社会人・オフィス
画面の中で部品を設計するだけで自分の手では何ひとつ形にできなくなっていた分析機器メーカーの若手技術者の僕が、社の地下のガラス工房でフラスコを一つずつ手で吹き続ける無口な年上のガラス職人に、炎の前でガラスに息を入れる手ほどきを受けるうちに惹かれ、試作品を吹き上げた梅雨明けの夜の工房で結ばれた話
六月、僕は社運のかかった新型分析装置の試作で行き詰まっていた。心臓部のガラスセルだけが、どこに頼んでも形にならない。藁にもすがる思いで降りた社の地下に、誰も使わなくなったはずのガラス工房があった。炎の前で実験器具をひとつずつ手で吹き続けていたのは、無口な年上の職人・結城さん。ガラスに息を入れる手ほどきを受けるうちに、僕は彼女に惹かれていった。長い梅雨が明けた夜、試作品を吹き上げた工房で、僕たちは結ばれた。