旅行・お出かけ
香りを数値とデータでしか追えなくなり、自分の鼻さえ信じられなくなった化粧品会社の調香助手の僕が、衝動で飛んだ初夏の富良野で、亡き祖母の畑をひとり継いでラベンダーを蒸留する同い年の無口な彼女に、花の摘み方と香りの嗅ぎ方を一から教わるうちに惹かれ、刈り入れ前夜の蒸留小屋で結ばれた話
毎日香料の数値とにらめっこするうち、いつしか自分の鼻さえ信じられなくなった三十一歳の六月。僕は衝動で富良野行きの航空券を取った。丘の上の小さなラベンダー畑で、亡き祖母の畑をひとり継いで精油を蒸留していたのは、同い年の無口な人・香澄さんだった。花の摘み方と、香りの嗅ぎ方を一から教わった刈り入れ前夜の蒸留小屋で、僕たちは——。