大学・学園
何ひとつ本気になれないまま単位だけ拾って大学を漂っていた僕が、楽そうだからと始めた植物標本庫の整理のアルバイトで、亡き恩師が遺した六十年分の押し葉に黙々と名前をつけ続ける無口な院生の先輩に、新聞紙の挟み替えとラテン名の書き方を一から教わるうちに惹かれ、今年最初の雪が降った夜に取り壊し間近の標本庫で結ばれた話
何にも本気になれず、単位だけ拾って大学を漂っていた僕が、楽そうだという理由で始めた植物標本庫のバイト。そこには、来春取り壊される古い標本庫で、亡き恩師が遺した六十年分の押し葉を、たったひとりで看取ろうとする院生の椎名先輩がいた。今年最初の雪が降った夜、最後の一点を仕上げた標本庫で——。