元カノ・再会
真夏のドライブで山あいの峠道に車を置き去りにするしかなかった僕が、麓のたった一軒の自動車整備工場に駆け込んだら、油に汚れた手で迎えてくれたのが六年前に僕が東京に置いて別れた元カノだった話
仕事に擦り切れて、当てもなく走った真夏の峠道で、僕の車はとうとう白い湯気を吐いて止まった。汗だくで駆け込んだ、麓のたった一軒の自動車整備工場。油に汚れたつなぎで、ボンネットの奥からこちらを向いたのは──六年前、僕が東京に残ると言って別れた元カノ・朱里だった。部品が届くまでの三日間、止まっていた二人の時間が、蝉時雨と夕立の匂いの中で、もう一度ゆっくりと回り始める。