った形なんだけど・・・問題はその間により戻して・・・それでも俺と付き合ってて・・・二股っってやつだね・・・」
「俺と結婚してからも・・・それが続いてて・・・それがわかったのが俺がこの目で・・・」
「・・・信じられない!」
綾は俺の話途中に溜めてきたものを吐き出すように話し出した。
「コウちゃんと出会う前からって・・・何よそれ!!それも赤ちゃんができたってさぁ!」
「綾・・・」
「そんなんじゃ、コウちゃんの子か相手の子かわかったもんじゃないじゃない!?」
綾のその台詞はその時の俺にとって龍の身体に一ヵ所だけ生えている逆毛とも言える逆鱗に触れた・・・というより思い切り殴り付けてしまった。
「・・・あ?・・・今・・・なんつった・・・?」
俺は低い震えた声で綾に問い掛けた。
「コウ・・・ちゃん・・・?」
「今・・・!なんて言ったんだよ!!ああ!?」
俺は立ち上がり、初めて綾を本気で怒鳴り付けた。
「え・・・?え・・・?」
綾は涙を浮かべ震えていた。
「どっちの子だかわからねぇ・・・?ふざけるな!!」
俺は勢いよく頭を斜めに振り下げる動作をし、そのまま今度は俺が溜まったものを吐き出した。
「・・・何も知らねぇくせに・・・どいつもこいつも二言目にゃいつもそれだ・・・!」
俺は声を押し殺したように言葉を発し続けた。
「俺はあらゆる手ぇ尽くして!俺の子供である事を確証する証拠まで作った!」
「それを突きつけても同じこと繰り返して能書き垂れるだけで逆の証拠も出しやしねぇ!てめぇらオウムか!?」
「けどな!修と聡美だけはそんなもん見せなくてもこんなに俺に似た子はいないと信じて疑わなかった!」
「そもそも生まれてきた子供には何の罪はねーんだ!そんな戯れ言は二度と口にするな!!」
俺は脱力したようにソファーに座り込み、うなだれたまま肩で息をしていた。
もう何度目だろう・・・一言一句間違えずに言えるくらい繰り返したこの台詞・・・。
子供とは俺から会うことはないと心に決めたあの日・・・その頃からこの台詞を口にすることは無くなった。
けどそれは俺が俺自身を破壊する事態となった・・・修と聡美を巻き込んで・・・。
この時も綾に言ったというより、子供を否定する言葉を放つ者に対する戒めのつもりだった。
そして俺は我に返った・・・。
「あ・・・綾!?俺、つい!」
俺は綾を見たとき、綾は俯き、押し殺すような声で泣いていた。
「ご、誤解なんだ!今のは綾だけに言った事じゃなくて、その、なんていうか・・・」
「・・・あたし・・・また・・・やっちゃったよぉ・・・」
「・・・もう・・・あたし・・・コウちゃんに・・・合わせる顔なんて・・・もうないよぉ・・・!」
綾は手のひらで目や頬をめちゃくちゃに拭いながら伝えていた。
「もう・・・一人で・・・帰るね・・・」
綾は部屋を飛び出した。
「待っ!・・・うわっ?!」
綾を引き止めようとした俺は足を滑らせ、転倒しそうになった。
その際に左手でテーブルを掴み、転倒を阻止しようと努力したが、一本足で支えているテーブルの為、角を押し上げてしまう形となりテーブルがこちらに勢いよく向かい、左のこめかみ付近を強打。
激痛と瞼に映る流星群のようなフラッシュバックと共に大きな音を立てて転倒してしまった。
「・・・ってぇ・・・」
俺は全身を襲う激痛と頭のふらつき、さらにはひっくり返ったテーブルとソファーに挟まれる形となり、身動きがとれなくなった。
「・・・ぐっ、はぁ、はぁ!」
俺は左腕でテーブルを押し退けた。
その時、涙が落ちるように目の下から二、三粒ほどの滴が落ちたのが確認できた。
上半身を上げ、正座を崩したような形で座り、右手で左目付近を押すように触った際に痛みが走り、手放した所、その右手は真っ赤に染まっていた。
「・・・あの時も・・・こんな色してたっけなぁ・・・あはは・・・」
俺は綾を追う事を忘れ、一人血に染まった涙を流しながら笑っていた。
数分後、俺は誰にも見つからないようトイレ向かい、こめかみの傷を確かめてみた。
テーブルを力を込めて押し退けた時に頭に上った血がそのまま流血した。
滴るほど量はそれなりに多かったが、傷口自体は三ミリほどの小さな裂傷だった。
俺はロールペーパーをほぼ一個を使いきり止血を終えた。
「ぶっ!」
洗面台に吐き出した塊は白く彩られた台の一部を真っ赤に染め、口内の切り傷があることを示し、そして鏡にて唇の端も少し切れていた事を表していた。
「・・・なんだよ?ひでぇツラしてんなぁ・・・?」
俺は鏡の自分に話し掛けた。
「・・・悪い。俺、綾とダメになっちまった・・・」
そこでタバコをくわえ火を灯(とも)し、くわえたまま鏡へ話し続けた。
「・・・この俺に恋愛なんて無理だったのかな・・・?」
「このまま一人で生きてく・・・てのがお似合いか・・・?」
「おいおい・・・真似ばっかしてねーでよ?ちっとは答えてくれよ・・・?」
鏡の中の俺は苦笑いしている。
「って、んなわけねーか・・・バカらし・・・」
俺はため息をつきながら洗面台を洗い流し、カラオケ店を出て一人、帰路についた。
こめかみの腫れがだいぶ引いたある日、俺は早朝から駅の外に設置された屋外式の喫煙所に設置されたベンチに座っていた。
そこは綾との待ち合わせの場所になるはずだった所・・・。
その日までに綾からは一切の連絡はなく、俺からも連絡はしなかった。
その間に聡美から連絡があり、修と共に遊んだ時、俺は綾とは終わってしまった事は言わなかった。
もし言えば修はきっと自分を責めるだろうし、聡美にとっても夫婦仲に暗雲が立ち込める事にもなりかねないので今日は家の都合で来れなかったと誤魔化した。
結婚式をやるなら呼んでくれよと修に言われた時は作り笑いさえも作るのにかなり苦労した。
頃合いをみて報告しようと考えながら二人と別れ、その帰り道ではつい、綾との楽しかった頃を思い出してしまい、走行中のヘルメットの中で大声で泣き喚いた。
その日は旅行当日で、隣にいるのは人ではなく、最低限の物だけを詰めた小さな旅行カバンと酒の肴として購入した冷めた鶏の唐揚げ。
俺の手には温もりのある手ではなく冷えたビール缶。
俺は早朝からビールを煽っていた。
こんな事をしたのは人生初の事であるが、なかなか悪くはなかった。
人の往来などほとんどなく、乗車予定の電車の時刻はゆうに二時間近くはあった。
俺は三本目のビールを開け、身体の中へ流し込んでいた。
「くうぅ!五臓六腑に染み渡るぅ!」
などと一人でおやじギャグを呟いてみたけどけど、今の俺に染み渡るのは悲しみと誰も聞いちゃいないだろといった虚しさだけだった。
その時、こっちに向かって歩いてくる化粧をした女性の姿がふと視界に映ったが、その時は通りすがりに目に入るマネキン人形くらいの認識しかなく、タバコを吸いに来た人くらいにしか感じなかった。
俺は顔を下に向け、相手に気付いていないふりをした。
女性は三ヶ所ある灰皿のうちなぜか俺のいる灰皿の近くに来た。
女性は喫煙をする様子はなく、じっとしているようだった。
私はミサの後頭部と背中に手を添えて、そっと抱き締めながら聞きました。
「わかってるくせに・・・」
ミサは、呟くような小さな声で応えました。
「オミくんの赤ちゃん」
そうです。
ですからのその日、私は避妊具も着けずにミサの膣内に侵入するとまだ熟しきっていない子宮に精液を放ったのでした。
「できたと思う?」
尋ねると、ミサは首を少し反らすようにして私の胸から頭を持ち上げると、ふふっと小さく笑って言いました。
「ナイショ」
私はその時、自分の子供が二十歳になった時の自分の年齢を頭の中で計算していました。
ミサと一緒になる覚悟を決めてから、ミサのうちの話を真剣に聞き始めると、驚いたことがありました。
何とミサの父親の勤める会社は、私がこれまでリーマン生活を続けてきた会社そのものだったのです。
しかも、私には社内で石倉という名前の人物に、ひとり、心当たりがありました。
「お父さんは、技術系の人?」
頷くミサの姿を見て、私は観念しました。
ミサの父親は、嘗て、私が痴漢を追い払った日に営業所で出迎えた技術部長その人だったのです。
『あの人をお義父さんと呼ぶのかぁ・・・』
私は気が重くなりました。
相手は、見た目こそ、禿げ上がった小太りのオジサンですが、本社の部長さんです。
私の素性を知った父親が、私とミサとの結婚を快く承知してくれるとは到底思えませんでした。
「ねぇ、ミサちゃん・・・」
「なに?」
「ちょっと、拙いと思うんだけど・・・」
「何が?」
「お父さんと娘婿が同じ会社っていうのは、ちょっと・・・」
「どうして?お義兄さんも、一緒だよ」
「どういうこと!?」
「お姉ちゃんのカレ、今は旦那さんだけど、同じ会社だよ」
「お姉ちゃんが、金髪でブイブイ言わせてた頃に電車の中で捕まえたっていうカレ?」
「そうだよ」
「そのカレが、お父さんと同じ職場なの?」
「部署は違うって言っていたよ」
「何ていう人?」
「部署は忘れちゃったけど、山田太郎って人」
山田太郎くんのことは知っていました。
何といっても名前が特徴的で、書類の記入例みたいな名前のヤツなどと言われています。
それでいて、仕事は優秀で、営業のエースに田中という伝説的な男がいるのですが、その男と同期で、部署は違えどお互いに切磋琢磨をしている好敵手だと社内で専らの噂になっていました。
『お義父さんが部長で、社内で評判の年下のお義兄さんかぁ・・・』
二人とも部署が違うのがせめてもの救いでしたが、私は途端にブルーになってしまいました。
『なんだか、あかん気がする・・・』
テレビで流れていたコマーシャルのフレーズが頭の中をよぎりました。
「オミくん、どうかしたの?」
ミサが怪訝そうな顔をして私に尋ねました。
「いや、娘婿が二人とも同じ会社っていうのもね・・・」
「そんなのわかっていたことでしょう?」
「いや、わかってないよ」
「そうだっけ?」
「そうだよぉ」
「どうして、訊かないのよ」
「そんなこと、想像の域を超えているから、訊きようがないよ」
ミサは、私とのそんな遣り取りを楽しんでいるかのようでした。
私の気持ちが気持ちが挫けそうになっていると思ったのか、ミサは最後の詰みの一手を出してきました。
「オミくん、プレゼント、ありがとね」
「え?」
ミサは悪戯っぽい目をしてみせると、芝居がかった様子で大げさに頭を下げてきて見せました。
「誕生日のプレゼント、確かにいただきました」
何だか照れくさそうにそう告げると、私に抱きついてきたのです。
「えっ!?できてた・・・?」
頷くミサを私も抱きしめ返していました。
『完全に外堀は埋められちゃったなぁ・・・』
そう思いながら、私はその時、同じ会社に義父と義兄を持つ覚悟を決めたのでした。
■続き[2016.04.10_21:49追記]
ミサがボクに純潔を捧げてくれてしばらく経ってから、ボクにはどうしても聞きたかったことを聞いてしまいました。
ラブホのベッドで抱き合いながら、ボクはミサに尋ねました。
「ねぇ、どうしてボクなんかに興味を持ったの?」
「どうしてだと思う?」
「痴漢を撃退してあげたから?」
「あれって、『撃退』って言うの?」
ミサはそう言うと茶化すような目をして笑いました。
「少なくとも追い払っただろ?」
「『追い払った』ねぇ・・・」
ミサは面白そうにボクの言葉を繰り返して見せました。
「その時の機転に感心したとか」
「『機転に感心』ねぇ・・・」
完全に言葉にじゃれて楽しんでいます。
「違うの?」
「うーん、ちょっと・・・、んー、大分違うかなぁ・・・」
「元々、枯れ好みだとか・・・」
「なに、それぇ?オミくん、全然枯れてないし」
そう言うとミサは手のひらでポンポンとボクの股間に触れて見せました。
「でも、他に思いつかないよ。ボクがミサの関心を引けるようなことなんてなかったし」
「そんなことないよ。オミくん、どストライクだったもん」
「何かあったかなぁ・・・」
「あったよ」
「うーん、降参!思いつかないや」
「知りたい?」
「うん、知りたい」
そう言うと、ミサは少し居住まいを正すと、思い出すように目の玉を少し上に向けて話し出したのでした。
「オミくん、三丁目のコーヒーショップに行ったことあるでしょう?」
「三丁目って・・・、消防署の向こうの?」
「うん」
「あるけど・・・」
「私もバイトの前とか後によく行ってたの」
ボクは、黙って頷くとミサに先を促しました。
「私たちが付き合い始める半年ぐらい前に、そこでオミくんを見かけたの」
「うん」
「見かけたって言うか、レジに並ぶ列でオミくんの直ぐ後ろに並んでいたの」
ミサにそう言われても、一体いつのことか見当もつきませんでした。
「その時、オミくんの前に外人さんが並んでいてね。言葉が通じなくてレジの人が困っているのをオミくんが、助けてあげたの」
薄ぼんやりとそのときの光景がボクの頭の中に甦ってきました。
「あの時の店員さん、覚えてる?」
「そんなの覚えてないよ」
でもそれは、ウソでした。
確か店員さんが可愛かったので、おせっかいと思いながらも助け舟を出したのでした。
「ふぅん・・・」
「なに、『ふぅん』って?」
「絶対、オミくんの好みだと思ったけど」
図星にされて、ボクは少し焦りました。
「どういうのが、ボクの好みなの?」
「髪が長くて、細身で、おっぱいは大きくなくていいの。それから、アーモンドアイで、色白で、口角がキュッと上がってると完璧かな?」
全て言い当てられていました。
若くても女性の観察眼は鋭いものだと舌を巻きました。
けれども、よく考えてみると、今言ったそのままの女の子が目の前にいたのでした。
「それって、自分のことを言ってる?」
「あったりぃ!」
ミサはペロッと舌を出して見せると、おどけて見せるのでした。
その姿が可愛らしくて、ボクはミサの手首を取ってグイと細い身体を引き寄せると抱きしめました。
「だから、ずっと見てたんだよ」
「ボクのことを?」
「うん」
最初は、二回りも年の違う女性とは到底上手くいく筈がない、と思っていましたが、ボクは予想が外れて幸せでした。
ミサの顔を見たくて抱きしめていた腕の力を緩めると、ミサは目を閉じたまま顔を少し上向きにすると唇を突き出してきました。
ボクは、その薄い唇に自分の唇を重ねると、チュッチュッとしたあとで、唇を割って舌をヌルリと差し込みました。
「オミくん、脱いで」
ミサに言われて全裸になると、ミサも手早く下着だけの姿になってボクのベッドに潜り込みました。
追いかけるようにボクがベッドに入ると、ミサはクルリと細い身体をかわすようにして、仰向けになったボクの腰の辺りにまたがりました。
「私のこと、好きで堪らなくさせてあげる」
そう言うと、ミサは上体を前に倒してくると、ボクにディープキスをしてきました。
「私のこと、好き?」
「大好きだよ」
「じゃぁ、こうしてあげる」
ミサは、ボクに跨ったまま抱きつくような体制で、ボクの耳の後ろに唇を押し付けました。
気がつくと、ミサの手は指でボクの乳首をクリクリしていました。
「男の人も乳首、勃つんだね」
そう言いながら、今度は唇を近づけてくると、舌先でボクの硬くなった小さな乳首を転がしました。
「気持ちいい?」
「うん、気持ちいいよ」
「じゃぁ、こんなこともしてあげる」
そう言うと、ミサはボクの股間へと手を伸ばし、既に硬く屹立した肉棒を優しく手のひらで包んだのでした。
「私だけのものだからね」
そう言いながら、ミサはボクをニギニギすると、ボクの表情を満足そうに確認した後で、身体の位置をずらして行きました。
「先っぽが濡れて光ってるよ」
そんなことを言いながら、ミサは舌を伸ばすとボクの亀頭の周りにくるりくるりと舌を這わせ始めました。
女子大生に亀頭をペロペロされて、感じない男なんてこの世にいる筈もありません。
「あぁ・・・」
ボクは、思わず快楽のため息を漏らしてしまいました。
「うふっ」
ミサはうれしそうに笑うと次は大きく口を開けて、ボクを一気に根元まで呑み込みました。
すっかり上手になったディープスロートで、ミサはボクを楽しませてくれましたが、このままイカされたのでは、男が廃ります。
ただでさえ、最近のミサはすっかり大人びて、下手をするとどっちが年上なのか判らなくなるくらい、妖艶な表情を見せることがあります。
ボクは、出してしまいたいのを我慢して、ゆっくりと上体を起こし、ミサの身体を抱き寄せるように引き寄せてキスをすると、そのままベッドに押し倒しました。
「もっと、気持ち良くなって欲しいのにぃ」
うれしいことを言ってくれますが、初めてのころは陥没していた乳首が、今ではすっかりと勃ち上がっています。
ボクはミサの華奢な身体を抱くようにしながら、唇を小さな乳房に近づけて、硬くなった乳首をチュウチュウ吸い始めました。
「あんっ、オミくん、いい!」
ミサの言葉に促されて、ボクはおっぱいを吸いながら片手をミサの股間へとやるとそっと脚を開かせて、亀裂をなぞりました。
「優しくして・・・」
ミサのリクエストに応えて、ボクはミサの舌を絡めとりながら、ゆっくりと合わさった割れ目を押し開くと皮に覆われた蕾を探し当てます。
「あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ」
指の動きのリズムに合わせてミサの口から声が漏れ出てくると、ボクは指の動きを早めて、最初の絶頂に導きます。
「あっ、オミくん、イッちゃう!あ、あ、あ、あーっ!!!」
ミサが息を呑み、下半身が震えると、軽いオルガに達したのがわかりました。
女子大生がボクの指でアクメに達し、アヘ顔を晒しています。
それを見ただけでボクの股間はマックスに膨らみ、濡れた蜜壺への進入を切望するかのように鎌首を持ち上げるのでした。
最初のうちは、自分が気持ち良くなるのに精一杯で、軽いエクスタシーだけで暫くは動けなくなっていたミサでした。
然し、学習能力が高く献身的なミサは、最初のころとは違って契りを交わすうちに回復力が速くなって、ボクを悦ばすコツをつかんできていて、直ぐには侵入を許してくれません。
ボクが覆い被さろうとすると、ボクの肩を押してベッドに仰向けにさせると、シックスナインの形で逆に覆い被さってきます。
「いただきまぁす!」
最近ではおどけた風にそんなことを口にしながらボクの肉棒にジャブリつくと、薄い唇がボクの陰毛の中に埋もれます。
「うっ!」
あの小さな口の中にどうやってボクの根元まで銜え込むのか、想像しただけで、射精感が迫ってきます。
けれども、ボクは目の前でパックリ割れて愛液が垂れそうになっている亀裂を引き付けると、指で包皮を剥いて顔を出したお豆を舌で転がしました。
「オミくん、それ反則!」
ボクの脚の方でミサが抗議の声を上げます。
そんなことはお構いなしにボクはミサのお尻に手をやって自分の方に引き付けると、今度は唇も使って蕾を舐め上げました。
「き、気持ち良すぎるぅ・・・」
そう言いながらもミサは負けじとボクを再び頬張って、首を上下に動かし始めました。
女子大生と中年男の攻防が繰り広げられましたが、先に音をあげたのは、すっかり開発されたミサでした。
「オミくん、待って。今度はオミくんでイキたいの」
そう言うとミサは身体を起こし、枕の下に忍ばせたゴムを取って手早くボクに被せると、背中を向けながらボクの腰の辺りに跨りました。
「あっ、いい!」
腰を鎮めながら熱い蜜壺にボクを呑み込むと、ミサは自分から腰を上下に動かし始めました。
「こんなこと、恥ずかしくてできなかったのに」
喘ぎ声の合間に、ミサはそんなことをボクに言ってきました。
暫くはミサのペースに任せていましたが、ミサの快感が高まってくると思うように身体を動かせなくなるようです。
そこでボクは上半身を起こして、後ろからミサに抱きつくと、両手でおっぱいを掴み、モミモミしました。
「オミくんの手、気持ちいい!」
それを合図にボクは片手を股間へと下げて行って、肉棒をミサに突き刺したまま、クリを刺激しました。
「あぁ!それ、イッちゃう!」
「イッていいよ」
「あ、あ・・・、ねぇ、いい?また、イッちゃうけど、いい?」
ボクがクリをこねる動きが一層早くなると、ミサはボクの方に身体を預けるように胸を逸らし、ビクビクと身体を痙攣させながら果てました。
「はぁぁぁ・・・」
間髪を入れず、ボクは放心状態のミサの身体を後ろから押して、ベッドに四つん這いにさせます。
ミサはベッドに膝をついてお尻を高く上げながら、胸をベッドにつけるような姿勢になったので、ボクは後ろから一気に奥深くまで挿入します。
「オミぐん・・・、許してぇ・・・」
ミサは蚊の鳴くような声を出して訴えかけてきますが、ボクは容赦しないのです。
後ろから猛烈に激しくピストン運動を繰り出すと、ミサはピーンと背中が反り返ります。
「オミくん、ダメ!私、またイッちゃう!あー、あー、あー、あー」
「オミくん、私、死んじゃう!気持ち良すぎて死んじゃう!」
そんなことを言いながら、ミサはガクガクと一番激しく身体を震わせて、ベッドに突っ伏すと昇天しました。
ボクたちの結合部分から、ミサの愛液が大量に溢れ出て、一部はベッドに大きな染みを作り、一部はボクの竿からタマタマを伝うと滴となって落ちました。
この間、男の人を知ったばかりだと言うのに、ミサは早くも中イキまで覚えていて、頭の中が真っ白になった後は、雲の上をフワフワ漂う感じがしながら、身体の痙攣が止まらないのだそうです。
ヘトヘトになりながらも、ボクが再び腰を突き出すと、ミサはピクンとなって
「もう、だめ・・・、もう、ダメ・・・」
と掠れた声で言いながらも、直ぐに
「あ、あ、あ、あ」
と気持ちよさそうな喘ぎ声に変わるのです。
潮を吹いた後の女性の身体はどうやら歯止めが利かなくなるらしく、動かなくても挿入したまま舌を吸ったり、おっぱいを吸うだけで、エクスタシーに到達します。
所謂、連続絶頂というやつらしく、それを迎えたあとのミサは、暫く死んだように眠りますが、目を覚ました後は、子猫のようにジャレついてきて、ボクに甘えてくるのです。
こんな可愛らしい女性をボクは知りません。
絶頂に達してひとしきり汗をかいた後のミサは、汗臭いどころかとても良い匂いがするのです。
その香りを嗅ぎながら、ボクはミサをベッドに仰向けにさせると細くて長い脚を両脇に抱え、一気に奥まで挿入を果たすと、ミサの中で暴れまわるのです。
「オミくん、私の身も心も全部オミくんものだよ」
朦朧とした意識にありながらも、ボクの耳元で囁いてくれるミサの声を聞いた瞬間、ボクのジュニアは一気に弾け、熱い滾りをミサの中に放出してしまうのです。
結婚して、子供も生まれましたが、ボクたちはいつまでも飽きることなく、子供を寝かしつけた後は、大人の時間を楽しんでいるのです。
◯これに関連した話 ミサの姉とカレシの話 高◯教師と結婚した同級生の話